想想戦記―想いが力になる世界で、俺は戦う―   作:berunarudo

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第122話 相見える「想い」

 世界が、紫色の雷雲に覆われる。

 

 地面は黒く焼け、大地そのものが焦げていた。

 

 あの時とは違う。

 

 これは未完成ではない。

 

 完成された開眼。

 

 これまで積み重ねてきた経験。

 

 戦いの記憶。

 

 敗北。

 

 怒り。

 

 悔しさ。

 

 そして、守りたいという想い。

 

 すべてが最高潮に達した時――

 

 俺の力は、目を覚ました。

 

 号の両目に、紫電が走る。

 

 雷そのものが瞳に宿ったようだった。

 

「どれだけ強大な力だろうが……」

 

 刀を握る。

 

「関係ない」

 

 一歩、踏み出す。

 

「打ち滅ぼすまでだ」

 

 ドラゴンが翼をはためかせ、空へ浮かび上がる。

 

 その巨体が空を覆う。

 

 和田の声が響いた。

 

「死ね―――号!!」

 

 口が開く。

 

 次の瞬間。

 

 極大のビームが放たれた。

 

 空間を埋め尽くすほどの熱量。

 

 黒紫の光が一直線に俺へ迫る。

 

 そのビームが、号を呑み込む寸前――

 

 俺は地面に突き刺していた刀を抜いた。

 

 その勢いのまま、一閃。

 

 放たれた斬撃がビームを裂く。

 

 真っ二つに。

 

 雷の刃はそのまま飛び、ドラゴンの体にまた深い傷を刻んだ。

 

「貴様……!」

 

 和田が叫ぶ。

 

「何度も何度も、この体に傷をつけよって!」

 

 一拍。

 

「ならば――」

 

「貴様を喰らってやる!!」

 

 ドラゴンが業火を吹き出す。

 

 その炎を、自らの全身に纏う。

 

 肉体はさらに膨張し、巨体はより巨大になる。

 

 地面が溶ける。

 

 空気が燃える。

 

 灼熱の怪物が、俺へ向かって突進してきた。

 

 だが。

 

 俺は刀を納める。

 

 想いを込める。

 

 すべてを。

 

 兄貴への想い。

 

 家族への想い。

 

 仲間への想い。

 

 大地への想い。

 

 俺はもう、何も見失わない。

 

 ドラゴンが迫る。

 

 それでも、恐れはなかった。

 

 ただ、まっすぐに。

 

 自分の想いを刀へ流し込む。

 

 大気が震える。

 

 上空の雷雲に、無数の紫電が走る。

 

 そして――

 

 想いが満ちた、その刹那。

 

 天から紫電が落ちた。

 

 それは、真っ直ぐに俺へ落ちる。

 

 全身が紫電を纏う。

 

 閃光。

 

 轟音は遅れてやってくる。

 

 世界から音が消え、暗闇だけが迫る。

 

 俺は駆ける。

 

 ドラゴンへ向かって。

 

 そして抜刀する。

 

「紫電纏雷――」

 

 一拍。

 

「月皇天墜《げっこうてんつい》」

 

 雷龍のような軌跡が走った。

 

 紫電が世界を裂く。

 

 業火を纏ったドラゴンの全身が、ずれた。

 

 それはまさしく――

 

 一刀両断だった。

 

 巨大な体が、遅れて崩れる。

 

 俺は静かに刀を納めた。

 

 カン、と音が鳴る。

 

 その瞬間。

 

 開眼の世界が消えた。

 

 雷雲は晴れ、夜空には月が浮かぶ。

 

 月明かりが、俺を照らしていた。

 

 俺は膝をつく。

 

「っ……は……」

 

 息が荒い。

 

 全身が悲鳴を上げている。

 

「さすがに……開眼はこたえるぜ……」

 

 それでも、口元がわずかに上がる。

 

「だが、勝てた」

 

 和田に。

 

 あの歪んだ正義に。

 

「証明したぞ……」

 

「俺の正義を……」

 

 その瞬間だった。

 

 黒い雷が落ちた。

 

「――!?」

 

 俺は振り返る。

 

 信じられない光景が、そこにあった。

 

 切り裂いたはずのドラゴンが、再び浮かび上がっていた。

 

 断たれた肉体は、黒い雷が走りながら無理やり繋がっていく。

 

 それだけじゃない。

 

 ドラゴンの周囲に、新たな雷雲が集まり始める。

 

 黒い雲。

 

 黒い雷。

 

 まるで、俺の開眼をそのまま歪めたような異形だった。

 

 ドラゴンが目を開く。

 

 そして、叫ぶ。

 

「GYAAAAAAAA!!」

 

 その全身を、黒い雷鳴が覆っていく。

 

 俺は思わず引きつった笑みを浮かべた。

 

「おいおい……」

 

「第三形態なんて聞いてねえぞ……」

 

 だが、すぐに刀を握り直す。

 

「……いいぜ」

 

「最後までやってやる」

 

 俺は天へ向けて刀を構えた。

 

 その瞬間だった。

 

 ――白。

 

 巨大な白いビームが、天から落ちた。

 

 まるで世界そのものが放った一撃みたいに。

 

 それは一直線に、ドラゴンの心臓を貫いた。

 

 轟音。

 

 ドラゴンの巨体が、俺の目の前へ落ちてくる。

 

 地面が揺れる。

 

 衝撃で俺は吹き飛ばされた。

 

「がっ……!」

 

 床を転がり、なんとか立ち上がる。

 

「なんだ……一体……」

 

 立ち込める煙。

 

 土埃。

 

 やがて、それが晴れていく。

 

 そして。

 

 そこに立っていたのは――

 

 見知った顔だった。

 

 忘れるはずがない。

 

 何度も思い出した。

 

 何度も待った。

 

 その姿を見た瞬間、胸の奥が熱くなる。

 

 目頭が勝手に熱くなった。

 

 俺は、叫んでいた。

 

「遅いぞ……!」

 

 一拍。

 

「大地!!」

 

 煙の向こうで、そいつは少し困ったように笑った。

 

「悪いな」

 

「遅れちまった」

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