想想戦記―想いが力になる世界で、俺は戦う― 作:berunarudo
扉をくぐった瞬間、俺の身体は宙に放り出された。
「――うおおおおおおっ!?」
風が全身を叩く。
胃が浮く感覚に、反射的に目を開けた。
……落ちている。
本当に、落ちていた。
「どこに飛ばしてるんだよあいつ!!」
叫びながら下を見る。
すると、はるか下方――そこに巨大な影があった。
翼を広げ、黒い雷をまとったドラゴン。
「なんだあいつ……やべぇ気配がする」
考えるより先に、身体が動いていた。
先手必勝。
空中で両拳を合わせる。
純力を一気に練り上げ、拳の間に圧縮する。
「フィスト・プラズマバースト!!」
白い奔流が放たれる。
落下しながら放たれた一撃は、真っ直ぐドラゴンの胸を貫いた。
咆哮が響く。
ドラゴンの巨体が傾き、そのまま地面へと落ちていく。
「よし!」
俺はそのまま、落下するドラゴンの身体を緩衝材代わりに踏み台にした。
だが、勢いは殺しきれない。
足に想力を流し込む。
「ぐっ……!」
次の瞬間、地面に激突した。
轟音。
衝撃が足から全身に突き抜ける。
「っ、っ、っ……!」
膝をつき、思わず歯を食いしばる。
「びりびりしやがる……! いてぇぇぇ……!」
煙が上がる。
視界が白く濁る。
その向こうに、人影が立っていた。
見慣れた姿。
見間違えるはずがない。
「……遅いぞ、大地」
その声を聞いた瞬間、胸の奥が熱くなった。
俺は思わず笑う。
「悪いな。遅れちまった」
煙の向こうで立っていたのは、鳴海号だった。
俺たちは歩み寄り、そのまま強く抱き合った。
「どこ行ってやがった、大地」
「少し遠いところだ」
「そうか」
号は短く答えた。
「無事でよかった」
そう言った号の身体は、ひどく傷だらけだった。
服は焼け、血が滲み、立っているのが不思議なくらいだった。
「……そっちこそ、無事そうには見えねぇぞ」
「まあな」
号は苦笑した。
「いろいろあった」
俺が詳しく聞こうとした、その時だった。
上から影が差した。
ひらり、と音もなく男が降り立つ。
「正義の味方――ジャスティスマンだ」
胸を張り、マントを翻し、完璧なポーズを決める。
一瞬、俺はぽかんとした。
そして次の瞬間。
「か、かっけえええええ!!」
思わず叫んでいた。
すると隣で、号が深いため息をつく。
「ああ……お前もそっち側の馬鹿だったか」
「いやだって、見ろよこれ! すげぇだろ!」
「落ち着け」
ハワードは満足そうに頷いた。
「分かるか、ダイチ。君は見込みがある」
「あるに決まってるだろ!」
「嬉しいね」
号は額を押さえた。
「頭が痛くなってきた……」
俺は気を取り直し、純力を手に宿してみせた。
「そうだ、号。想界でいろいろあってな。この力を手に入れたんだ」
白い光が手のひらに灯る。
号がじっと見つめる。
「……不思議な力だな。想力とは少し構造が違う」
「ああ。でも、これなら届く」
俺は拳を握った。
「落葉松にも」
号も頷く。
「そうか。なら、やれるな」
「号はこっちで戦力を集めてたんだな」
「まあな。その一人が、この人だ」
号がハワードを見やる。
俺は改めて手を差し出した。
「よろしく頼む、ハワード」
「ああ。こちらこそよろしく、ダイチ」
固い握手を交わす。
すると、どこからか聞き覚えのある声が響いた。
「おいおい、俺様を置いていくなよ大地」
「……ん?」
俺はきょろきょろと辺りを見回す。
「ビリー!?」
「今さら気づいたのかよ!」
ビリーの声に、思わず笑ってしまう。
「なんだよ、お前もいたのか」
「最初からいたわ!」
「ありがとうな。号を助けてくれて」
そう言うと、ビリーは得意げに笑った。
「当たり前だ。この俺様がついていれば負けることはないぜ」
「お前、実体化できないからほぼ寝てただろ」
号が冷静に突っ込む。
ビリーは露骨に口笛を吹いた。
俺も号も、ハワードまで吹き出す。
「ははははっ!」
笑い声が広がる。
こんな状況なのに、不思議と少しだけ肩の力が抜けた。