想想戦記―想いが力になる世界で、俺は戦う― 作:berunarudo
俺は空を見上げる。
「たぶん、燈真さんがみんなの結界を壊してるはずだ。合流しよう」
「でも、みんなは京都じゃないのか?」
号が言った、その直後だった。
俺たちの目の前の空間が、ぐにゃりと歪んだ。
「……え?」
扉だ。
光の扉が、目の前に現れる。
そして次の瞬間。
「うおおおおおお!! 落葉松どこだぁぁぁ!!」
聞き慣れた大声と共に、扉から飛び出してきた男がいた。
「……相馬さん」
「……やっぱりこいつからか」
俺と号は揃って呆れた。
荒木相馬《あらきそうま》は俺たちを見つけるなり、にやりと笑う。
「あぁん? お前らじゃねぇか!」
次の瞬間、ごつごつした腕で俺たちをまとめて抱きしめてきた。
「ぐぇっ!?」
「い、痛い!」
だが相馬は意に介さない。
「よくやったなお前ら! さすがは俺の弟子たちだ!!」
そこへ、勝吾も扉の向こうから姿を現した。
「あいかわらず騒がしいやつじゃ」
呆れたように言いながらも、その顔には安堵が浮かんでいる。
さらに続いて、烈が現れる。
「号」
短く呼んだその声は、普段よりずっと柔らかかった。
「……よくやったな」
そして、そのまま号を抱きしめた。
号は一瞬だけ驚いた顔をしたが、すぐに小さく笑った。
「ああ」
瑠偉と花崎も駆け寄ってくる。
「死んでなかったようね」
「ほんとによかった……!」
「当たり前だ」
号がそう言うと、自然と皆が集まり、互いの無事を確かめ合うように肩を叩き、抱きしめ合った。
少し離れた場所では、翔が目元を押さえていた。
「いい光景だぜ……」
「泣いてるの?」
優華が横で静かに聞く。
「泣いてねぇ。これはただ、目にゴミが入っただけだ」
「ふふ」
優華は小さく笑った。
その横顔も、どこか柔らかかった。
俺は吉沢さんの姿を見つけて、思わず駆け寄る。
「吉沢さん! 俺、やったぜ!」
吉沢さんはいつものように、優しく笑った。
「さすがだよ、大地」
その一言が、やけに胸に響いた。
――ようやく。
ようやく、全員が合流できた。
俺は空に浮かぶ島を見上げる。
あそこに、落葉松がいる。
「今に見ていろ」
拳を握る。
「絶対に、目を覚まさせてやる」
「落葉松《からまつ》様。どうしますか」
神殿の奥で、声が響く。
「彼らが東京に来ましたが」
その報告を聞いても、落葉松は楽しそうに笑うだけだった。
「あははははっ」
窓の外を見下ろしながら、心底愉快そうに目を細める。
「大地は、まったく退屈させない男だ」
その声音には、明らかな期待が混じっていた。
「さすがは私の友達だよ」
落葉松は立ち上がる。
「いいだろう。君たちが神殺しに来るというのなら――」
その笑みが、ゆっくりと深まる。
「こちらも、神として迎えてあげようじゃないか」
外では、東京全体が歪んだ空の下で軋んでいる。
それすら、この男には舞台装置でしかないようだった。
「実に待ち遠しいよ、大地」
その隣で、ノイズは静かに下を見つめていた。
仲間と合流し、前を向く大地たちの姿。
それを見ている胸の奥に、言いようのない感情が広がっていく。
羨望。
嫉妬。
焦り。
痛み。
「……どうして」
小さく、誰にも聞こえない声が漏れる。
「なぜ、あのような男を……」
落葉松様は、あんなにも楽しそうに笑うのに。
自分はずっとそばにいた。
拾われて、救われて、与えられて、尽くしてきた。
それなのに。
「あなたには……僕が……」
そこで、はっとする。
自分が何を考えたのか。
何を願ってしまったのか。
ノイズは唇を噛んだ。
「……僕は、一体……何を……」
その答えを、まだ自分でも認められなかった。