想想戦記―想いが力になる世界で、俺は戦う―   作:berunarudo

14 / 138
第14話 教える「想い」

 ――もう、想力が残っていない。

 

 それは、全員が分かっていた。

 

 呼吸は荒く、体は重い。

 拳も、剣も、もう思うように動かない。

 

 このまま――

 ここで死ぬ運命なのか。

 

 嫌だ。

 

 その想いが、奇妙なほど、はっきりと繋がっていた。

 

「……諦めるわけには、いかない」

 

 瑠偉が、震える声で言った。

 

 剣を握る手は、血で滑っている。

 

「……ここで終わるわけには、いかない」

 

 俺も、そう呟いた。

 

 視界が、滲む。

 

「……僕は……」

 

 花崎が、顔を上げる。

 

「……もう、逃げない」

 

 三人の想いが、同じ方向を向いた、その瞬間。

 

 獅子が、嗤った。

 

「俺に、この力を使わせたこと――」

 

 巨大な腕を振り上げる。

 

「光栄に思い、死ね」

 

 圧倒的な殺気。

 逃げ場はない。

 

 そのとき。

 

 ――パァン。

 

 乾いた、衝撃音。

 

 次の瞬間、獅子の巨体が吹き飛んだ。

 

「……?」

 

 俺たちは、目を見開く。

 

 この音。

 この感覚。

 

「……まさか」

 

 闇の中から、一人の男が歩いてくる。

 

 目隠しをしたまま。

 いつも通りの、軽い足取りで。

 

「いやあ」

 

 吉沢が、肩を回す。

 

「全員、若くて未熟もいいところだね」

 

 そして、笑った。

 

「――でもさ。僕は大好きだよ」

 

 一歩、前に出る。

 

「ここからは、僕の番さ」

 

 獅子が、立ち上がる。

 

「……なんだ、今のは」

 

 低く唸る。

 

「まるで……俺が、俺を殴ったかのような……」

 

 獅子の目が、吉沢を捉える。

 

「……貴様は、違う」

 

 殺気が、濃くなる。

 

「ガキどもとは、格が違う」

 

 吉沢は、楽しそうに言った。

 

「正解」

 

 獅子が、跳ぶ。

 

 目にも留まらぬ速度。

 

 だが。

 

 ――弾かれる。

 

「……なっ」

 獅子の拳が吉沢の手に触れた瞬間、運動エネルギーが逆流し、獅子の腕の筋肉が内側から自壊するような鈍い音が響く。

 

 獅子は、空中で体勢を崩す。

 

 吉沢は、動かない。

 

 獅子は、理解する。

 

「……貴様……俺の力を、利用しているな」

 

「さあ、どうかな」

 

 吉沢は、軽く笑う。

 

「ライオン」

 

 肩をすくめる。

 

「なら、近寄らなければいいだけだ」

 

 獅子が、大きく口を開いた。

 

「獅子王撃《ライオンハート》!!」

 

 空気が、圧縮される。

 

 だが。

 

「あまいよ」

 

 吉沢が、踏み込む。

 

「――浸透衝撃《ディープインパクト》」

 

 空間に、衝撃が走った。

 

 攻撃だけじゃない。

 獅子の“内側”まで、貫く。

 

「――グハァ!!」

 

 血を吐き、獅子が吠える。

 

「……貴様……何をした……!」

 

 吉沢は、淡々と答える。

 

「僕の力は、衝撃さ」

 

 一歩、近づく。

 

「今のは、空間に衝撃を入れた技」

 

 獅子の体が、軋む。

 

「それでね」

 

 指を鳴らす。

 

「君の構造が、だいたい分かった」

 

 獅子が、睨みつける。

 

「……なぜ……説明する……」

 

 吉沢は、微笑んだ。

 

「分からないかい?」

 

 一拍。

 

「――王手さ」

 

「なめるなよ、人間!!」

 

 獅子が、咆哮する。

 

「たった一撃で――!」

 

 その先は、言葉にならなかった。

 

 そこからは、蹂躙だった。

 

 拳が、走る。

 衝撃が、重なる。

 

 獅子の弱点を、正確に打ち抜く。

 

 巨体は、見るも無残に崩れていく。

 

「……ガハ……ハハ……」

 

 獅子が、笑う。

 

「……想像以上だ……人間……」

 

 血に染まりながら、言った。

 

「……ここまでとはな……」

 

 吉沢は、静かに言う。

 

「君はもう死ぬのに、何が面白い?」

 

 獅子は、こちらを見た。

 

「……これからの世は……乱世だ……」

 

 不気味な笑み。

 

「……荒れるぞ……」

 

 そう思うだろ、と言うように、

 獅子の視線が、俺に向く。

 

 次の瞬間。

 

 獅子の体から、膨大なエネルギーが溢れ出す。

 

「……っ」

 

 吉沢の声が、鋭くなる。

 

「まずい」

 

 振り返り、叫ぶ。

 

「掴まれ!」

 

 俺たちを抱え、跳ぶ。

 

 次の瞬間。

 

 ――轟音。

 

 山が、揺れた。

 

 夜空を裂くような、爆発音。

 

 振り返ることは、できなかった。

 

 ただ。

 

 胸の奥に、強く残った。

 

 ――これが。

 

 想界師の、戦い方。




あとがき
吉沢 源の式想は衝撃。
特徴 衝撃を操る力。
また、彼は生まれるつき目が見えない代わりに目以外の感覚が鋭く、特に想力により察知能力はすさまじい。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。