想想戦記―想いが力になる世界で、俺は戦う―   作:berunarudo

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第26話 湧き上がる「想い」

通信が切れたあと、

吉沢は一瞬だけ、黙った。

 

それから、端末を持ち替える。

 

「……鳴海」

 

短い呼び出し音。

 

『吉沢さん?』

 

号の声だった。

 

「まずい事態だ」

「黒等級事案になった」

 

間。

 

『……そこまで、ですか』

 

驚きを隠しきれない声音。

 

「一度、集まりたい」

「今すぐだ」

 

『分かりました』

 

通信が切れる。

 

――数十分後。

 

「吉沢さんからの連絡だ」

 

号が、俺を見る。

 

「一度、合流する」

 

「了解」

 

短く答えた。

 

その言葉を聞いた瞬間、

吉沢は俺の顔を見て、少し笑った。

 

「やっぱり」

 

軽い口調。

 

「我慢できてなかったか」

 

図星だった。

 

「……それで?」

 

椅子に腰を下ろし、顎に手を当てる。

 

「何があったの」

 

俺と号は、これまでのことを話した。

 

転神町での出来事。

化け物の兄弟。

正藤会との協定。

そして――町を巻き込んだ“祭り”の計画。

 

話し終えた瞬間。

 

「――あはははは!」

 

吉沢が、腹を抱えて笑った。

 

「なにやってるの、君たち」

 

目隠しの下で、目を細める。

 

「久しぶりだよ」

「ここまでの、やんちゃ坊主たちは」

 

一拍。

 

「本来なら、大目玉だ」

 

でも、と。

 

「今回は――逆だね」

 

立ち上がる。

 

「MVPものだよ」

 

俺と号は、顔を見合わせた。

 

そのとき。

 

吉沢が、少し声を落として言った。

 

「……花崎と瑠偉は、無事に戻ってきた」

 

「……!」

 

思わず、息を呑む。

 

「どうして……」

 

「翔が残ったんだ」

 

吉沢は、淡々と続ける。

 

「二人を怜に託して」

「自分は、満腹亭に残った」

 

一拍。

 

「足止めだ」

「逃がすために、一人でな」

 

胸の奥が、重くなる。

 

「……姉さんは?」

 

号が、低く聞いた。

 

「怜だけが、戻ってきた」

 

吉沢の声は、静かだった。

 

「翔は――まだ、だ」

胸が、ドクンと嫌な音を立てた。あの暑苦しいほどに妹を想っていた男が、一人で。

 

「……クソ」

号が低く毒づき、壁を強く殴った。一方で俺は、あの力強い握手の感触を思い出していた。あんな奴が、ここで終わっていいはずがない。

 

そして、怜が持ち帰った情報。

満腹亭の地下。

開眼の研究。

そして――上層部の動き。

 

話を聞き終えた瞬間。

 

「……そんなの」

 

気づけば、拳を握っていた。

 

「なんで罪もない人が」

「町ごと、犠牲にならなきゃいけないんだよ」

 

声が、荒れる。

 

吉沢は、否定しなかった。

 

「上層部はね」

 

淡々とした声。

 

「そんなこと、気にしない」

 

一拍。

 

「彼らの役目は」

「“神秘”を維持することだ」

 

冷たい現実。

 

「町がどうなろうと」

「関係ない」

 

「……じゃあ」

 

喉が、詰まる。

 

「どうにもできないのかよ」

 

吉沢は、少しだけ笑った。

 

「できるさ」

 

一歩、前に出る。

 

「だからこそ――」

 

俺と号を見る。

 

「君たちの“祭り”が、役に立つ」

 

空気が、変わった。

 

「上層部が動く前に」

「餓楽を、倒しきる」

 

簡単に言うが、無茶だ。

 

「そのためには、人数がいる」

 

指を鳴らす。

 

「でも、その問題は」

「もう君たちが、解決してくれた」

 

正藤会。

町の構成員。

そして、動ける想界師たち。

 

「想魁者は、僕らが受け持つ」

「一般のごろつきは、彼らに任せる」

 

肩をすくめる。

 

「本来なら、絶対にダメな連携だけどね」

 

一拍。

 

「問題が、問題だ」

 

にやり、と笑う。

 

「あとで、いくらでも謝ればいい」

 

そして。

 

「さあ」

 

俺を見る。

 

「その代表に、会わせてくれ」

 

胸の奥で、何かが動いた。

 

これはもう、

ただの調査じゃない。

ただの任務でもない。

 

――町を賭けた、祭りだ。

 

俺は、拳を握った。

 

後悔しないために。

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