想想戦記―想いが力になる世界で、俺は戦う―   作:berunarudo

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第33話 迸る「想い」

 床が、抉れた。

 

 衝撃が遅れて伝わり、

 俺の身体が後ろへ跳ねる。

 

 ――重い。

 

 一撃一撃が、致命傷に近い。

 

 目の前の怪物は、

 人の形をしていない。

 

 肉の塊。

 獣の輪郭。

 あちこちに浮かぶ、人の顔と腕。

 

 殴る。

 裂く。

 砕く。

 

 だが。

 

 再生する。

 

 まるで、意味がない。

 

「……はは」

 

 笑い声。

 

 怪物の後ろ。

 高い位置から、それを見下ろす男。

 

 幸田零士。

 

「なぜ、こんなことをするか?」

 

 愉快そうに言う。

 

「簡単だよ」

「この世界を、取るためさ」

 

 攻撃を避けながら、俺は叫ぶ。

 

「お前のせいで!」

「街は、めちゃくちゃになりかけた!」

 

「何が問題なんだ?」

 

 幸田は、心底不思議そうに首を傾げた。

 

「この世は、俺のものだ」

「そうなる運命だった」

 

 笑う。

 

「弱者に、選ぶ権利なんて」

「最初から、ないんだよ」

 

 胸が、熱くなる。

 

「俺は違う」

 

 幸田は、胸を張る。

 

「生まれたときから」

「すべてを、持っていた」

 

 一拍。

 

「金」

「名誉」

「女」

 

 唇が歪む。

 

「俺は、この街が好きだった」

「だから、欲しいと思った」

 

 視線が、鋭くなる。

 

「街を良くしてやろうとも、思った」

「なのに――」

 

 吐き捨てる。

 

「街の連中は、安室を選んだ」

 

 一瞬。

 

「だから」

「両方、殺そうと思った」

 

 肩をすくめる。

 

「何が悪い?」

 

 声が、低くなる。

 

「この俺が、王だ」

 

 ――ふざけるな。

 

 気づけば、叫んでいた。

 

「誰も!」

「お前のものじゃない!」

 

 怪物の攻撃を受け止めながら、言い切る。

 

「それぞれが、それぞれの人生だ!」

「他人が、決めていいわけないだろ!」

 

 幸田は、腹を抱えて笑った。

 

「いいねぇ」

「理想論だ」

 

 一拍。

 

「ならまず」

「その怪物を、殺してから言え」

 

 怪物が、地を蹴る。

 

 咄嗟に跳ぶ。

 

 ――速い。

 

 一度でも、まともに喰らえば終わりだ。

 

 それでも。

 

 ダメージは、与えている。

 

 確かに、効いている。

 

 だが。

 

 再生が、早すぎる。

 

「無駄だよ」

 

 幸田が、楽しそうに言う。

 

「そいつは、無限の再生力を持ってる」

 

 一拍。

 

「あるガキが、持っていた力でね、奪ったのさ」

 

 頭が、真っ白になる。

 

「市長が邪魔だった」

「だから、拉致した」

 

 淡々と。

 

「そのガキは、再生の力を持ってた」

 

 声が、弾む。

 

「だからさ」

「ガキの目の前で、母親を痛め続けた」

 

 血の気が、引く。

 

「感情が、最大になった瞬間」

「母親を殺して」

 

 一拍。

 

「ガキも、殺した」

 

 喉が、詰まる。

 

「それを、ずっと見せてた父親――」

「言うことを聞かなかった市長の」

「絶望の顔は、最高だったよ」

 

 ギャハハ、と笑う。

 

 ――許せない。

 

 胸の奥で、何かが切れた。

 

 拳を、握りしめる。

 

 血が、滲んでいることにも気づかない。

 

 怒りが。

 嫌悪が。

 憎悪が。

 

 溢れ出す。

 

 気づかないうちに。

 

 俺の身体から、

 薄い白色の光が、立ち上っていた。

 

 幸田が、目を細める。

 

「……なんだそれ」

 

 だが、関係ない。

 

 俺は、前を見た。

 

 怪物を見る。

 

「……怪物よ」

 

 声は、震えていない。

 

「俺が」

「お前を、止める」

 

 一拍。

 

「そして」

「あいつを、殺す」

 

 怒りは、消えない。

 

 だが。

 

 この想いだけは、違う。

 

 ――後悔しないために。

 

 俺は、一歩、踏み出した。

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