想想戦記―想いが力になる世界で、俺は戦う―   作:berunarudo

46 / 138
第46話 確かめる「想い」

 ――落葉松が、想力を流した。

 

 次の瞬間。

 

 刀身に、赤い筋が走る。

 

 呼吸一つ。

 

 まるで火種に空気が送られたように、

 刀に“灯”がともった。

 

 嫌な予感が、背中を走る。

 

(……近づく)

 

 考えるより先に、体が動いた。

 

 ――先手必勝。

 

 拳に想力を集める。

 

 前より速い。

 迷いもない。

 

「――フィストブラスト!」

 

 一直線の衝撃。

 

 だが――

 

 当たる寸前。

 

 落葉松が、刀を横に振るった。

 

 その瞬間。

 

 刀の火が、空間に“移った”。

 

 ――空間が、燃える。

 

「……っ!?」

 

 炎は壁のように立ち上がり、

 俺の攻撃は、跡形もなくかき消された。

 

「な――」

 

 驚く暇はない。

 

 火を突っ切り、

 落葉松が踏み込んでくる。

 

 狙いは、俺。

 

 刀が突き出される。

 

「――っ!」

 

 慌てて身を引く。

 

 だが。

 

 刺さる――

 

 そう思った瞬間。

 

 刀は、俺ではなく。

 

 ――空間に、刺さった。

 

 刹那。

 

 空間が、閃光を放つ。

 

 次の瞬間。

 

 ――爆発。

 

「ぐああっ!!」

 

 衝撃が、体を叩きつける。

 

 地面を転がりながら、歯を食いしばる。

 

(くそ……)

 

(複雑すぎる式想だ……)

 

 だが。

 

 分かる。

 

 あいつは――

 

(空間や、モノに……何かを“している”)

 

 なら。

 

 試すしかない。

 

 拳に想力を集め、

 今度は地面を殴る。

 

「――っ!」

 

 衝撃が走る。

 

 想力が、地中を潜る。

 

 ――フィストマイン。

 

 次の瞬間。

 

 落葉松の足元。

 

 地面を突き破り、

 無数の拳が、下から突き出した。

 

「ほう」

 

 落葉松は軽く跳ぶ。

 

 そして。

 

 下の“空間”に、刀を差した。

 

 すると。

 

 そこに――

 

 岩の地面が“生まれた”。

 

 拳の群れを、完全に防ぐ。

 

 その一瞬。

 

 俺は、目に想力を集めた。

 

(……見えた)

 

 理解が、繋がる。

 

(刀を差した場所に)

(想力を流した瞬間――)

 

(そこに“属性”が付与される)

 

 空間が燃え、

 空間が爆ぜ、

 空間が、地面になる。

 

(なんて――)

 

(やっかいな式想だ……)

 

「ふふふ」

 

 落葉松が、不敵に笑う。

 

「まったく」

「僕の力、すぐばれちゃうね」

 

 一拍。

 

「まあ」

「ばれてもどうしようもないのが」

 

「僕の、ずるいところなんだけどさ」

 

 ……確かに。

 

 なら。

 

 ――刀の間合いを、超える。

 

 俺は、地を蹴った。

 

 一気に距離を詰める。

 

 落葉松が、再び刀を振る。

 

 空間に付与するつもりだ。

 

 その瞬間。

 

 俺は――

 

 拳に、想力を“過剰に”込めた。

 

 拳を纏う想力が、異様に膨れ上がる。

 

 そして。

 

 拳を、後ろに向けた瞬間。

 

 ――破裂。

 

「――パァンッ!!」

 

 背後で起きた強烈な爆圧が、俺の脊髄を軋ませ、意識を飛ばしかけるほどの圧をかける。だが、その痛みが逆に思考を研ぎ澄ませた

 

 爆ぜた勢いが、背中を押す。

 

 そのまま。

 

 拳を、前に突き出した。

 

 ――フィストジェット。

 

 加速。

 

 加速。

 

 刀が振るわれる前に。

 

 俺の両拳が――

 

 落葉松に、直撃した。

 

「……っ!」

 

 落葉松の顔が、わずかに歪む。

 

 興を突かれたような目。

 

「……ぐっ」

「……重い」

 

 防御に入るが、

 受けきれない。

 

 体が、吹き飛ばされた。

 

 地面を削り、

 止まる。

 

「……どうだ」

 

 俺は、息を荒げながら言った。

 

 だが。

 

 落葉松は――立ち上がった。

 

 腕を、ぶら下げながら。

 

「いやー……」

 

 困ったように笑う。

 

「油断したなぁ」

 

「強化が間に合わなかった腕で」

「ガードしちゃったよ」

 

 視線を、腕に落とす。

 

「おかげで――折れた」

 

「もう」

「刀、振れそうにないや」

 

 そして。

 

 もう片方の手を上げる。

 

「――降参」

 

 情けない声。

 

 だが。

 

 闘技場が、静まり返る。

 

 次の瞬間。

 

「え……?」

「落葉松様が……?」

 

「負けた……?」

「でも……潔い……」

 

「かっこいい……」

 

 ざわめきが、歓声に変わる。

 

「……あいつ」

「思ったより、強ぇな……」

 

 そんな声も混じる。

 

 ――勝った。

 

 大地の、初戦は。

 

 確かに、勝利で終わった。

 

「やったな、大地」

 

 ベンチから、号が声をかける。

 

「きつかったけど」

「なんとかね」

 

 俺は、ベンチに腰を下ろした。

 

 肩で息をしながら。

 

「今のは良かったよ」

 

 吉沢が、微笑む。

 

「だいぶ力業だけどね」

 

 一拍。

 

「荒木家らしい」

 

 そう言って、笑った。

 

「次は」

「僕の番だね」

 

 吉沢は、静かに立ち上がる。

 

「もちろん」

「勝ってくるよ」

 

 俺の息が落ち着く前に。

 

 再び、試合開始の合図が響いた。

 

「なんという少年だ……!」

「落葉松様を打ち破るとは!」

 

「だが!」

「次の相手はどうだ!」

 

「その冷たい眼差しに――」

「逆にファンも多い!」

 

「楽座――伊織!!」

 

 観客が、ざわめく。

 

「そして迎え撃つは――!」

 

「金等級最強とも名高い!」

「眼帯の男!」

 

「吉沢――源!!」

 

 闘技場に、伊織が上がる。

 

 冷たい目。

 

 一切、感情を感じさせない。

 

 吉沢は、ゆっくりと歩み寄り。

 

 右手を、差し出した。

 

 だが。

 

 伊織は、その手を見もしない。

 

 ただ。

 

 冷たく、吉沢を見返す。

 

「……つれないなぁ」

 

 吉沢が、軽く肩をすくめる。

 

 その瞬間。

 

「――試合、始めぇ!!」

 

 冷たい空気が、闘技場を切り裂いた。

 

 次鋒の戦いが。

 

 音もなく、始まった。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。