想想戦記―想いが力になる世界で、俺は戦う―   作:berunarudo

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第48話 戸惑う「想い」

――試合開始の合図と同時に。

 

 瑠偉は、一切の躊躇なく想力を解放した。

 

「私は……もう、油断なんてしない」

 

 舞う。

 

 舞舞。

 

 身体能力が一気に引き上げられ、

 軽やかなステップと共に、剣が煌めく。

 

「はっ!」

 

 刃が、優真を襲う。

 

「くぁっ……!」

 

「ほう……」

 

「や、ちょ、ちょっと危ないじゃないか!」

 

 優真は、紙一重で避け続ける。

 

 軽い声。

 だが、その足運びは正確だった。

 

「避けるなー!」

 

 瑠偉が叫び、

 さらに想力を迸らせる。

 

 剣技は激しさを増し、

 闘技場の空気が揺れる。

 

「まったく……」

 

 優真の雰囲気が、変わった。

 

「だから――」

 

「少し、大人しくしててくれるかな」

 

 冷たい声。

 

 その瞬間。

 

 瑠偉の視界が、

 闇に閉ざされた。

 

 ――見えない。

 

 だが。

 

 優真は知らなかった。

 

 この少女、

 天歌 瑠偉は――

 

「……?」

 

 瑠偉は、一切動揺しなかった。

 

 視界がなくても。

 

 音がなくても。

 

 ――関係ない。

 

 剣は止まらない。

 

 身体が覚えている。

 

 舞うように、

 無心で剣技を繰り出す。

 

「な――」

 

 優真が言葉を失う。

 

 次の瞬間。

 

 ――ドンッ。

 

 衝撃。

 

 優真の身体が、吹き飛ばされた。

 

「……あれ?」

 

 地面に転がり、気絶する優真を見て

 瑠偉はきょとんとした顔をする。

 

「……勝ってる?」

 

 間。

 

「……やったわ!」

 

 ようやく理解し、

 瑠偉が笑顔を弾けさせた。

 

 ――先鋒、天舞家の勝利。

 

「さすがだな……」

 

 大地が、呆れ半分に呟く。

 

「能力、完全無視かよ……」

 

 だが、すぐに次の声が響いた。

 

「続いて――次鋒!」

 

 闘技場の空気が、引き締まる。

 

「我らの王女様!」

 

「その美貌と慈愛から、聖女と称えられる!」

 

「――天舞 優華!!」

 

 男たちの歓声が、割れる。

 

 だが。

 

 対する男への声援は、控えめだった。

 

「鳴海家より!」

 

「冷静にして狡猾、すべてを見通す眼!」

 

「――鳴海 壮吾!!」

 

 壮吾は、淡々と言い放つ。

 

「悪いが」

「俺は女を傷つける趣味はない」

 

 優華は、静かに微笑む。

 

「私は」

「構いません」

 

「――試合、始めぇ!」

 

 その瞬間。

 

 壮吾の眼が変わる。

 

 鋭く、

 まるで鷹のように。

 

 優華は、迷わず手を上げた。

 

「……出でよ」

 

 背後の影が、蠢く。

 

「影騎士」

 

 影から、一体の騎士が立ち上がる。

 

「敵を、打ちなさい」

 

 影騎士は無言で前に出る。

 

 一歩。

 

 また一歩。

 

 間合いに入った瞬間。

 

 大剣が、唸りを上げて振るわれた。

 

 だが。

 

 壮吾は、紙一重で避け続ける。

 

「……見切った」

 

 刀を抜く。

 

 両手で構え、

 影騎士に踏み込む。

 

 ――一閃。

 

 弱点を、正確に断つ。

 

 影は、霧散した。

 

「……嘘」

 

 優華が、目を見開く。

 

「影騎士が……一撃で……?」

 

「どうした」

 

 壮吾が、冷たく言う。

 

「これで終わりか、女」

 

「なら――死ぬぞ」

 

 優華は歯を食いしばる。

 

「……まだです」

 

 影が、再び広がる。

 

「影軍」

 

 地面から、

 数十体の影兵が湧き上がった。

 

「数は多いが……」

 

 壮吾は、動じない。

 

 眼が、すべてを捉える。

 

 兵士たちの攻撃は、

 ことごとく回避される。

 

「……っ」

 

 優華の拳が、震える。

 

 ――近衛。

 

 本来なら、

 呼ぶべき切り札。

 

 だが。

 

「それはもう――」

 

 壮吾の声。

 

「見切っている」

 

 気づいたときには。

 

 優華の首元に、

 刀が添えられていた。

 

「……」

 

 優華は、静かに影を引かせる。

 

「……悔しいですが」

 

「降参です」

 

 ――次鋒、鳴海家の勝利。

 

 観客が、どっと沸いた。

 

 天舞家のベンチへ戻る優華。

 

「惜しかったな、お嬢様」

 

 翔が、悔しそうに笑う。

 

「あと一歩だったのに」

 

 そして。

 

 ぎらりと目を輝かせる。

 

「でもさ」

 

「悪いけど――」

 

「俺は、あいつとやれそうで嬉しい」

 

 烈を見る。

 

「安心しろ、お嬢様」

 

「この俺に――」

 

 司会の声が、闘技場を震わせる。

 

「なんという混戦!」

 

「勝敗の予想は不可能!」

 

「――大将戦!!」

 

「彼の奏でる音楽は天にも響く!」

 

「きっすいの馬鹿!」

「だが、誰もが愛する男!」

 

「――天歌 翔!!」

 

 最大級の歓声。

 

「対するは!」

 

「鳴海家の猛獣!」

 

「敵も味方も喰らい尽くす!」

 

「――鳴海 烈!!」

 

 翔が、笑う。

 

「ようやく君と戦えて」

「俺は、うれしいよ」

 

 烈は、不敵に口角を上げた。

 

「ここまで来たんだ」

 

「簡単に――壊れるなよ」

 

「――試合、始めぇ!!」

 

 次の瞬間。

 

 ギターの激しい音が、

 闘技場を切り裂いた。

 

 二人の戦いの幕が開ける。

 




あとがき
鳴海 優真
式想 徳猿
技 三文 
特徴 相手に三文を付与する。三文とは最初は相手の視界が見えなくなり、次に聞こえないくなり、最後には音を発せれない。
元ネタは見ざる言わざる聞かざる
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