想想戦記―想いが力になる世界で、俺は戦う―   作:berunarudo

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第49話 響き渡らせる「想い」

 翔は、ギターを強く掻き鳴らした。

 

 ――ギャァンッ。

 

 その音は、

 雷のように迸り、

 地面をえぐりながら烈へと突き進む。

 

 烈は、腕を狼のそれへと変化させる。

 

 さらに。

 

 その腕に、業火を纏わせた。

 

「――効かねえな」

 

 炎の腕で、

 音を、軽々と受け止める。

 

「はは……さすがだ」

 

 翔は笑いながら、

 弾く手を止めない。

 

 音は、さらに激しく。

 

 ――ギャァァンッ。

 

 さっきよりも深く、

 地面を裂き、

 烈に向かう。

 

「同じ手は通じねぇ」

 

 烈が低く吠える。

 

「――業火狼拳」

 

 炎が、拳の形を成す。

 

 業火の拳は、

 翔の音を飲み込みながら、

 一直線に迫った。

 

「……っ!」

 

 翔は弾く手を止めず、

 地面へ向けて、甲高い音を放つ。

 

 音が地面を叩いた瞬間。

 

 その反動で、

 翔の身体が、上空へ跳ね上がる。

 

「――ブォォンッ!!」

 

 空中で、

 さらに激しく奏でる。

 

 次の瞬間。

 

 流星群のように、

 無数の音が降り注いだ。

 

 烈を包み込む、

 轟音の雨。

 

 翔は着地すると同時に、

 最後の一音を締める。

 

「――ジャーン」

 

 煙が、闘技場を覆う。

 

 静寂。

 

 やがて。

 

 煙の中から現れたのは――

 もはや人の姿ではなかった。

 

 完全な狼人間。

 

 獰猛で、

 凶暴で、

 理性を削ぎ落とした化け物。

 

「……今の、痛かったぜ」

 

 烈が笑う。

 

「この姿じゃなきゃな」

 

 全身に、

 業火が荒れ狂う。

 

「生きて帰れると思うなよ」

 

 烈は、跳んだ。

 

「――業火狼百拳」

 

 背後に、

 無数の炎の拳が現れる。

 

「……まずいな」

 

 翔は焦る。

 

 その焦りすら、

 音となって溢れ出す。

 

 翔の周囲を、

 守るように音が迸る。

 

 次の瞬間。

 

 ――轟音。

 

 業火の拳が、

 闘技場に降り注ぐ。

 

 地面が揺れ、

 空気が震え、

 視界が真っ白になる。

 

 やがて。

 

 揺れが収まる。

 

 烈が、地上に降り立った。

 

「……死んだか?」

 

 煙が晴れる。

 

 そこにいたのは――

 全身ボロボロの翔だった。

 

 立っている。

 

 それでも。

 

「……君も、なかなかの音を奏でるじゃないか」

 

 息も絶え絶えに、

 翔は笑う。

 

 烈の顔が、

 歪んだ笑みに変わる。

 

「……まだ立ってやがるとはな!」

 

「僕もさ」

 

 翔は、

 ベンチの方を見る。

 

 優華と、

 泣きそうな瑠偉。

 

「簡単に負けるわけにはいかないんだ」

 

 一拍。

 

「でも……」

 

 肩で息をしながら、

 翔は言った。

 

「どうやら、僕の曲も――」

 

「エンディングが近いみたいだ」

 

 全身から、

 最後の想いが溢れ出す。

 

「――これで、終わりにさせてもらうよ」

 

「くく……」

 

 烈が、

 心底楽しそうに笑う。

 

「おもしれぇ」

 

「その根性、気に入ったぜ」

 

 想力が、爆発する。

 

「――蒼炎狼牙!!」

 

 狼の手を重ね、

 巨大な牙を形作る。

 

 青く燃え上がる、

 巨大な狼の牙。

 

「来いよ!!」

 

 翔が、

 最後の音を叩きつける。

 

 二つの攻撃が――

 激突した。

 

 ――――――――――ッ!!!!

 

 爆音。

 

 観客が、

 一斉に耳を塞ぐ。

 

 静寂。

 

 恐る恐る、

 皆が目を開く。

 

 烈の腹に、

 音が突き刺さっていた。

 

「……ぐはっ」

 

 烈は、

 片膝をつく。

 

「……ちっ」

 

「当ててきやがったか」

 

 だが。

 

 視線の先。

 

 翔は――

 

 肩は抉れ、

 全身に噛み傷と火傷。

 

 誰が見ても、

 致命傷だった。

 

 それでも。

 

 翔は倒れない。

 

 ギターを、

 離さない。

 

 ――立ったまま。

 

 烈が、

 近づく。

 

 そして、

 気づく。

 

「……」

 

 翔は、

 すでに意識を失っていた。

 

 それでも。

 

 ギターを握り、

 立ち続けている。

 

「……なんて、野郎だ」

 

 烈の背筋に、

 わずかな畏怖が走る。

 

 ――試合終了。

 

 鳴海家の勝利。

 

 決勝進出。

 

 ◆

 

 大地は、

 駆け出していた。

 

 医療室。

 

 扉を開ける。

 

 そこには――

 

 担架に横たわる翔。

 

 必死に寄り添う優華。

 

 泣きじゃくる瑠偉。

 

「……翔の容態は……!」

 

 その時。

 

「大丈夫だよ~」

 

 聞き覚えのある声。

 

「命に別状は、ないから」

 

 振り向く。

 

 そこに立っていたのは――

 

 ギャル口調の女医。

 

「久しぶりだね」

 

「医者の南、良々だよ」

 

 大地は、

 胸をなで下ろした。

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