想想戦記―想いが力になる世界で、俺は戦う―   作:berunarudo

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第62話 決意する「想い」

「……ちっ」

 

 荒邦が、舌打ちする。

 

「時間稼ぎにもならんかったか」

 

 吉沢が、一歩前に出た。

 

「……どうして殺した」

 

 静かな声だった。

 

「壮吾を」

「なぜ、殺したんだ」

 

 荒邦は、肩をすくめる。

 

「あのバカがな」

「罪を一緒に暴露しようとか」

「甘いこと抜かしよった」

 

 嗤う。

 

「そんなことされたら」

「俺の計画は、全部パーや」

 

「……させるわけ」

「あらへんやろ」

 

 沈黙。

 

「そうか」

 

 吉沢は、眼帯の奥で目を細めた。

 

「悪いけど」

「僕は、君のことが」

「昔から嫌いだったよ」

 

「フゥーハハハ!」

 

 荒邦が、腹を抱えて笑う。

 

「奇遇やな」

「俺もや」

 

「お前の」

「正義づらした感じ」

「昔から大嫌いやったわ」

 

 荒邦が、指を振る。

 

「君たちは下がっていろ」

 

「こいつは」

「僕が、やる」

 

 吉沢が、踏み出した。

 

 ――衝撃。

 

 拳が振るわれる。

 

 だが。

 

 当たる直前、

 荒邦の身体が――透けた。

 

「……っ!」

 

 拳が、空を切る。

 

 次の瞬間。

 

 荒邦の拳が、逆側から迫った。

 

 ガード。

 

 ――だが。

 

 守った腕を、すり抜ける。

 

「ぐっ……!」

 

 拳が、腹に叩き込まれた。

 

 吉沢が、後ずさる。

 

「俺もな」

「こう見えて」

「意外と強いんよ」

 

 荒邦は、笑いながら言う。

 

「俺の能力はな」

「壁や床みたいな」

「空間の“境界”を」

「曖昧にすることや」

 

 荒邦が、床を蹴る。

 

 次の瞬間、

 吉沢の“上”。

 

「――っ!」

 

 踵落とし。

 

 吉沢は、紙一重で後方へ跳ぶ。

 

「壁をすり抜ける」

「床に沈む」

 

「見える範囲なら」

「一瞬で、そこや」

 

 荒邦は、腕を広げた。

 

「俺の理想を邪魔する奴は」

「全員、皆殺しや」

 

「俺だけが」

「生きてたら」

「それでええ」

 

 吉沢が、息を整える。

 

「……そうか」

 

「君には」

「交渉の余地があると」

「思っていたけれど」

 

 一歩、踏み出す。

 

「今」

「その考えは捨てる」

 

「――君を」

「ここで倒す」

 

「ほぉう?」

 

 荒邦が、にやりと笑う。

 

「殺せるもんなら」

「殺してみぃや」

 

 その瞬間。

 

 吉沢の動きが、変わった。

 

 足元に、微細な衝撃。

 

 ――一歩。

 

 速い。

 

 ――二歩。

 

 さらに速い。

 

 常に、地面を叩くように、

 衝撃を刻み、速度を上げていく。

 

「早いだけやな」

 

 荒邦は、テレポートする。

 

 床へ。

 壁へ。

 

 逃げる。

 かわす。

 

 だが――

 

「君の弱点は」

「君自身が」

「話してくれた」

 

 吉沢が、拳を上げる。

 

「効果範囲が」

「“見える範囲”」

「だという点だ」

 

 荒邦の周囲。

 

 見えない粒子が、漂っていた。

 

「それは」

「あるだけじゃ意味がない」

 

「……だが」

 

 拳を、握り込む。

 

「起爆剤には」

「変わる」

 

「――永続衝撃《ラストインパクト》」

 

 熱を帯びた衝撃が、放たれる。

 

「避ければ」

「ええだけやろ!」

 

 荒邦が、跳ぶ。

 

 ――だが。

 

 衝撃は、追ってきた。

 

 荒邦の身体に、まとわりつく。

 

「なっ……!?」

 

 次の瞬間。

 

「ぐぁああああ!」

 

 粒子が、弾けた。

 

 衝撃。

 衝撃。

 衝撃。

 

 絶え間なく、身体を叩く。

 

「……あつい……!」

 

 焼けるような痛み。

 

「このままやと……!」

 

 床へ逃げる。

 

 ――沈もうとした、その瞬間。

 

 吉沢が、笑った。

 

「逃げ道は」

「全部、読んでるよ」

 

 地面へ拳を振り下ろす。

 

「――爆裂衝撃《ミサイルインパクト》」

 

 衝撃は、地面を潜り。

 

 床で“透けた”荒邦に――

 

 直撃。

 

「なぁ……!」

 

「――どかぁぁぁん!!」

 

 荒邦は、壁に叩きつけられ、

 崩れ落ちた。

 

「……くそが」

 

 壁にもたれ、座り込む。

 

「……まだ」

「死ぬわけには」

「いかへん……」

 

「もう、終わりだ」

 

 吉沢が、静かに言う。

 

「……どうせ」

「死ぬなら」

 

 荒邦は、笑った。

 

「見せたるわ」

「俺の、罪を」

 

 服を、ずらす。

 

 胸元。

 

 そこにあったのは――

 歪んだ、偽りの眼。

 

「へへへ……」

 

「戯眼」

「――廻天魍魎《かいてんもうりょう》」

 

 その瞬間。

 

 ――世界が、塗り替わった。

 

 崩れ落ちていたはずの身体が、

 みるみる修復される。

 

「……なぜ」

「君が、それを」

 

 吉沢が、息を呑む。

 

「決まっとるやろ」

 

 荒邦は、立ち上がる。

 

「俺が」

「楽座家の当主になるには」

「力が必要やった」

 

「親父は」

「俺を、認めへん」

 

「なら」

「力で証明するだけや」

 

 嗤う。

 

「裏のオークションで」

「有り金、全部はたいた」

 

「本当はな」

「親父を殺すために」

「使うつもりやった」

 

「……けど」

 

 腕を広げる。

 

「もう、どうでもええ」

 

「お前ら」

「一緒に」

「地獄に落ちろや」

 

 世界が、軋む。

 

 空間が、崩れ始める。

 

 荒邦が、腕を引いた。

 

 ――ドンッ!!

 

「ぐはっ!」

 

 吉沢が、吹き飛ばされる。

 

「吉沢!」

 

 俺たちが、駆け寄る。

 

「……これは」

「やばいよ」

 

 息を荒げながら、吉沢が言う。

 

「あれは」

「まさに――開眼だ」

 

「……開眼?」

 

 俺が、聞き返す。

 

「始点の」

「ごく一部の強者しか」

「使えない秘伝」

 

「本来」

「式は、魂にある」

 

「触れるには」

「パイプが必要だ」

 

「だが、開眼は」

「それを、なくす」

 

「魂に」

「直接、触れる」

 

 目を細める。

 

「黒等級クラスしか」

「できないはずなのに」

 

「あの戯眼が」

「それを可能にしている」

 

 荒木さんと、同じ領域。

 

 勝てるのか――

 そんな不安が、胸をよぎる。

 

 だが。

 

「……一人なら」

「無理だろうね」

 

 吉沢が、笑った。

 

「でも」

「仲間は、多い」

 

 その言葉で。

 

 俺の中に、

 決意が、灯った。

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