想想戦記―想いが力になる世界で、俺は戦う―   作:berunarudo

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第63話 今度は届く「想い」

 「――いくぞ」

 

 俺は、前に出た。

 

「みんな」

「あいつを、止める」

 

「おう!」

 

 声が、重なる。

 

 次の瞬間。

 

 荒邦が、腕を振り下ろした。

 

 ――世界が、ひっくり返る。

 

 地面が、空になる。

 空が、床になる。

 

 視界が反転し、

 上下の感覚が、壊れた。

 

「ちっ……!」

 

 空間が、九十度。

 百八十度。

 

 世界そのものが、回転する。

 

 方向感覚が狂い、

 足場が、信じられなくなる。

 

 それでも。

 

 俺たちは、近づこうとした。

 

「――フィスト!」

 

 拳に、想力を集める。

 

「ブラスト!」

 

 撃った。

 

 だが――

 

 荒邦が、手をかざす。

 

 次の瞬間。

 

 俺の攻撃は、消えた。

 

「……っ!?」

 

 背後。

 

 ――衝撃。

 

「ぐぁっ!!」

 

 転移した攻撃が、

 そのまま俺に叩き返された。

 

 吹き飛ばされる。

 

 今は“床”になっている空へ、

 身体が投げ出される。

 

「大地!」

 

 腕を、掴まれた。

 

 号だった。

 

「大丈夫か!」

 

「……助かった」

 

 歯を食いしばる。

 

「でも……」

「どうやって、近づく?」

 

 状況を見る。

 

 瑠偉と優華が攻める。

 だが、攻撃はすべて転移。

 

 吉沢と翔が、後方支援。

 それも、掻き消される。

 

「はぁ……はぁ……」

 

 荒邦が、嗤う。

 

「無駄や」

 

「どれだけ足掻いても」

「この世界は、俺が神や」

 

「神を殺すなんて」

「人間には、無理やろ」

 

 そのとき。

 

 一人、前に出た。

 

「……俺が、相手だ」

 

 烈だった。

 

「なんやお前」

 

 荒邦が、鼻で笑う。

 

「今さら正義づらか」

「お前も、俺と同じクズやろ」

 

「……そうだ」

 

 烈は、否定しなかった。

 

「俺は、クズだ」

 

 だが。

 

「お前みたいに」

「借り物の力には」

「頼らない」

 

「はぁ……」

 

 荒邦が、嗤う。

 

「甘いワンちゃんや」

 

「――殺したる」

 

 烈の身体が、変わる。

 

 全身が、狼人へ。

 業火が、纏わりつく。

 

「教えたるわ」

 

「上半身と」

「下半身」

「別々に転移させたら」

「どうなるか、な!」

 

 烈が、吠えた。

 

 業火で伸びた爪。

 

「――火爪十字!」

 

 十字の業火が、飛ぶ。

 

「そんなもん!」

 

 荒邦が、転移させようとした。

 

 ――だが。

 

 十字は、爆ぜた。

 

「なっ……!」

 

 次の瞬間。

 

 烈が、四足で駆けた。

 

 一瞬。

 

 距離が、消える。

 

 爪が。

 

 荒邦の腹を、貫いた。

 

「ぐぁっ……!」

 

「しまっ――」

 

 転移しようとする荒邦。

 

 だが。

 

 烈は、爪を抜かない。

 

 そのまま、業火を灯す。

 

「ぐぁああああ!!」

 

「燃えろ――」

 

「火爪・彼岸!」

 

 荒邦が、焼かれる。

 

 叫ぶ。

 

 だが――

 

 焼き切られる前に、

 転移が発動した。

 

 荒邦は、悶えながら烈を見る。

 

「……お前だけは」

 

「必ず、殺す」

 

 攻撃が、烈へ向く。

 

「兄貴!!」

 

 号が、叫んだ。

 

 烈は、笑った。

 

「……すまんな」

 

「俺は、もう限界だ」

 

 業火が、消える。

 

 変身が解け、

 人の姿に戻る。

 

 膝から、崩れ落ちる。

 

「もう……」

「避ける想力が、残ってない」

 

「死ねぇぇぇ!!」

 

 荒邦が、力を放つ。

 

 号が、走る。

 

「くそ……!」

 

「兄貴……!」

 

 だが、号の身体も止まる。

 

 想力が、尽きていた。

 

「間に……合え……!」

 

 ――その瞬間。

 

「フィスト――」

 

 声が、響いた。

 

「ジェット!!」

 

 衝撃。

 

 荒邦の攻撃が、

 烈に届く寸前。

 

 誰かが、立ち塞がった。

 

「……間に合って」

「よかったぜ」

 

 烈が、見上げる。

 

 そこにいたのは――

 

「……大地?」

 

「な、なんで貴様が……!」

 

 荒邦が、叫ぶ。

 

「どうやって、防いだ!」

 

「……俺にも」

「わからない」

 

 自分を見る。

 

 身体が、

 白いオーラに包まれていた。

 

 正体は、分からない。

 

 だが。

 

 これだけは、確かだった。

 

「もう」

「誰かが間に合わないなんて」

「ことは、起こさせない」

 

 拳を、握る。

 

「そして」

 

 視線を、荒邦に向ける。

 

「――お前を」

 

「俺は」

「殴れる」

 

 走る。

 

 一直線。

 

 狙いは、胸元。

 

 戯眼。

 

「フィスト――――」

 

 想力を、すべて込める。

 

「――――ブラスト!!」

 

 直撃。

 

「ぐぁああああああ!!」

 

 荒邦が、吹き飛ぶ。

 

 邪悪な眼が、砕けた。

 

 ――パリン。

 

 音を立てて、

 世界が、元に戻る。

 

 上下が、正しくなる。

 

 空が、空に。

 地面が、地面に。

 

 世界は崩れて、神は地に落ちる。

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