想想戦記―想いが力になる世界で、俺は戦う―   作:berunarudo

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第70話 愛する「想い」

 二日目も、

 俺たちは愛華さんに近づけなかった。

 

 どう動いても、

 どう避けても。

 

 邪気が、先に来る。

 

 身体が拒絶する。

 思考が、削られる。

 

 俺は、翔に聞いた。

 

「……なんで、動けるんだ」

 

 翔は、少し考えてから笑った。

 

「確かに、すごいよ」

 

「正直、意識持っていかれそうになる」

 

「でもさ」

 

 一拍。

 

「妹が浮かぶんだ」

 

「それだけで、踏ん張れる」

 

 ――なるほど。

 

 少しだけ、分かった気がした。

 

 三日目。

 

 邪気を浴びた瞬間。

 

 俺は、自分の想いを浮かべた。

 

 ここで立ち向かえなければ、

 誰も救えない。

 

 それは、嫌だ。

 

 もう――

 間に合わなくて、

 誰かを失うのは。

 

 嫌だ。

 

 強く、そう思った。

 

 すると。

 

 身体が、勝手に動いた。

 

 脳が拒否する。

 だが、心は折れない。

 

 燃やせ。

 

 止まるな。

 

 一歩。

 また一歩。

 

「ぐ……ぅ……!」

 

「……へえ」

 

 愛華さんの声。

 

 次の瞬間。

 

「ダメ」

 

 無情だった。

 

 烈、翔、俺。

 

 三人まとめて、吹き飛ばされる。

 

 壁に叩きつけられ、

 視界が白く弾けた。

 

 だが。

 

 愛華さんは、楽しそうに周囲を見る。

 

「少しは、良くなったじゃない」

 

 初日と違う。

 

 倒れない者が、増えている。

 

 花崎も、

 膝をつく程度で耐えていた。

 

 ――確実に、前に進んでいる。

 

 そのあと、俺は号に話した。

 

 翔が言っていたこと。

 想いのこと。

 

 号は、静かに頷いた。

 

 四日目。

 五日目。

 

 吹き飛ばされても、

 また立ち上がる。

 

 距離が、少しずつ縮まる。

 

 六日目。

 

 烈と翔が、

 ついに愛華さんに触れた。

 

 そして――

 

 七日目。

 

 何度も意識が飛びかけながら、

 俺と号も、触れた。

 

 花崎は、

 最後の最後で。

 

 指先が、

 愛華さんの靴に、かすかに触れた。

 

「……クリア、ね」

 

 その瞬間。

 

 邪気が、消えた。

 

 代わりに――

 

 慈愛。

 

 道場全体を包む、

 優しく、温かい感情。

 

 胸が、緩む。

 

「よくやったわ、みんな」

 

 愛華さんは、微笑んだ。

 

「私に触れるのは、できたらでいいの」

 

「でも、屈しなかった」

 

「立ち上がって、向かってきた」

 

「それが、何より大事よ」

 

 一人一人を見る。

 

「強い想界師はね」

 

「力が強いから、強いんじゃない」

 

「どれだけ絶望しても、這い上がる心」

 

「それが、武器になるの」

 

 そして。

 

「修行、終わり」

 

「ご褒美に――」

 

 一瞬だった。

 

 抵抗する前に拘束され、

 まとめて抱き寄せられる。

 

「ふふ」

 

「こんな美女にハグされるなんて、幸せでしょ?」

 

 頭を撫でられる。

 

 ……妙に、悪くない。

 

 だが。

 

 鍛えた精神で、必死に耐えた。

 

 精神を鍛えておいて、

 本当に良かったと思った瞬間だった。

 

 そして。

 

 次の修行。

 

 厳格なる男――

 楽座国重のもとへ向かう。

 

 質素だが、

 圧のある部屋。

 

 奥に、国重が座っていた。

 

「よく来たな」

 

「私の修行は、甘くないぞ」

 

 俺たちは、息を整える。

 

 ――また、始まる。

 

 次の試練が。

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