想想戦記―想いが力になる世界で、俺は戦う―   作:berunarudo

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第75話 夢見る「想い」

 国重の修行は、終わった。

 

 結界の中では、ほんの短い時間だったはずなのに、

 現実では――六日が経っていた。

 

 どうやら、

 俺が一番最後だったらしい。

 

 屋敷の広間には、すでに全員が揃っていた。

 

 号と烈が、最速。

 

 迷宮の構造が「破壊不可能」だと判断し、

 迷わず“死亡”を選んで脱出したという。

 

 翔と瑠偉も、同じ結論に辿り着いたらしい。

 

 花崎は――

 幻影の想獣にやられた、と聞いた。

 

 そう考えると。

 

 最後まで気づかなかった俺は、

 やはり少し、恥ずかしい。

 

「貴様はな」

 

 国重が、低い声で言った。

 

「もう少し、冷静に物事を見るべきだ」

 

 ぐうの音も出ない。

 

「だが」

 

 一拍。

 

「仲間のために動いたこと」

 

「死ではなく、“脱出”を選んだこと」

 

「それは評価する」

 

 それだけ言って、背を向けた。

 

 少し休憩を挟み、

 俺たちは全員で、荒木さんの屋敷へ向かう。

 

 その途中。

 

 ふと、気になって聞いた。

 

「なあ、落葉松」

 

「なんであんた、そこまでの力があるのに……」

 

「当主にならずに、研究とかやってるんだ?」

 

 落葉松は、少し考えてから答えた。

 

「面白いことが、大好きなんだ」

 

「可能性で満ちた世界を見るのが、夢でね」

 

「だから、研究をしてるのさ」

 

 あまりにも、あっさりしていた。

 

「いい夢だな」

 

 素直に、そう言う。

 

「君にも、ぜひ楽しんでほしい」

 

「もちろん」

 

 即答だった。

 

 落葉松は、ここまで。

 

 俺たちは、そのまま荒木さんの屋敷へ向かう。

 

 門の前に、荒木さんが立っていた。

 

「ようやく来たか」

 

「俺の修行はな」

 

 にやりと笑う。

 

「楽座みたいな遠回りは嫌いだ」

 

「シンプルにいく」

 

 嫌な予感しかしない。

 

「この俺を、満足させたら終わりだ」

 

 ……最悪だ。

 

 俺が夢で見た光景が、

 現実になってしまったらしい。

 

 黒等級との、真正面からの対峙。

 

「安心しろ」

 

 荒木さんは、剣を軽く肩に担ぐ。

 

「能力は使わねえ」

 

「お前らは、何を使ってもいい」

 

「まずは俺から――」

 

 烈が一歩前に出た瞬間。

 

「めんどくせえ」

 

 荒木さんが、手を上げる。

 

「まとめて来い」

 

 空気が、変わった。

 

 圧。

 

 ただ立っているだけなのに、

 それが黒等級だと分かる。

 

 俺たちは、束になって突っ込んだ。

 

 ――無理だった。

 

 烈が狼人間となって突撃する。

 

 止められる。

 

 吹き飛ばされる。

 

 翔と瑠偉が連携で攻める。

 

 一太刀で、崩される。

 

 俺たちも続く。

 

 だが。

 

 荒木さんの剣技の前では、

 誰一人、近づけない。

 

 初日は、

 何一つ成果がないまま終わった。

 

「いやあ」

 

 荒木さんは、心底楽しそうだった。

 

「いいサンドバッグが手に入ったぜ」

 

「明日も、よろしくな」

 

 その顔は――

 完全に、修行のことを忘れていそうだった。

 

 俺たちは、絶望した。

 

 だが。

 

 逃げ場は、もうなかった。

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