想想戦記―想いが力になる世界で、俺は戦う―   作:berunarudo

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第78話 手向ける「想い」

 衝撃が、ぶつかった。

 

 ――インパクト。

 ――ドライブシンバル。

 

 二つの想いが正面から激突し、

 空気が破裂する。

 

 互いに、吹き飛ばされた。

 

「……いてぇな」

 

 血を垂らしながら、

 クラッシュが立ち上がる。

 

「まったくだね」

 

 吉沢も、拳から血を落としながら起き上がった。

 

「君は、本当に強いようだ」

 

 その言葉に、クラッシュは笑う。

 

「お前こそだ」

 

「今までの中でも、ずば抜けてる」

 

「あの時、最後までやらなくて正解だった」

 

「今は――あの時より、確実に強え」

 

「それは、嬉しいね」

 

 吉沢は、距離を詰める。

 

 生半可な攻撃では、通らない。

 だが、クラッシュの攻撃は大振りだ。

 

 避けられる。

 

 だが――

 避けているだけでは、勝てない。

 

 跳ね返されれば、こちらが先に潰れる。

 

「なら、どうするか」

 

 吉沢は、迷わなかった。

 

 衝撃を纏わせた拳が、

 クラッシュの顔面に突き刺さる。

 

 同時に。

 

 クラッシュの拳も、

 吉沢の顔面を打ち抜く。

 

 再び、吹き飛ばされる二人。

 

「我慢比べか!」

 

 クラッシュが吠える。

 

「ずいぶん分の悪い勝負を選ぶじゃねえか!」

 

「残念だけど」

 

 吉沢は、血を吐きながら立つ。

 

「勝つには、それしかない」

 

 そこからは、殴り合いだった。

 

 一発。

 また一発。

 

 避けない。

 退かない。

 

 ダメージが、確実に蓄積していく。

 

 そして――

 クラッシュが、技を放とうとした。

 

 その瞬間。

 

 ほんの一瞬だけ、

 想力の流れが偏る。

 

 ――隙。

 

 吉沢は、すでに準備していた。

 

「今だ」

 

 崩壊衝撃《ディスト・インパクト》。

 

 顔面に、叩き込む。

 

「ぐぁっ……!」

 

 クラッシュの意識が、揺らぐ。

 

 だが。

 

 次の瞬間、

 クラッシュの視界に、壁に供えられた花が映った。

 

 ――命日。

 

「ぐ……あああああっ!!」

 

 クラッシュは、耐えた。

 

 そして、放つ。

 

「――ドライブミュート」

 

 この技は、二度咲く。

 

 一度目は、

 受けたダメージを相手へ移す。

 

 二度目は、

 その反動すら上乗せする。

 

 まともに喰らえば、死ぬ。

 

 吉沢は、理解した。

 

「……まずいな」

 

 死を、はっきりと感じる。

 

 だが。

 

 ここで、終われない。

 

 吉沢は、

 これまで鍛え上げてきた技術と感覚を総動員した。

 

 衝撃を、完全に受け流す。

 

 流し、溜め、

 拳に乗せる。

 

 ――だが。

 

 耐えきれなかった。

 

 拳が悲鳴を上げ、

 衝撃が、外へ発散する。

 

 ぱあん――。

 

 爆発的な衝撃。

 

 両者は、

 壁へと叩きつけられた。

 

「……がはっ」

 

「……ごほっ」

 

 血を吐き、

 それでも、二人は立ち上がる。

 

「やるじゃねえか……」

 

 クラッシュの声は、かすれていた。

 

「死ぬかと思ったぜ」

 

「奇遇だね」

 

 吉沢は、なぜか笑う。

 

「僕もだよ」

 

 最後の一撃を放とうとした、その時。

 

 クラッシュの視線が、

 再び、花に向いた。

 

 沈黙。

 

 そして――

 拳が、下ろされた。

 

「……やめだ」

 

「恩人の前で、命日を増やすのは縁起が悪い」

 

「それは、そうだね」

 

 吉沢も、拳を下げる。

 

「一つ、忠告だ」

 

 クラッシュが言う。

 

「裏切り者には、気をつけろ」

 

「……怜のことか?」

 

「さあな」

 

「だが、一人とは限らねえ」

 

「お前らは……腐ってやがる」

 

 闇が、広がる。

 

「じゃあな」

 

「生きてたら、また会おうぜ」

 

 クラッシュは、もう背を向けていた。

 その輪郭が、闇の中でゆっくりと溶けていく。

 

「……待て」

 

 自分でも、驚くほど低い声だった。

 

 クラッシュが、ほんの一瞬だけ足を止める。

 

「僕も、君に教えることがある」

 

「僕の名前は――」

 

 喉が、わずかに鳴った。

 今さら名乗る意味なんて、ないのかもしれない。

 それでも、言わずにはいられなかった。

 

「吉沢源《よしざわげん》だ」

 

 沈黙。

 

 闇の向こうで、気配だけがこちらを振り返る。

 

「……そうか」

 

 それだけ言って、クラッシュの存在は完全に消えた。

 音も、残響も、何も残さずに。

 

 吉沢は、壁にもたれかかった。

 

「……しんどいな」

 

 連合の病院へ向かうべきだと、

 頭では分かっていた。

 

 だが。

 

 この情報を、

 荒木に渡さずに死ぬわけにはいかない。

 

 意識が、揺れる。

 

 それでも、

 屋敷へと向かい――

 

 ドアに手をかけた瞬間。

 

 力が、抜けた。

 

 倒れる。

 

 ――もう、だめか。

 

 その時。

 

 ドアが、開いた。

 

「な、なにがあったんだ、吉沢さん!?」

 

 大地の声。

 

 その顔を見て、

 吉沢の胸に、わずかな申し訳なさが湧いた。

 

「……無茶しすぎました」

 

 それだけ言って。

 

 吉沢は、意識を失った。

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