想想戦記―想いが力になる世界で、俺は戦う― 作:berunarudo
血まみれの吉沢さんを、
俺たちは荒木さんと一緒に連合の病院へ運び込んだ。
正直――
そのまま目を覚まさないんじゃないかと思った。
だが、数日後。
病室で、
吉沢さんはゆっくりと目を開けた。
「……荒木さんは?」
その一言だった。
呼ばれて、
荒木さんが病室に入る。
しばらく、誰も喋らなかった。
最初に口を開いたのは、
吉沢さんだった。
「……調べていました」
「闘技場の件、鍵の件」
「そこから、夕陽町に行き着いた」
静かな声。
だが、内容は重い。
夕陽町。
クラッシュ。
ファズエットという組織。
秩序に殺された人間たち。
「……戦いました」
「相打ちでした」
「正直、死ぬと思いました」
荒木さんは、黙って聞いていた。
「それと……」
吉沢さんが、視線を落とす。
「裏切り者は、一人じゃない可能性があります」
その瞬間。
荒木さんの拳が、
壁を殴りつけた。
「……おい」
低い声。
「なんで、俺に言わなかった」
「それは……」
「言い訳すんな」
荒木さんは、振り返らなかった。
「俺がいれば」
「お前は、ここまでボロボロにならなかった」
「勝てたかもしれない」
声が、震えていた。
「お前は俺の相棒だろ」
荒木さんが、吉沢さんを見る。
「勝手に一人で背負うな」
「俺たちは、ずっと一緒にやってきた」
「死ぬなら、同じ時だと――俺は信じてた」
拳を握りしめる。
「だから」
「俺を信じろ、吉沢」
涙が、落ちた。
「お前がいないと、俺は何もできない」
「勝手に俺のために死のうとするな」
「……親友だろ」
病室に、嗚咽が落ちる。
「……ごめん」
吉沢さんも、涙を流していた。
「僕が……馬鹿だった」
「一人で動いた」
「……馬鹿野郎」
荒木さんは、ベッドに近づき、
そのまま吉沢さんを抱きしめた。
二人の男が、
声を殺して泣いていた。
そこには――
立場も、肩書もなかった。
それから、少しして。
荒木さんは、
吉沢さんが掴んだ情報を、皆に共有した。
――ただし。
裏切り者の存在については、
俺と号、吉沢さんだけが知っている。
あえて、伏せた。
炙り出すためだ。
調査は、一気に進んだ。
やがて、連合の人間が
想界師たちの前に立つ。
「ファズエット」
「十三名からなる組織です」
静かな声で、読み上げられていく。
――リーダー:ノイズ
――2nd:コード
鎖で想力を吸収する能力。
――3rd:スケール
能力不明。
――4th:チューナー
触れた相手の調子・機能を操作。
――5th:クラッシュ
ダメージ転移。
金等級・吉沢とほぼ互角。
――6th:ミュート
クラッシュの兄。
三本の線状なら自由転移。
――7th:リバーブ
元役者。
一度嵌まると抜け出せない能力。
――8th:ディレイ
――9th:テンポ
夫婦。元犯罪者。
ノイズにより脱獄。
――10th:ノクターン
富豪。詳細不明。
――11th:クレッシェ
子どもの姿。
通過した場所は災害レベル。
――12th:フォルテ
感情制御を破壊する存在。
――13th:カデン
情報なし。
「以上が、確認されているファズエットのメンバーです」
空気が、重く沈んだ。
だが。
荒木さんが、一歩前に出る。
「敵の情報は揃った」
「後は――守るだけだ」
拳を、掲げる。
「来たる」
「10月31日、」
「奴らに、目にモノ見せてやる」
「絶対に、守り切るぞ!」
その声に、
想界師たちが呼応する。
怒号のような、叫び。
戦いは――
もう、すぐそこまで来ていた。