想想戦記―想いが力になる世界で、俺は戦う―   作:berunarudo

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第80話 絡繰る「想い」

――円卓と、誓いの夜

 

 ――円卓を叩く、乾いた音。

 

「どういうつもりだ」

 

 低く、冷たい声。

 

「クラッシュ」

 

 名を呼ばれ、

 男は顔を上げた。

 

「敵の命も取れず」

「情報まで渡す」

 

「裏切る気か?」

 

 チューナーの視線が、突き刺さる。

 

「裏切るつもりはない」

 

 クラッシュは、即答した。

 

「ただ」

「こちらだけが全てを知っているのは、つまらない」

 

 静かな断言。

 

 チューナーは、眼を細める。

 

「貴様の矜持などどうでもいい」

「私は“忠誠”を見ている」

 

 真正面から、睨み合う。

 

 瞬き一つせず、

 クラッシュは目を逸らさない。

 

「……ちっ」

 

 舌打ち。

 

「忠誠はある、か」

 

 沈黙。

 

「困りましたね」

 

 コードが、口を開く。

 

「優位性が減りました」

「ノイズ様が悲しまれます」

 

「俺は好きだけどな」

 

 楽しそうに笑ったのは、リバーブだ。

 

「クラッシュの想い」

「そっちの方が、熱いドラマになる」

 

「おいおい」

 

 派手な服の男――ディレイが肩をすくめる。

 

「完璧な勝ちが一番だろ」

 

「そうよ」

 

 隣でテンポが頷く。

 

「素早く終わる方がいいわ」

 

「私は反対ね」

 

 フォルテの声は、冷静だった。

 

「情報は、命より重い」

「罰は必要よ」

 

 黒装束のノクターンは、無言で頷く。

 

「おもちゃがいっぱいなら、なんでもいい」

 

 クレッシェが、無邪気に笑う。

 

「……どう思う?」

 

 フォルテが、視線を向ける。

 

「カデン」

 

 愉快そうに、男は笑った。

 

「じゃあ」

「戯眼を取り上げればいいんじゃないかな」

 

「妥当ね」

 

 フォルテが即座に肯定する。

 

「別にいい」

 

 クラッシュは、淡々と机に置いた。

 

 ――禍々しい、眼球。

 

「もともと」

「使う気はなかった」

 

 その時。

 

 扉が、開いた。

 

「時は満ちた」

 

 空気が、変わる。

 

「これより我々は」

「腐った秩序を破壊する」

 

 全員が、跪いた。

 

「さあ」

 

「作ろうじゃないか」

 

「最高の世界を」

 

 ――同じ頃。

 

「……本当に戦うのか」

 

 俺が聞くと、

 吉沢さんは少し困った顔で笑った。

 

「約束してしまったからね」

 

「死ぬ時は、同じ時だって」

 

 冗談めかしているが、

 眼は真剣だった。

 

「だから」

「できるだけ、彼のそばで戦う」

 

 その顔は、

 どこか子供みたいだった。

 

「クラッシュって奴は」

「俺がぶっ倒す」

 

 拳を握り、

 もう一方の手で包む。

 

「それは嬉しいけど」

 

 吉沢さんが、肩をすくめる。

 

「荒木も狙うだろうから」

「早くしないと、取られるかもね」

 

「げぇ……」

 

 思わず声が漏れる。

 

「それはまずいな」

 

 吉沢さんが、笑った。

 

「君と出会えて」

「本当に良かったよ」

 

「俺もだ」

 

「吉沢さんと会えてよかった」

 

 少し、照れくさそうに視線を逸らす。

 

「号、大丈夫か」

 

 烈が聞く。

 

「ああ」

 

「身体は問題ない」

 

「ただ……少しな」

 

「そうか」

 

 烈は、肩を叩く。

 

「何かあったら」

「いつでも頼れ」

 

 号は、小さく笑った。

 

「変わったな、兄貴」

 

「もちろんだ」

 

「お嬢様」

「ついに近づいてきましたね」

 

 翔が、静かに言う。

 

「争いは、好きじゃありません」

 

 優華は、空を見た。

 

「でも」

「この日常を守るためなら」

 

「必死に、足掻きます」

 

「お供します」

 

 翔は、優しい目で微笑んだ。

 

「怖くないの?」

 

 花崎が聞く。

 

「怖いわよ」

 

 瑠偉は即答した。

 

「私より、何倍も強いんでしょ」

 

「なのに、なんで楽しそうなんだ?」

 

「言ったでしょ」

 

「格上とやれるなんて」

「滅多にない」

 

 花崎の頬を、引っ張る。

 

「いはへいよ……」

 

 瑠偉は笑う。

 

「あんたは、強い」

 

「最後に勝つ男だもの」

 

「それは、バディの私が一番知ってる」

 

「……ありがとう」

 

「まあね」

 

 少しだけ、顔を背けた。

 

 ――別の場所。

 

 ワインを傾ける影。

 

「芳醇だね」

 

 御生万の模型を、指でなぞる。

 

「最高の舞台だ」

 

「彼らは」

「どんな物語を見せてくれるのかな」

 

 くすりと、笑う。

 

「まあ」

「オチは決まっているけど」

 

「全部、私が取る」

 

 杯を掲げる。

 

「この物語の主人公は――」

 

「私だよ」

 

 静かな、確信。

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