想想戦記―想いが力になる世界で、俺は戦う―   作:berunarudo

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五章 御生万防衛作戦編
第81話 覚悟する「想い」


――御生万防衛作戦

 

 会議室の空気は、張りつめていた。

 

 誰もが、分かっている。

 これが最後の準備だということを。

 

「――作戦を説明する」

 

 楽座国重が、前に立つ。

 

「作戦名、御生万防衛作戦」

 

 淡々とした声。

 

「我々の目的は一つ」

 

「御生万に安置された、想界石の防衛だ」

 

 古代から存在する、世界の要。

 

「まず、城内の部屋を結界で隔離する」

 

「想界石へ通じる経路を絞り」

「裏からの侵入を防ぐ」

 

 戯眼の邪気を感知した瞬間、

 城全体に“出入り不可能”の結界を展開。

 

「戦闘は、三段階」

 

 指を立てる。

 

「第一段階」

「等級の低い想界師が迎撃し」

「敵の式想を引き出す」

 

「第二段階」

「赤等級から金等級で殲滅を狙う」

 

「それでも倒せない場合」

「もしくは戯眼の存在が確認された場合――」

 

 一拍。

 

「黒等級、三名が出る」

 

 移動は転移装置。

 

「ここまでで、質問は?」

 

 荒木が、手を挙げた。

 

「このままだとよ」

「想界師が使い捨てに見えるが?」

 

 国重は、すぐに答える。

 

「式想が不明な場合でも」

「死者が出る前に、撤退命令を出す」

 

「……だが」

 

「想力低下時に、強制転移できれば理想だ」

 

「やってみてくれ」

 

 荒木は、短く頷く。

 

「あいつらにも」

「帰りを待つやつらがいる」

 

 次に、鳴海勝吾が手を挙げた。

 

「黒等級三名」

「誰が、最後に残るんじゃ?」

 

 国重は、迷わなかった。

 

「私が」

「想界石の前に立つ」

 

「そうか」

 

 勝吾が、にやりと笑う。

 

「なら安心じゃ」

「一番、適任じゃな」

 

「他に質問がなければ」

「この作戦でいく」

 

 会議は、終わった。

 

「いよいよだな」

 

 号が、隣で呟く。

 

「吉沢の仇は」

「絶対、取ってやる」

 

「……僕、死んでないよ?」

 

 吉沢さんが、苦笑いする。

 

「城にも行くし」

 

「分かってるけどよ」

 

「俺からしたら仇だ」

 

「それは、ありがたいけどね」

 

 そこへ。

 

「仇は、俺が打つ」

 

 荒木さんが、背後から現れた。

 

「あんたは最後だろ」

 

「関係ねえ」

 

「クラッシュが来たら」

「俺がぶっ飛ばす」

 

「ダメでしょ……」

 

 号が、呆れた顔をする。

 

 それでも。

 

 この空気は、嫌いじゃなかった。

 

 ――守るものが、ここにある。

 

「残り三日は、どうするんだ?」

 

 号が聞く。

 

「会わせたい奴がいる」

 

 荒木さんは、そう言った。

 

 連れて行かれた先。

 

 そこにいたのは――

 

 どう見ても、ヤンキー。

 

 と、

 無口そうな男。

 

「よう」

「久しぶりだな」

 

 荒木さんが声をかける。

 

「ぁ、荒木さんじゃないすか!」

 

「うっす! お久しぶりです!」

 

 元気に返すヤンキー。

 

「どうも」

「お久しぶりです」

 

 無口な男は、深く頭を下げる。

 

「自己紹介しろ」

 

「俺の弟子たちだ」

 

「うっす!」

 

「俺は荒木さんの元弟子」

「つまり、兄弟子ってやつだ」

 

「よろしくな!」

 

 手を差し出される。

 

 何も考えず、取ろうとした。

 

 ――すり抜けた。

 

「……は?」

 

 見上げると。

 

「ぷはははは!」

 

 ヤンキーが大爆笑している。

 

「俺、人間じゃねえからな」

 

「……は?」

 

「俺はこいつの式神だ」

 

 無口な男を指す。

 

「自立型だけどな」

 

「自立型……?」

 

「意識持ってる式神だよ」

 

「普段は霊体」

「戦闘時は実体にもなれる」

 

 宙に浮かびながら、得意げに言う。

 

「じゃあ」

「そっちの名前は?」

 

 無口な男は、慌てて式神を見る。

 

「ちっ」

「それくらい喋れ」

 

「こいつは」

「安藤《あんどう》ジョン」

 

「ハーフだ」

 

 ジョンは、俯いたまま手を差し出す。

 

「……よろしくね」

 

 かろうじて聞こえる声。

 

「あ、よろしく」

 

 一瞬だけ、目が合う。

 

 すぐ、逸らされた。

 

「面白いだろ」

 

 荒木さんが笑う。

 

「でな」

「こいつが、お前らのリーダーだ」

 

「強さは、俺が保証する」

 

 ……正直。

 

 信じられなかった。

 

「まあ、そう思うよな」

 

「だから」

 

「模擬戦だ」

 

 道場へ向かう。

 

「安心しろ」

 

 式神が、ニヤリと笑う。

 

「二人で来い」

 

「相棒と一緒に」

「叩きのめしてやる」

 

 俺と号は、顔を見合わせた。

 

「……遠慮なく、行く」

 

 その瞬間。

 

 空気が、切り替わる。

 

 模擬戦が――

 始まった。

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