想想戦記―想いが力になる世界で、俺は戦う―   作:berunarudo

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第83話 嵐のような「想い」

ジョンと語り合った翌日。

 

屋敷に、見慣れない男が来ていた。

 

「荒木さん、お久しぶりですわ!」

 

やたら明るい声。

 

「元気してはったか? これ、お土産や。みんなで食べてな」

 

関西弁。

 

俺は廊下の陰から、そっと覗いた。

 

「誰や、覗いてる変態は」

 

目が合った。

 

「す、すいません!」

 

思わず姿勢を正す。

 

男は、俺をまじまじと見た。

 

「あああ! 君が噂の少年かいな!」

 

距離が近い。

 

「ようさん暴れたそうやないか。まさに荒木さんの弟子って感じやな」

 

テンポが速い。

 

「そうや、ワイの名前知らんやろ?」

 

胸を張る。

 

「盤条司っちゅうもんや。以後よろしゅう」

 

「あ、どうも……近藤大地です」

 

その喋り方。

 

一瞬だけ、荒邦の顔がよぎる。

 

無意識に眉が動いたらしい。

 

「なんやその嫌そうな顔」

 

司が顔を近づける。

 

「ワイ、もしかして臭い?」

 

「荒木さん、匂ってくれへん?」

 

「断る」

 

即答だった。

 

「違う違う。こいつ、荒邦とやりあったからだ」

 

荒木さんが説明する。

 

「ああー、なるほどな!」

 

安心した顔。

 

「よかったわー。この年で加齢臭とか嫌やで? まだワイ20代やし」

 

「……すまんな、あのけったいな男と同じ話し方で」

 

にやりと笑う。

 

「あいつとは違うで。ワイはええ男やからな」

 

誰も笑わない。

 

「おい、そこ笑わんかい!」

 

屋敷の空気が、少し緩む。

 

「まあええわ」

 

司は軽く手を振った。

 

「防衛戦では別チームやけど、なんかあったら頼ってくれ。大地くん」

 

「ほな、おいとまさせてもらいますわ」

 

本当に、嵐みたいに去っていった。

 

俺は、しばらく立ち尽くす。

 

「……インパクト強いですね」

 

「まあな」

 

荒木さんが苦笑する。

 

「少しだけ、鍛えたことがある」

 

「何度も断ったんだけどな。しつこくてな」

 

へえ、と頷く。

 

「防衛戦では別チームだ」

 

「あいつは楽座に取られた」

 

「号は鳴海家だしな」

 

嫌な予感がする。

 

「お前は」

 

一拍。

 

「ジョンとビリーと組め」

 

「……それ、実質二人じゃないですか?」

 

荒木さんは顔を逸らした。

 

「戦力的には変わらん」

 

「お前らを信用してる」

 

「こっち見て言え」

 

「ははは、じゃあ俺はこの辺で」

 

逃げた。

 

俺は深く息を吐く。

 

――はあ。

 

その夜。

 

どうにも、寝付けなかった。

 

廊下を歩いていると、声がした。

 

「君も寝れないようだね」

 

吉沢さん。

 

「なんか、目が冴えちゃって」

 

「僕もさ」

 

少し、視線を落とす。

 

「本来なら、僕も前線だったからね」

 

右腕を、軽く押さえる。

 

「腕がやられてしまって、前線は無理みたいだ」

 

胸の奥が、きゅっとなる。

 

「そんなことない」

 

自然に言葉が出た。

 

「吉沢さんに教えてもらったことがある限り」

 

「俺の中には、吉沢さんがいる」

 

一瞬、静かになる。

 

それから。

 

「……嬉しいこと言うね、君は」

 

小さく笑う。

 

「弱気になっちゃいけないな」

 

「最低限のアシストとして、城には待機してる」

 

「何かあれば、僕も戦うよ」

 

「落ち着きない人だ」

 

俺が笑うと。

 

「それが僕だからね」

 

吉沢さんも、笑った。

 

その笑顔を見て。

 

少しだけ、胸のざわつきが静まった。

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