想想戦記―想いが力になる世界で、俺は戦う―   作:berunarudo

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第87話 余裕の「想い」

烈の拳と、クラッシュの拳がぶつかる。

 

――ドカン。

 

空気が爆ぜる。

 

床が割れる。

 

「はははは!」

 

クラッシュが笑う。

 

「狼人間とやれるとはな!」

 

「俺の人生も、なかなか不思議なもんだ!」

 

烈の瞳が細くなる。

 

「光栄だ」

 

低い声。

 

「だが――その思い出は」

 

業火が、拳に灯る。

 

「貴様ごと、ここで焼き切る」

 

烈が跳ぶ。

 

天井近くまで。

 

空中で構え。

 

「業火百狼拳!」

 

拳が、降る。

 

一発。

 

二発。

 

三発。

 

炎が連なる。

 

地面が溶ける。

 

着地。

 

煙の中から。

 

焼け焦げながらも、歩いてくる影。

 

「……熱いじゃねえかよ」

 

クラッシュが笑う。

 

拳を振るう。

 

「ドライブ・シンバル!」

 

衝撃波。

 

烈が腕で受ける。

 

だが――

 

重い。

 

爆音と共に吹き飛ぶ。

 

壁に叩きつけられる。

 

(なるほど)

 

烈は息を吐く。

 

(吉沢がやられたのも、無理はない)

 

自分が与えたはずの熱。

 

その衝撃。

 

すべてが、こちらに返ってくる。

 

中途半端な攻撃では、

 

自分だけが焼ける。

 

クラッシュが笑う。

 

「なかなか痛いだろ?」

 

「自分の攻撃ってやつはよ」

 

一歩近づく。

 

「受けて初めて気づくもんだ」

 

「自分の行動ってのはな」

 

烈の目が、静かになる。

 

「……そうだな」

 

炎が、揺れる。

 

「俺も弟に教えられた」

 

「己の過ちをな」

 

拳を握る。

 

炎が、さらに深くなる。

 

「だからこそ」

 

「俺は、もう迷わん」

 

今度は――

 

焼き尽くす。

 

返されようと。

 

超えてみせる。

 

号 vs ミュート

 

空間に、三本の線。

 

揺らぐ。

 

消える。

 

次の瞬間。

 

号の背後に出現。

 

だが。

 

号は、転がる。

 

受け身。

 

転移の瞬間に身体を丸める。

 

ダメージを殺す。

 

「どうした?」

 

ミュートが笑う。

 

「俺に勝つんだろ?」

 

号は攻めない。

 

ひたすら、受ける。

 

斬られる。

 

飛ばされる。

 

それでも。

 

(感じろ)

 

線は切れない。

 

だが。

 

線にも想力は流れている。

 

三本。

 

流れの癖。

 

速度。

 

間。

 

慣れろ。

 

身体に覚えさせろ。

 

(ここだ!)

 

三本が重なる瞬間。

 

号が踏み込む。

 

「なに!?」

 

ミュートの目が開く。

 

線を避ける。

 

初めて。

 

真正面から近づく。

 

「紫電纏雷」

 

雷が刀に走る。

 

「抜刀――月輪!」

 

神速の居合。

 

だが。

 

ミュートは、自身の周囲に線を張る。

 

後ろへ転移。

 

「なんてね」

 

斬撃は、空を裂く。

 

くそ。

 

届いたはずだった。

 

ミュートが笑う。

 

「めんどくさいけど」

 

「そこまで成長したんだね」

 

一歩踏み出す。

 

「じゃあ」

 

「君の得意でやってあげる」

 

線が、密になる。

 

近距離。

 

転移を挟まない。

 

高速の打撃戦。

 

予測不能。

 

線が消え、現れ、殴る。

 

号は目を強化する。

 

視界を広げる。

 

かろうじて追いつく。

 

だが。

 

攻めきれない。

 

その瞬間。

 

ミュートが、にやりと笑う。

 

線に沿って。

 

ナイフが滑る。

 

転移。

 

刃が、号の腕に現れる。

 

回避不能。

 

ぐあああ!

 

血が飛ぶ。

 

刀を握り直す。

 

だが。

 

一瞬、意識が逸れる。

 

その隙。

 

線が繋がる。

 

連続転移。

 

速度が、跳ね上がる。

 

音が置き去りになる。

 

拳。

 

全速の一撃。

 

「ぐぁああああ!」

 

号が吹き飛ぶ。

 

床を転がる。

 

ミュートが、ゆっくり歩く。

 

「言ったろ」

 

「俺には勝てないって」

 

余裕の目。

 

号は、地面に伏したまま。

 

歯を食いしばる。

 

(まだだ)

 

終わらない。

 

終わらせない。

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