想想戦記―想いが力になる世界で、俺は戦う―   作:berunarudo

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第89話 痺れる「想い」

烈は、守っていた。

 

拳を受ける。

 

衝撃を殺す。

 

炎を抑える。

 

「どうした狼!」

 

クラッシュが笑う。

 

「守ってばっかとは牙が抜けすぎたんじゃあねえのか!」

 

烈は答えない。

 

ただ、守る。

 

隙を探すために。

 

だが。

 

クラッシュに隙はない。

 

「やはり、貴様は強い」

 

烈が低く言う。

 

「当然だ」

 

クラッシュが拳を構える。

 

「この力で、俺は伸し上がってきた」

 

「俺に隙なんてねえ」

 

烈が、静かにガードを解く。

 

空気が変わる。

 

「ようやくやる気か?」

 

クラッシュが嬉しそうに笑う。

 

「貴様には、これしかない」

 

烈が踏み込む。

 

拳。

 

クラッシュも応じる。

 

「やはり最後は殴り合いだよな!」

 

互いに、ガードしない。

 

ただ、殴る。

 

拳と拳。

 

血と炎。

 

クラッシュが想力を拳に込める。

 

その瞬間。

 

「業火拳舞」

 

烈の拳が、業火を纏う。

 

直撃。

 

「あいつほどじゃねえが効くぜ!」

 

クラッシュが笑う。

 

「ドライブ・ミュート!」

 

衝撃が、烈の体を貫く。

 

返された二重衝撃。

 

意識が飛びかける。

 

その刹那。

 

――号の姿。

 

弟の顔。

 

(見ていろ、号)

 

(兄貴は、まだ立つ)

 

烈の眼が、狼のそれになる。

 

次の瞬間。

 

技後のわずかな隙。

 

烈の爪が、クラッシュの腹に突き刺さる。

 

「悪いが」

 

低い声。

 

「俺の想いが勝つ」

 

「火爪彼岸《かそうひがん》――爆」

 

突き刺した爪から、業火が内部へ流れ込む。

 

内側から燃やす。

 

「ぐぁああああ!」

 

クラッシュが暴れる。

 

ドライブ・シンバルを何度も叩き込む。

 

だが。

 

烈は、離さない。

 

皮膚が裂ける。

 

骨が軋む。

 

それでも。

 

燃やし続ける。

 

烈は、目を逸らさない。

 

その瞬間。

 

空間に、線。

 

ミュート。

 

転移。

 

拳。

 

烈の体が吹き飛ぶ。

 

「ぐは……!」

 

「クラッシュ、大丈夫か!」

 

ミュートが駆け寄る。

 

クラッシュが、笑う。

 

「兄貴……すまねえ」

 

「負けたわ」

 

「いいんだ」

 

ミュートの声が震える。

 

「生きてさえいればいい」

 

「……兄貴」

 

クラッシュの瞼が重くなる。

 

「あー……静かに暮らしたかったな」

 

「だから目を覚ませ!」

 

「クラッシュ!」

 

だが。

 

その目は、閉じる。

 

沈黙。

 

次の瞬間。

 

ミュートの想力が、爆発する。

 

「よくも……」

 

空間が震える。

 

「よくも俺の弟を殺したなああああ!」

 

想力、全開放。

 

「俺たちはただ!」

 

「静かに暮らしたかっただけだ!」

 

線が、世界を走る。

 

「そんな小さな理想すら邪魔するのか!」

 

目が、裂ける。

 

「戯眼――」

 

空間が歪む。

 

「虚位崩天《むいほうてん》」

 

無数の光線が空間を裂く。

 

世界が、崩れかける。

 

烈が感じる。

 

(まずい……開眼)

 

だが。

 

遅い。

 

「まずは、お前からだ」

 

ミュートが転移。

 

拳が、烈の腹を貫く。

 

「ぐはっ……!」

 

血が溢れる。

 

号は、追いかけていた。

 

腕の傷を押さえながら。

 

辿り着いた時。

 

烈は、腹を貫かれていた。

 

「あ、兄貴ーーー!」

 

走る。

 

その瞬間。

 

「お前もだ」

 

拳。

 

号の体が吹き飛ぶ。

 

床に叩きつけられる。

 

ミュートが歩く。

 

号の頭を踏みつける。

 

「なあ」

 

冷たい声。

 

「今からお前の目の前で」

 

「お前の兄を、同じように殺してやる」

 

「何時間もかけてな」

 

「や、やめろ……!」

 

号が叫ぶ。

 

だが。

 

「やめるわけないだろ」

 

蹴り上げられる。

 

瀕死の烈へ、歩く。

 

「俺がクラッシュの恨みを晴らしてやる」

 

ナイフが転移。

 

烈の足に刺さる。

 

「ぐああああ!」

 

「安心しろ」

 

ミュートが笑う。

 

「何度でも痛めて、そして殺してやる」

 

号の視界が滲む。

 

(俺は……)

 

(自分の兄すら救えないのか)

 

せっかく戻った家族。

 

また、失うのか。

 

そんなのは。

 

嫌だ。

 

「俺は……」

 

血を吐きながら、立とうとする。

 

「俺は――鳴海だ」

 

その瞬間。

 

雷鳴。

 

空間が裂ける。

 

号の瞳が、紫に染まる。

 

「開眼」

 

紫電が天を裂く。

 

「紫電天裁《しでんてんさい》」

 

世界を雷雲が覆う。

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