想想戦記―想いが力になる世界で、俺は戦う―   作:berunarudo

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第91話 飛び出す「想い」

吉沢は、城の廊下を歩いていた。

 

彼の役目は――

医療室の警護と城の警備。

 

前線には出られない。

 

腕の負傷により、戦闘許可が下りていなかった。

 

だからこそ。

 

「……せめて、役目くらいは果たさないとね」

 

誰に言うでもなく呟く。

 

皆が戦っている。

 

そんな中、自分だけが後方にいる。

 

その事実が、少しだけ胸に刺さる。

 

だが。

 

今の自分にできることをするしかない。

 

そう考え、城の見回りを続けていた。

 

その時。

 

廊下の奥から、荷物を抱えた想界師が歩いてくる。

 

箱を運んでいる。

 

吉沢は立ち止まる。

 

(こんな状況で運搬?)

 

少し気になり、声をかけた。

 

「君、何を運んでいるの?」

 

男は振り向く。

 

「あー吉沢さん」

 

軽い口調で答える。

 

「医療品です。医療室に届けに行くところで」

 

「なるほど」

 

吉沢は頷く。

 

「それは助かるよ。負傷者が多いからね」

 

男は軽く会釈すると、歩き出そうとする。

 

その瞬間。

 

吉沢の拳が飛んだ。

 

男の顔面へ。

 

しかし――

 

男はそれを回避する。

 

「……いきなり何なんですか?」

 

少しだけ苛立った声。

 

「もしや敵の洗脳に――」

 

吉沢は左手の指を一本立てた。

 

「まず一つ」

 

淡々と説明する。

 

「僕ね、本来この屋敷にいない扱いなの」

 

「つまり」

 

「僕がここにいること自体、想界師なら疑問に思うはずだ」

 

もう一本指を立てる。

 

「二つ目」

 

「この城に、無傷の想界師はいない」

 

「全員前線に駆り出されてるからね」

 

ゆっくり拳を構える。

 

「以上の理由から」

 

「君をスパイとして殴らせてもらった」

 

「理解できたかな?」

 

男の口元が歪む。

 

「……ちっ」

 

そして。

 

「あーあ」

 

マスクを外す。

 

「ばれちゃったか」

 

その顔。

 

歪音十三奏――

 

リバーブ。

 

「俺の演技を見破るとはな」

 

吉沢は首をかしげる。

 

「演技?」

 

少し笑う。

 

「全然隠せてないよ」

 

「殺気がだだ漏れだ」

 

一歩近づく。

 

「だから君は」

 

「忘れ去られた役者なんじゃないの?」

 

空気が変わる。

 

リバーブの顔が歪む。

 

「……そうか」

 

「お前も俺を貶める人間か」

 

殺気が爆発する。

 

「なら殺してやるよ!」

 

拳が飛ぶ。

 

吉沢は回避。

 

回避。

 

回避。

 

(能力を探らないと――)

 

だが。

 

一瞬。

 

拳が頬を掠めた。

 

その瞬間。

 

世界が歪む。

 

「残響牢(リバーブ・プリズン)」

 

リバーブが笑う。

 

次の瞬間。

 

さっきの光景が再生される。

 

拳。

 

殴打。

 

吹き飛ぶ。

 

壁。

 

そして――

 

また拳。

 

ドゴッ!!

 

「ぐっ……!」

 

同じ行動。

 

同じ結果。

 

繰り返し。

 

何度も。

 

何度も。

 

何度も。

 

殴打される。

 

「ちょこまかとしやがって」

 

リバーブが笑う。

 

「一度でもハマれば終わりだ」

 

「同じ行動を永久に繰り返す」

 

「死ぬまでな」

 

拳。

 

拳。

 

拳。

 

血が飛ぶ。

 

「殴られ続けて死ね」

 

吉沢は歯を食いしばる。

 

(くそ……)

 

(まさか一回でもアウトとは)

 

(無法な能力だ)

 

だが。

 

思考を止めない。

 

(待て)

 

(さっき奴は言った)

 

"ループしているのは行動"

 

つまり。

 

ダメージは蓄積する。

 

体の内部は変化する。

 

そして――

 

(内部の想力なら練れる)

 

吉沢の目が光る。

 

(能力は発動できる)

 

(外じゃなく――)

 

(内側なら)

 

想力を練る。

 

殴られながら。

 

殴られながら。

 

殴られながら。

 

その頃。

 

リバーブは語っていた。

 

「お前には分からないだろうな」

 

拳を振るいながら。

 

「俺を持ち上げてたメディアは」

 

「旬が過ぎたら次に行く」

 

「ファンも同じだ」

 

「所詮は誰も俺を見てない」

 

拳。

 

「だが今は違う」

 

「この力があれば」

 

「誰も俺から逃げられない」

 

拳。

 

「俺だけを見させてやる」

 

息を荒げながら笑う。

 

「ははは……!」

 

「天下の金等級様でも」

 

「このループは抜けられない」

 

その瞬間。

 

カチ。

 

音が鳴る。

 

「……?」

 

リバーブが眉をひそめる。

 

次の瞬間。

 

吉沢の体内で練られた想力が――

 

衝撃波になる。

 

そして。

 

義手。

 

その腕が。

 

爆発した。

 

ボン!!

 

拳が飛ぶ。

 

まるで――

 

ロケットパンチ。

 

予想外すぎる攻撃。

 

リバーブの反応が遅れる。

 

拳が顔面に直撃する。

 

ドゴォ!!

 

「ぐぉおおお!!」

 

リバーブが吹き飛ぶ。

 

床を転がる。

 

吉沢は息を吐く。

 

「案外うまくいくもんだね」

 

軽く肩を回す。

 

「借りたよ大地」

 

笑う。

 

「これぞまさに」

 

「フィストインパクト」

 

リバーブが起き上がろうとする。

 

「ぐ……」

 

「やめろ……」

 

「悪かった……」

 

(なんてな)

 

(油断した瞬間殴る)

 

吉沢が近づく。

 

そして言う。

 

「一つ教えてあげる」

 

静かな声。

 

「君の人気がなくなった理由」

 

「社会のせいじゃない」

 

「君の実力不足だよ」

 

リバーブの顔が歪む。

 

「うるさい!!」

 

殴りかかる。

 

吉沢が笑う。

 

「それだよ」

 

回避。

 

「自分の感情も隠せない奴が」

 

拳を振るう。

 

「演技を語るな」

 

義手の拳。

 

鉄の塊。

 

リバーブの顔面に突き刺さる。

 

ドゴォ!!

 

「ぐべっ」

 

リバーブが倒れる。

 

沈黙。

 

吉沢は腕を見る。

 

「うーん」

 

軽く振る。

 

「義手って便利だね」

 

笑う。

 

「鉄の塊だから無茶できる」

 

そして空を見る。

 

「どうやら僕」

 

「まだまだ戦えるみたいだ」

 

だが。

 

すぐ真顔になる。

 

「……スパイがいるのは確かだ」

 

「これはまずいね」

 

リバーブを結界で拘束する。

 

「よし」

 

走り出す。

 

「みんな待ってろ」

 

「今行く!」

 

吉沢は医療室へ向かった。

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