想想戦記―想いが力になる世界で、俺は戦う―   作:berunarudo

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第92話 降り立つ「想い」

時間は、少し遡る。

 

花崎と瑠偉は――

フォルテと戦っていた。

 

フォルテの能力。

 

感情増幅。

 

相手の感情を膨れ上がらせ、暴走させる力。

 

その能力は、どこか怜に似ていた。

 

いや。

 

能力だけではない。

 

顔立ちすら似ている。

 

瑠偉は剣を構えながら言う。

 

「ねえ」

 

「あなた、私の友人に似てるのよ」

 

剣先を向ける。

 

「姿も、能力も」

 

「何か知らない?」

 

フォルテは微笑む。

 

「さあ?」

 

「私はファズエットのフォルテですよ」

 

とぼける。

 

瑠偉の目が細くなる。

 

「そう」

 

「なら――」

 

剣を振る。

 

「吐かせてやるわ」

 

振り返る。

 

「いくわよ花崎!」

 

「うん!」

 

花崎が叫ぶ。

 

「オーバーチャージ(ピンク)!」

 

花崎の能力。

 

味方の能力を強化する。

 

ピンクの想力が瑠偉を包む。

 

同時に。

 

瑠偉が舞う。

 

舞舞。

 

感情を乱す舞。

 

フォルテの能力を逆に撹乱する。

 

その隙。

 

瑠偉が踏み込む。

 

剣が閃く。

 

修行によって磨かれた剣術。

 

さらに花崎の強化。

 

今の瑠偉の実力は――

 

金等級に届く。

 

フォルテが笑う。

 

「ふふふ」

 

「面白いわ」

 

自分の感情を強制的に高める。

 

想力出力が跳ね上がる。

 

互角。

 

戦いが拮抗する。

 

その時。

 

花崎が考える。

 

(隙を作らないと)

 

だが。

 

浮かんだ案は。

 

最低だった。

 

(もし、この人が怜なら)

 

(一番効く言葉)

 

(でも言ったら……)

 

(あとで殺される)

 

花崎は覚悟を決めた。

 

「フォルテさん!」

 

叫ぶ。

 

「僕、あなたの秘密知ってるんですよ!」

 

フォルテが止まる。

 

「……なに?」

 

花崎が言う。

 

「あなた――」

 

深呼吸。

 

「パットをつけてる!」

 

沈黙。

 

この戦場で。

 

あまりにも場違いな発言。

 

フォルテが固まる。

 

「……は?」

 

その隙。

 

瑠偉も思考する。

 

(なんで花崎がそんなこと知ってるの)

 

一瞬。

 

(花崎と怜が一緒だったのは転神町だけ)

 

答えに辿り着く。

 

(こいつ……)

 

(怜の胸触った)

 

怒りが爆発する。

 

瑠偉の想力が膨れ上がる。

 

「花崎ぃぃぃぃ!!」

 

怒りの斬撃。

 

フォルテへ。

 

ドン!!

 

フォルテが吹き飛ぶ。

 

「きゃあ!」

 

花崎が喜ぶ。

 

「やったね瑠偉!」

 

振り向く。

 

瑠偉を見る。

 

そこにいたのは。

 

般若。

 

「ねえ花崎」

 

低い声。

 

「なんでそんなこと知ってるの?」

 

花崎が震える。

 

「私がお兄さんを救うために戦ってる間」

 

「怜と乳繰り合ってたわけ?」

 

花崎は死を悟る。

 

「違うよ!」

 

「助けられたときに思わず触ってしまって!」

 

「故意ではないから!」

 

瑠偉が言う。

 

「うるさい」

 

「殺す」

 

その後。

 

花崎はフォルテより傷を負った。

 

瑠偉は剣を向ける。

 

「さて」

 

「変態は後回し」

 

フォルテを見る。

 

「あなた」

 

「怜なんでしょ?」

 

フォルテは笑う。

 

「さあね」

 

「でも私は目的がある」

 

「そのためにここにいる」

 

瑠偉が踏み込もうとする。

 

その瞬間。

 

ゾワッ

 

恐ろしい気配。

 

体が震える。

 

「なに……この気配」

 

フォルテの顔が青ざめる。

 

「まずい」

 

「彼女が怒ってる」

 

瑠偉が聞く。

 

「誰?」

 

フォルテが叫ぶ。

 

「止めないと皆死ぬ!」

 

「なんであんなのを寄越すのよ!」

 

フォルテが吐き捨てる。

 

「ほんと」

 

「ろくでもない奴らばっか」

 

「行くわよ」

 

その瞬間。

 

部屋に――

 

慈愛が降り注いだ。

 

――――――――――――――――――

 

翔と優華は戦っていた。

 

相手は。

 

クレッシェ。

 

能力。

 

すべてを増幅する。

 

翔の出す音も強化されてしまう。

 

翔が叫ぶ。

 

「お嬢様!」

 

「こいつ強い!」

 

翔の音。

 

すべてが暴走する。

 

優華の影兵士も不安定。

 

クレッシェが笑う。

 

無邪気な子供。

 

だが。

 

その破壊力は凶悪。

 

「あはは!」

 

「もっと音楽聞かせてよ!」

 

翔が笑う。

 

「やんちゃなガキだな」

 

だが。

 

「俺の音を勝手にいじるのは」

 

拳を握る。

 

「無粋ってもんだぜ」

 

翔が言う。

 

「ガキんちょ」

 

「もっとすげえ音楽聞きたくないか?」

 

クレッシェが笑う。

 

「ききたい!」

 

「そして全部壊したい!」

 

翔が叫ぶ。

 

「なら聞け!」

 

「俺の声を!」

 

翔の能力。

 

想乗。

 

感情を音に乗せる。

 

ギターだけじゃない。

 

音すべて。

 

翔が叫ぶ。

 

「があああああ!!」

 

クレッシェの能力で。

 

音がさらに増幅される。

 

轟音。

 

クレッシェがびっくりする。

 

「きゃ!」

 

しりもちをつく。

 

翔が叫ぶ。

 

「今だ!」

 

優華が動く。

 

「結界!」

 

クレッシェを封じる。

 

翔が笑う。

 

「なんとか捕まえたな」

 

その瞬間。

 

パキ。

 

結界が割れる。

 

クレッシェの顔が歪む。

 

「……だましたの?」

 

「私をだましたの?」

 

空気が変わる。

 

悪魔のような気配。

 

翔が後ずさる。

 

「なんだ……こいつ本当に人間か」

 

クレッシェが泣く。

 

「ひどい、私はみんなと同じなのに」

 

「また一人にするの?」

 

「全部壊れちゃえ」

 

邪気が爆発する。

 

壁が削れる。

 

床が砕ける。

 

翔と優華を襲う。

 

「ぐぁあああ!」

 

二人は立っていられない。

 

クレッシェが笑う。

 

「あはは!」

 

「壊れちゃえ!」

 

その瞬間。

 

部屋全体に。

 

慈愛が降り注ぐ。

 

壊れた部屋が再生する。

 

邪気が消える。

 

翔と優華の傷も癒える。

 

声が響く。

 

「まったく」

 

「情けないわね」

 

「これくらい抑えてくれないと」

 

「黒等級にはなれないわよ」

 

そこに立っていた。

 

慈愛に満ちた女。

 

黒等級。

 

天舞愛華。

 

クレッシェが叫ぶ。

 

「なによおばさん!」

 

「邪魔しないで!」

 

一瞬。

 

愛華の慈愛が。

 

殺気に変わる。

 

すぐ戻る。

 

「お口の悪い子ね」

 

微笑む。

 

「機嫌が悪かったら」

 

「今頃死んでたわよ」

 

クレッシェが後ずさる。

 

愛華が微笑む。

 

「大丈夫」

 

「怖がらなくていい」

 

指を鳴らす。

 

「軽く」

 

「遊んであげるだけ」

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