想想戦記―想いが力になる世界で、俺は戦う―   作:berunarudo

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第95話 加速する「想い」

テンポは加速を続けていた。

 

その速度は、もはや視認不可能。

 

司は目を細める。

 

「……あかん」

 

「何も見えへん」

 

舌打ちする。

 

「えらい加速しとるでほんま」

 

廃課金で強化しているのに。

 

目が追いつかない。

 

「最高速度まで行ったら」

 

苦笑する。

 

「ワイ、消し炭やろうな」

 

肩をすくめる。

 

「まあ痛みないのはありがたいか」

 

少し間を置く。

 

「いや嬉しくないわ」

 

「死ぬのに」

 

ため息をつく。

 

「隻眼まで使っとるのに」

 

「生き残るビジョン湧かんな」

 

財布を取り出す。

 

「しゃあない」

 

「全財産いくか」

 

覚悟を決める。

 

「破産――」

 

能力を発動しようとした。

 

その瞬間。

 

世界に異物が入り込む。

 

「なんじゃ司」

 

低い声。

 

「負けそうなってるじゃねえか」

 

司が振り返る。

 

そこにいたのは。

 

鳴海勝吾。

 

「なんで爺さんがおんねん」

 

勝吾は酒を飲む。

 

「わしの息子たちが」

 

「獲物を取ってしまってな」

 

笑う。

 

「暇で暇で」

 

司を見る。

 

「だから死にそうなおぬしの獲物」

 

「もらおうと思ってのう」

 

司は即答する。

 

「助かるわ」

 

肩を回す。

 

「ワイのモットーは命大事にや」

 

「ほな頼むわ」

 

司は転移する。

 

勝吾がテンポを見る。

 

「すまんな嬢ちゃん」

 

酒を一口飲む。

 

「手加減はできん」

 

静かに言う。

 

「開眼」

 

世界が震える。

 

「暴鬼覇道《あばきはどう》」

 

年老いた体が膨れ上がる。

 

筋肉が肥大する。

 

骨が軋む。

 

頭から巨大な角。

 

その姿。

 

鬼。

 

勝吾が笑う。

 

「久しぶりに暴れられるわい」

 

巨大な金棒を構える。

 

バットのように肩に担ぐ。

 

「最高速度で来い」

 

「お嬢ちゃん」

 

テンポの速度が頂点に達する。

 

一直線。

 

勝吾へ突っ込む。

 

勝吾が振り抜く。

 

「羅刹轟砕《らせつごうさい》」

 

巨大な金棒が――

 

テンポを捉える。

 

衝突。

 

衝撃。

 

世界が割れる。

 

バキン。

 

煙が消える。

 

そこに立っていたのは。

 

鬼。

 

勝吾。

 

腕が震えている。

 

「ぐぁ……」

 

笑う。

 

「手がジーンとくるわい」

 

「こりゃ折れたな」

 

がははと笑う。

 

腰のひょうたんを開ける。

 

酒を飲む。

 

「ぷはぁ」

 

その瞬間。

 

ヒビだらけだった骨が。

 

再生する。

 

勝吾が笑う。

 

「酒は最高じゃ」

 

金棒を担ぐ。

 

「さて」

 

「終わったかの」

 

鬼化を解こうとする。

 

転移しようとした。

 

その瞬間。

 

結界。

 

バン!!

 

勝吾を囲む。

 

「なんじゃこれは」

 

拍手が響く。

 

「ようやく使ってくれたようだね」

 

男が現れる。

 

「鳴海のじいさん」

 

勝吾が睨む。

 

「なんのマネじゃ」

 

男が言う。

 

「簡単さ」

 

笑う。

 

「あんたら黒等級は面倒なんだ」

 

「だから」

 

「開眼したあと」

 

「封じる」

 

勝吾が拳を握る。

 

「こんな結界」

 

「鬼にならずとも壊せるわ!」

 

全力で殴る。

 

ドン!!

 

しかし。

 

傷一つない。

 

勝吾が驚く。

 

「なんて硬さじゃ」

 

「わしの全力でも無傷?」

 

睨む。

 

「そんな奴がファズエットにおったとは」

 

男が笑う。

 

「ファズエット?」

 

首を振る。

 

「違うよ」

 

暗闇から出てくる。

 

「私は」

 

「楽座落葉松《らくざからまつ》だ」

 

勝吾が目を見開く。

 

「なんじゃと」

 

「なぜおぬしが」

 

落葉松が答える。

 

「さっき言っただろ」

 

「全員相手は面倒」

 

肩をすくめる。

 

「だから」

 

「ファズエットを使った」

 

「理想をちらつかせれば簡単だったよ」

 

勝吾が怒鳴る。

 

「貴様!」

 

落葉松が続ける。

 

「安心してくれ」

 

「殺しはしない」

 

微笑む。

 

「目が覚めた時」

 

「世界が変わってるだけさ」

 

勝吾が怒る。

 

「ふざけるな!」

 

結界を殴る。

 

「貴様を殴り飛ばす!」

 

落葉松が笑う。

 

「怖い爺さんだ」

 

指を鳴らす。

 

「じゃあ」

 

「お休み」

 

勝吾の意識が落ちる。

 

体が崩れる。

 

落葉松が歩き出す。

 

向かう先。

 

想界石。

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