想想戦記―想いが力になる世界で、俺は戦う―   作:berunarudo

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第98話 這い出る「想い」

 城の奥。

 

 重い扉の先。

 

 そこには――

 

 倒れた男がいた。

 

 広い石の間。

 静まり返った空気の中で、その身体だけが不自然に横たわっている。

 

 胸に、刀。

 

 深々と突き刺さった刃。

 

 血が、床に広がっていた。

 

 赤黒い液体が、ゆっくりと石の床を染めていく。

 

「……国重さん」

 

 喉が震えた。

 

 俺は駆け寄る。

 

 膝をつく。

 

 だが。

 

 その奥に立つ男を見て。

 

 足が止まる。

 

 落葉松《からまつ》。

 

 静かに立っている。

 

 そして。

 

 その隣。

 

 ノイズ。

 

 闇のような気配をまといながら、無言でこちらを見ていた。

 

 落葉松が、ゆっくり笑う。

 

「もう来たのかい」

 

 静かに言う。

 

「大地」

 

 その声は、いつもの穏やかなものだった。

 

 だが。

 

 足元には、父の血が広がっている。

 

 俺は叫ぶ。

 

「誰が国重さんをやった!」

 

 声が、城の広間に響く。

 

 落葉松が答える。

 

「私だよ」

 

 あまりにもあっさりと。

 

 まるで、今日の天気でも話すかのように。

 

 笑顔。

 

「冗談だよな……?」

 

 喉が乾く。

 

 心臓が、嫌な音を立てる。

 

 その瞬間。

 

 ノイズが前に出た。

 

 ゆっくりと。

 

 しかし確実に、俺の視界を塞ぐ位置へ。

 

 俺は理解した。

 

 冗談じゃない。

 

 本当だ。

 

 胸が震える。

 

「なんでだよ!」

 

 叫ぶ。

 

 声が震える。

 

「なんで殺した!」

 

「自分の父親を!!」

 

 落葉松が目を閉じる。

 

「私も悲しいさ」

 

 静かな声。

 

「実の父親だからね」

 

 だが。

 

 その顔には、涙はない。

 

「でも」

 

 目を開く。

 

 瞳が、冷たい。

 

「計画のためだ」

 

「計画だと?」

 

 俺の声が、低くなる。

 

 落葉松が言う。

 

「言っただろ」

 

「私の理想」

 

 微笑む。

 

 狂気のように。

 

「最高に面白い世界」

 

 俺が怒鳴る。

 

「それと何の関係がある!」

 

 落葉松が想界石を見る。

 

 広間の中央。

 

 巨大な石。

 

 淡い光を放つそれを、愛おしそうに見つめる。

 

「これだよ」

 

 手を伸ばす。

 

「想界石」

 

 囁く。

 

「これを使えば」

 

 ゆっくり振り返る。

 

「全人類を想界師にできる」

 

 俺の目が見開く。

 

「……は?」

 

 落葉松が続ける。

 

「つまり」

 

「全員進化する」

 

 笑う。

 

「私たちの力は可能性の塊だ」

 

 手を広げる。

 

 世界を抱くように。

 

「もし全員がこの力を使えたら」

 

 目を輝かせる。

 

「最高にワクワクすると思わないか?」

 

「大地」

 

 俺は叫ぶ。

 

「思うわけねぇ!」

 

 拳を握る。

 

 怒りで手が震える。

 

「そんなことしたら!」

 

「悪人も善人も関係なく!」

 

「いきなり強大な力を持つことになる!」

 

 息が荒い。

 

「何も知らない人間が」

 

「使いこなせるわけがない!」

 

「大勢が死ぬ!」

 

 落葉松は静かに言う。

 

「仕方ない」

 

 冷たい声。

 

「大いなる可能性のための尊き犠牲だ」

 

 その言葉で。

 

 俺は決めた。

 

 拳を握る。

 

「……そうか」

 

 睨む。

 

「なら」

 

 叫ぶ。

 

「友として!」

 

「お前を止める!!」

 

 落葉松が少し笑う。

 

「残念だ」

 

 刀を抜く。

 

 鋼が鳴る。

 

「君なら」

 

「私と歩めると思ったのだけど」

 

 構える。

 

「少し眠ってもらうよ」

 

 俺は踏み込む。

 

 床を蹴る。

 

「フィスト――」

 

 想力を集める。

 

 拳に白い光が集まる。

 

「ブラスト!!」

 

 衝撃が走る。

 

 空気が歪む。

 

 だが。

 

 落葉松が刀を振るう。

 

 斬撃。

 

 鋭い線が空間を裂く。

 

 その瞬間。

 

 攻撃が消える。

 

 まるで、存在ごと切り裂かれたように。

 

 俺の体が吹き飛ぶ。

 

「ぐぁああ!」

 

 床を転がる。

 

 石が背中を打つ。

 

 口の中に、鉄の味。

 

 血の味。

 

 それでも。

 

 立つ。

 

 足が震える。

 

 それでも、立つ。

 

「まだ来るのか」

 

 落葉松が呆れる。

 

「諦めの悪い男だよ」

 

 俺は歯を食いしばる。

 

 踏み込む。

 

 拳に想力。

 

 白いオーラが生まれる。

 

 空気が震える。

 

 落葉松が目を見開く。

 

「……!」

 

 斬撃。

 

 だが。

 

 俺の拳が弾く。

 

「な……!」

 

 俺は叫ぶ。

 

「フィスト――」

 

 拳を叩き込む。

 

「バースト!!」

 

 衝撃。

 

 爆発のような力が弾ける。

 

 落葉松が後退する。

 

 床を滑る。

 

「……驚いた」

 

 血を拭う。

 

「この状態の私に」

 

「ダメージを与えるとは」

 

 俺は拳を構える。

 

 呼吸が荒い。

 

「俺なら止められる!」

 

 踏み込む。

 

 その瞬間。

 

 刀が走る。

 

 閃光。

 

 ドス。

 

 腹に突き刺さる。

 

「……がは」

 

 血を吐く。

 

 膝が崩れる。

 

 視界が揺れる。

 

 落葉松が言う。

 

「悪いけど」

 

 刀を抜く。

 

「君に構っている時間はない」

 

 背を向ける。

 

「そこで野垂れ死ぬといい」

 

 その瞬間。

 

 地面が割れる。

 

 石の床が砕ける。

 

 黒い闇。

 

 深淵。

 

 落葉松が振り返る。

 

「……この気配は」

 

 闇が広がる。

 

 空間が歪む。

 

 そこから。

 

 女が現れる。

 

 長い髪が揺れる。

 

 闇の中から、ゆっくり歩み出る。

 

「私のかわいい子たちを」

 

 ゆっくり言う。

 

「いじめて」

 

 微笑む。

 

「さらに」

 

 瞳が光る。

 

「私の計画まで邪魔するなら」

 

 声が冷える。

 

「殺すわよ」

 

 現れたのは。

 

 天舞愛華《てんまいあいか》。

 

 落葉松が呟く。

 

「やはり」

 

「あなたは封じきれませんか」

 

 愛華が笑う。

 

「当然でしょ」

 

 腕を組む。

 

「私が」

 

「あんなお粗末な結界で」

 

「眠るわけないでしょ」

 

 落葉松がため息をつく。

 

「やはり」

 

「あなたが一番厄介だ」

 

 愛華が眉を上げる。

 

「あら」

 

 微笑む。

 

「レディに向ける顔じゃないわね」

 

 闇が動く。

 

 深淵が湧き上がる。

 

 城の床が軋む。

 

「教育してあげるわ」

 

 愛華が笑う。

 

 城が震える。

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