男女比3:1でも貞操逆転世界なのに「もう少し大きくなったら結婚しよう」でとうとう引き返せなくなった奴 作:陽波ゆうい
学園入学前日。
まだ朝靄が残る早朝であるが、俺はすでに支度を終えていた。
入学式は明日であるが、王都までは馬車で丸1日掛かるとあり……。
今日、村を出発するのだから。
入学試験の時と同じように、近所のおっちゃんが馬車で送ってくれることになっていた。
待ち合わせの時間まではあと30分ほどある。
親父と少しでも話しておこうかと思ってたが……。
「……」
その親父はというと、難しい顔で腕を組んで黙ったままであった。
けれど、俺のことは気になるのか、こちらをじっと見てきている。
不機嫌ってわけじゃなさそうけど……今はとても、会話を弾ませようっていう空気ではない。
数分前までは、俺の制服姿の写真をめちゃくちゃ撮っていたけどなぁ。急に、どうしたんだろ?
思い返せば、公爵位であるフィリスト家の関係者たちが領地訪問に来た後ぐらいから、親父の様子がなんだか変になった気もしたけれど……。
でもまあ、それが理由じゃなさそうだな。
何より、親父はちゃんと領主としての務めを果たしているのだから大丈夫だ。
きっと、俺がこの村から離れる。
親父の元から離れる日が刻々と近づいてきていたからだよな。
親父は、俺のことが心配で仕方ないんだろう。
入学試験のために3日間だけ村を離れるってなった時でさえ、あんなに落ち着きがなかったからな。
親父は過保護気味だからなー。
けど今回は……もっと長い。
そして、王立学園に通う以上、寮暮らしになるのは避けられない。
すでに申請も済ませてある。
村を出たら、次に帰ってくるのはいつになるか分からない。
そう思うと……俺も寂しくなるなぁ。
お互いに無言が続いていたが、やっぱり親父とはたくさん話しておきたい。
「なあ、親父。いつもみたいに、元気が出る言葉を掛けてよ。俺、王立学園でも頑張っていきたいからさ」
俺がそう言えば、親父の表情が明るくなって……。
「そ、そうか! お前がそう言うなら、親父として言葉を掛けてやらないとなっ。まず、お前のいいところを言ってやるな!」
「それは俺が恥ずかしくなるやつだから、やめてくれっ。他ので頼む」
それからは会話が弾み、近所のおっちゃんに呼ばれてから急いで荷物を持って降りたのだった。
「じゃあ行ってきますー!」
俺は清々しい気持ちで村を出発した。
「王立学園カルリーネ……どんな学園生活になるなぁ。まあ、いくら名門校であるといえど、男女比3:1の世界である故に、女の子の取り合いは常にありそうだし、寝取りもありそうだし……。いやいや、俺にはもう関係ないことだよなっ。俺は俺で楽しい学園生活送るぞー!」
◆◆
フェイが村を出発した後のこと。
リビングがどこか広く感じる寂しさを覚えながらも……。
フェイの父親は、とあるものをぼんやりと眺めていた。
それは、入学試験が終わってから大事に飾っている王立学園カルリーネからの推薦状である。
内容は、息子であるフェイに対して、王立学園カルリーネへの入学を薦める推薦状が3つほどきている。
だから、うちの学園に来いというもの。
王立学園カルリーネの正式な印章もあり、事実確認もしている紛れもない本当の推薦状だ。
自慢の息子に推薦状が来ていて、父親としても誇らしいものでもあるが……。
今の父親の眉間には、シワが寄っていた。
『はい。お嬢様こそが王立学園カルリーネへの推薦状を出した人物なのですから』
フィリスト家の関係者から告げられた
「ネリネご令嬢が推薦状を出した3人の中の1人……。だが、あと2人もいる。一体、誰なんだ……? フェイは自慢の息子であるが、田舎暮らしで表立って目立った功績は残していない。それなのに、推薦状となると……フェイに対して相当の恩がなければ出さないもので……」
父親の様子が変であったのは、その件を考えていたからである。
『全ては、彼と会うため。再び、彼の傍にいるため。お嬢様は昔、彼に助けられた過去があります。そんな彼とお嬢様の関係は、幼馴染と呼ぶには過ごした時間は短すぎて、恋人と呼ぶには身分違い。それでも、お嬢様はずっと……』
『つまり、本題は何かというと……ネリネお嬢様は近い将来、彼を夫として迎えるおつもりです。このことは、彼本人には知らせておりませんし、知らせる必要もないとのこと。しかしながら、親である貴方にだけは、あらかじめお伝えしておく必要があると……お嬢様から頼まれましてね』
そして……あの言葉も思い出す。
「フェイを王立学園カルリーネへ入学させたいという、個人的な事情の推薦状を名門である王立学園側に通せるのは……立場が上である人間。ネリネご令嬢のこともあって……残りの2人も女性の可能性が高い。そして、わざわざ学園を指定してきたことから、推薦状を出した全員が同じ学園に通っている可能性もあると……」
ふと、頭に浮かぶのはフェイと交わした何気ないはずの……あの会話だった。
『そういや、フェイお前……昔、女の子と遊んでいたことあったよなぁ。あの子たちとはその後、何もないのかよー」』
『ないよ。つーか、俺みたいな平凡なやつには、女の子たちは興味すら湧かないって』
もし、幼い頃は出来なかったその後のことが学園で始まるとしたら……。
「いかんいかん! 俺が考え込んでどうするっ。最終的にどうするかは、フェイ自身が決めること……。俺はフェイが困った時に頼れる親父でいないとなっ。とりあえず、フェイが健康で五体満足、学園
◇簡単な人物紹介◇
フェイ・オルクス
黒髪黒目の容姿であり、田舎領主の1人息子。
男の数の方が多い貞操逆転世界に転生したことで、女の子にモテることを諦めた。
神様から貰ったチートスキルは、【無限魔力】
3人の女の子を助けた過去アリ。
結婚の約束みたいな言葉を残したこともアリ。
そして、まんまと彼女たちが所属する王立学園に誘い込まれて逃げ場はナシ。