男女比3:1でも貞操逆転世界なのに「もう少し大きくなったら結婚しよう」でとうとう引き返せなくなった奴   作:陽波ゆうい

13 / 23
第13話 先輩後輩未満、恋人まだ、子供は3人以上

「さあ、入った入った〜!」

「え、えっと……お邪魔します。いや、失礼します……!」

 

 一応、挨拶してから入室する。

 

 あれから彼女に連れてこられたのは、『生徒会長室』と書かれた扉の部屋であった。

 

 中はというと……前世の学校でイメージするような、机や椅を並べただけの簡素なものではなく……。

 

 異世界の学園だからか、王都内にある故なのか、室内はやけに豪華だ。

 レッドカーペットが敷かれており、重厚感漂うオシャレな家具たちが置かれている。

 

 しかしながら、作業スペース。書斎のようなものはこの広い部屋に1つしかなくて……。

 

 それに、この部屋のプレートは『生徒会長室』だった。

 生徒会室とは、また違ったのだ。

 

 もしかして……。

 

「ここ……生徒会長だけの専用部屋なんですか?」

「そうだよ〜。ここは、生徒会長であるアタシだけが使えるお部屋っ。生徒会室はちゃんと別にあるからね〜」

 

 俺がそう聞けば、彼女はドヤ顔で胸を張ってみせた。

 ぷるん、と胸が揺れているのも見れた。

 

 す、凄い……! って、今はこの部屋に集中すべきだな!

 

 学園で1人だけ専用の個室持ちか。

 

 この王立学園カルリーネで生徒会長がどれほど特別な存在なのか……少し理解した気がした。

 

 それに、彼女が希少な女性側であることも関係しているのだろう。

 これだけ丁寧で豪華な扱いを受けているのだからな。

 

「じゃあ時間も限られてるし、お話しよっか。そこのソファに座っていいよー」

「は、はい……!」

 

 おっと……早速、本題に入るつもりらしい。

 

 わざわざ人気のない場所に移動……しかも、生徒会長専用の部屋に。

 

 これは、ただの偶然や気まぐれではない。

 

 さっき生徒会長の彼女とぶつかったことで、完全に目をつけられたなぁ……悪い意味で。

 

 そんな不安が頭をよぎる。

 

 とはいえ、ここまで来たら逃げれないし、話を聞かないとな。

 

「どうしたの? 座らないの?」

「あ、いえっ。座ります座りますっ」

 

 促されるままに、ふかふかのソファに腰を下ろした。

 

「じゃあアタシはここっ。よいしょ!」

 

 そんな声を漏らしながら……生徒会長は、俺の隣に座った。

 

「ん?」

 

 って……なんでわざわざ隣に座った?

 

 向かい側にも同じようなソファがあるのに。

 

 しかし、ここで「生徒会長はあっちに行ってください」などと、無礼な態度を取れば……こちらが訴えられる可能性だってある。

 

 女性側というより、周りの男たちが過保護なんだよなぁ。

 

 男女比3:1の世界で、変わったことも当然ある。順応しないとなー。

 

 と……そんなことを考えるのもほどほどに。

 

「向かい側も空いてますよ? 広いですよ?」

「でも、君の隣も空いているよね? それにアタシ、今は狭いところの方がいいからさ〜」

 

 向かい側の席に座ってほしいと遠回しに言ったつもりだったが、ダメであった。

 

 生徒会長は、断固として俺の隣を動かないつもりだ。

 

 俺の顔を間近で見て、ちゃんと話をしたいってことだろう。

 

 俺、そんなに目をつけられているの……?

 

「やっと、2人っきりになれて嬉しいな〜」

 

 う、嬉しい!? 嬉しいって何っ。

 

「あっ、そうだ! 君は学園ではアタシのことをなんて呼ぶつもり〜?」

「……え?」

 

 急にそんなことを聞かれて戸惑ってしまうが……聞かれたからには、ちゃんと答えないといけないよな。

 

「えーと、生徒会長とか……先輩って呼びますかね? 周りもそうだと思いますし」

「だよねぇー。周りに合わせないと、めんどくさいからねぇ〜」

 

 そこで言葉が切れた思えば、生徒会長はこちらに身体を寄せてきて……。

 

「でも、君だけは……呼び捨てでもあだ名でも、好きにアタシのことを呼んでいいからね♪」

「っ!」

 

 甘い声で囁かれて、ドキッと心拍数が跳ね上がる。

 

 生徒会長の顔を見れば……うっすらと開いた瞳に、頬は少し赤く染まっていた。

 

 これ、あれだよ……。

 オタクにも優しいギャル系の人だ。

 

 この男女比3:1の世界風に言うのであれば、数が多い男にも優しい女の子。

 

 まさしく、希少すぎるやつだ!

 こんなの、支持率が高いに決まっている。

 

 つまりは、生徒会長は俺だけに優しいのではなく、みんなに優しいのだ。

 だから勘違いなどしていない。

 

 変なことを考える前に、俺から話題を振っておこう。

 

「あの……俺がここに連れてこられたのは、お説教のためではないのですか?」

「お説教……?」

「ええ……。てっきり、さっきぶつかったから怒られるものかと……」

 

 怒る様子がないので、ますます気になっていた。

 

 普段、素振りや筋トレとかをしているおかげもあり、反射的に倒れないように対処できたけど……。

 

 女の子相手に怪我をさせていたら、彼女も周りの男たちもどういう風になるのか……考えるだけでも恐ろしいな。

 

「いやいやっ。お説教なんてあるわけないよっ。それにあれは、アタシがつい油断してからねぇ〜」

 

 気にしていないとばかりに、ひらひらと手を振って笑う生徒会長。

 

 お説教じゃなくて、ひとまずホッとした。

 それと同時に、やはり男にも優しい女の子なのだと確信した。

 

「君には色々と聞きたいんだけど……でも今日は、あんまり時間がないんだよねぇー」

「……は、はぁ?」

 

 じゃあなんでわざわざ俺に構ったのだろうか、という疑問も出てくるが、生徒会長は何やら続きがありそうに口を開いた。

 

「だから、もう1つだけにする。アタシから伝えておきたいことがあるんだ」

「伝えておきたいと……?」

 

 な、なんだろう?

 俺と生徒会長の接点なんて、今さっきぶつかった以外にないというのに……。

 

「アタシは、君へ推薦状を出しているからね。この学園に絶対に来てもらえるように……ね」

「えっ……生徒会長が!?」

 

 思わぬ言葉に驚くしかない。

 

 いや、でもなんで……?

 

「じゃあ、今日のところはおしまいっ。君も色々と気になるだろうし……またここへ、遊びに来てもらうからね♪」

 

 そうして俺は、生徒会長室から出されたのだった。

 

◆◆

 

 フェイと入れ替わるようにして、生徒会長室の扉がノックもなく開けられた。

 

 姿を現したのは、この学園を総括する学園長であり、彼女の母親であった。

 

 そんな彼女は、どこか不機嫌気味であり……。

 

「ちょっとアザレア! 貴方、忘れ物を取りに帰るだけって言っていたじゃないっ。遅いわよ! 何かあったのかと心配になるじゃないっ」

「ごめんごめん、ママ〜。でも、怒りながらも心配してくれるところが好き〜」

「貴方という子は、全く……。それで、忘れ物は見つかったの?」

「うん、見つけたし、ついでにちょっとした仕事も済ませられたよー」

「そう。なら良いわ。さあ、帰りましょう」

 

 母親がくるりと背を向けて、足を進めようとした時。

 

「ところで、ママさ〜」

「ん?」

「アタシが結婚するとして、子供は何人くらい欲しい?」

 

 唐突すぎる質問に、母親は少し言葉に詰まる。

 

 だが、こういうのには慣れっこらしく母親は淡々と返した。

 

「世の中は男女比3:1になってしまっているし、子供は……最低でも3人以上は欲しいところじゃないかしら?」

「そうだよねぇ〜。アタシも3人以上は欲しいなと思っていたんだよ〜。じゃあ、これから頑張ってもらわないとだ。アタシのたった1人の旦那様には♪」

 

 アザレアは上機嫌気味に、母親の隣へ歩み寄る。

 

 そんな様子を見ていた母親は深いため息を吐いた。

 

 まるで、何かを……。

 その旦那様が誰かを、察したように。

 

「貴方ねぇ……成人は迎えて結婚できるとはいえ、まだ学生の身よ? それも、由緒正しきこの王立学園の生徒会長なのだから、相応しい振る舞いをしなさいよ」

「はいは〜い。みんなの前ではちゃんとしてるよ〜」

「全く……。とにかく、今日はもう帰るわよ。私も貴方もここに残っていたら、すぐに男が迫ってくるんだから」

「はいは〜い♪」

 

 




【余談】
アザレア。
花言葉:「節制」「恋の喜び」「充足」
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。