男女比3:1でも貞操逆転世界なのに「もう少し大きくなったら結婚しよう」でとうとう引き返せなくなった奴 作:陽波ゆうい
「それにしても、遅すぎでは……? 俺の部屋は一体、どこになるんだ?」
再び、礼拝堂の中に戻っていた。
長椅子に腰かけて、1人で待っているところなんだが……。
しかしながら、誰も来る気配がない。
……ないぞ?
もしや、「テッテレ〜! 内装工事で部屋が用意できていないのは、ドッキリでしたっ」とかある?
それともただ単に、寮父さんのお昼休憩待ち?
なら、俺もお昼休憩……は、いらないなぁ。
めちゃくちゃ美味いサンドイッチを食べたことで腹は膨れているし、気分も満たされている。
そうなれば、自然と……。
「眠くなるよなぁ。ふわぁ……眠ぅ……」
貞操逆転世界に来ても、腹がいっぱいになったら、眠くなるのは変わらない。
それに、ガラス張りの窓から差し込む日差しがちょうどいい温かさで……ウトウトと、瞼が重くなっていく。
「ちょっとくらい寝てもいいよなぁ、授業とかじゃないし。寝ていたとしても、起こしてくれるだろう……」
腕組みして、長椅子の背もたれに寄りかかる。
そうすれば、いい感じに身体が固定できて……急激に眠気が襲ってきた。
「おやすみなさい……すやぁ……」
俺は、その眠気に抗うことなく……そのまま意識を手放していった。
◆◆
「んん……。んんっ?」
どれぐらい寝ていたのだろうか?
ゆっくりと目を開ければ、見覚えのある天井……のはずが。
視界の端には、布らしきものが揺れた気がした。
しかも、膨らみがあるような。
あと、座って寝ていたはずなのに……身体は横になっているし、頭に当たるものは柔らかくて……。
「あっ、起きられましたか?」
「っ!?」
耳にスッと入るのは綺麗な女性の声。
でも、この礼拝堂には俺1人だったはず。
しかし、その声は近くで……それどころか、真上からしたような?
視線をゆっくりと動かせば、穏やかな表情でこちらを見下ろしている銀髪の女の子――ネリネ様と目が合った。
「って、えっ、あっ、ネリネ様!? どわっ!?」
あまりの衝撃から、俺は1人床に転げ落ちた。
いてて、びっくりしたぁ……。
いや、びっくりなんだよ!
「だ、大丈夫ですか、フェイ様? 身体とかどこも異常はないですか?」
「あ、はい。なんともないです……」
そう返せば、彼女は安心したような柔らかい笑みを浮かべていた。
いや、俺のことなんてどうでもいいんだよ。
ネリネ様が何故かここにいるし、何故か膝枕されていた気がするのだが。
えっ、なんで!? なんで!?
混乱しながらも……なんとか気持ちを落ち着かせ、問いかけてみる。
「ど、どうしてネリネ様がここに……? あっ、礼拝堂でこれから何かするんですか?」
「いえ、何もしませんよ? まあ、していたことといえば、フェイ様に膝枕をしていましたね」
そんなことをサラッと告げるネリネ様。
膝枕をしていたのは、本当だったのである。
なんで俺なんかに膝枕をしようという発想になったのだろうか?
しかしながら、今度はネリネ様が先に口を開いた。
「私の膝枕をもう少し堪能してくれても良かったのですが……寝るのでしたら自分のお部屋の方が良いですよ? フェイ様に風邪を引かれては困りますし」
「そ、それはそうですね……」
俺という、どこにでもいる数の多い男の風邪を心配してくれるなんて優しい人だな。
ネリネ様もやはり、数の多い男に優しいタイプだ。
「って……そうだ! 俺、自分の部屋が、住むところがどうなるか分からないから、待ってたんですよ!」
慌てて辺りを見回すも……俺とネリネ様以外には、寮父さんも他の人も姿は見当たらない。
ネリネ様と2人っきりなだけである。
じゃあ、俺はまだここで待つことになりそうで……。
「それもそうですね。お待たせいたしました、フェイ様。では、行きましょうか」
「え……?」
待ちに待ったフレーズが聞こえて、声のする方へ向くも……そこにいるのは相変わらず、ネリネ様だけだ。
でも、ネリネ様は立ち上がり、俺を連れて移動しようという雰囲気である。
「あ、あの……? 男子寮に住む予定なんですけど、俺だけ部屋が用意できていないって言われて……。だから、代わりの部屋があるか、何か住むところがあるかどうか待っているところで……」
念の為に、ぽつぽつと現状を説明してみるが……ネリネ様は特に驚く様子もなく、首を傾げることもなく。
むしろ……優しく微笑んでいて。
「フェイ様のお部屋は、私が用意しておりますので。さあ、行きましょう」
「ふぇ……?」
言われていることは分かるはずなのに、俺の口からは情けない声が漏れた。
部屋を用意って……一体、どこに?
てか、なんでネリネ様が??
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