男女比3:1でも貞操逆転世界なのに「もう少し大きくなったら結婚しよう」でとうとう引き返せなくなった奴 作:陽波ゆうい
「……」
俺は黙ってぱちくりと瞬きをする。
言葉は出なかった。
「あれ? 聞こえませんでしたか? ではもう1度……こほんっ。あの女は、誰ですか?」
2度目。
今度は、目のハイライトが消えている気がするユーリ様であった。
あの女って……どの女のこと!?
といっても、人数は絞られている。
この世界は男女比3:1っていうのもだし……。
直近で接した女子となれば、2人に絞られる。
『さて、フェイ様。この部屋で暮らすとはいえ、ちゃんと過ごしやすいか確認しないと心配ですよね? まずは、ベッドに寝転がってみてはいかがでしょうか?』
男子禁制の場の女子寮に俺を招いただけではなく、自室の一室を使わせてくれている公爵令嬢のネリネ様か。
『アタシのこと……覚えていてくれたのっ!』
明るく優しく、距離感が妙に近いギャル系でこの王立学園の生徒会長であるアザレア様か。
『何故なら、フェイ様を王立学園カルリーネへの入学を薦める推薦状を出したのは、私なのですから』
『アタシは、君へ推薦状を出しているからね。この学園に絶対に来てもらえるように……ね』
そして、2人とも……俺へ推薦状を出した人物でもある。
目の前のユーリ様も合わせて、全員が揃っていた。
と……まあ、推薦状の件は一旦、置いといて。
ユーリ様の言うあの女……。
しかも雰囲気からして少し怒っているような?
女の子が怒るってなれば……。
『じゃあ、話すぞ。昼休み時間中は、学食を利用してもいいし、時間内に戻れるのであれば、寮や自宅に1度帰ることも許可する。ただし……男子側は、女子校舎および女子寮への立ち入りは禁止とする』
担任教師の言っていたことも思い出す。
もしや……ネリネ様が住む女子寮に俺がいるところを見られたとか!?
俺、早速大ピンチじゃね!?
「……フェイ君? 言いにくいことなんですか?」
「い、いやぁ、それは……」
それはもう、言いにくいことだ。
女子寮は男子禁制の場だし、相手が公爵令嬢のネリネ様となれば、大問題になるだろう。
側から見たり聞いたりしたら、俺がネリネ様の住む女子寮に無理矢理押し入ったともとれて……。
ユーリ様も女性側として、警戒や嫌悪感を抱くのも無理はない。
だからこそ……言いにくいのだ。
「でも私は気になりますので、今度は具体的に言いますね?」
「えっ」
ちょっと待っ――
「昨日のクラスでのホームルーム後……生徒会長であるアザレア・ベリトロア様に腕を引かれてどこかに連れて行かれていましたよね?」
「ああ、そっちね。良かったぁ」
「……そっち?」
「あっ……いや、なんでもないよ! あはははっ」
うっかりそんなことを口走ってしまった。
だって、女子寮の方じゃなくてホッとしてしまったもん。
慌てて誤魔化したが、すでに手遅れなようで……。
「……。なるほど」
ユーリ様にはバッチリ聞かれていた眉を顰めて何やら呟く。
しかし、次の瞬間にはニコリと微笑んだ。
「では、あの日生徒会長と出来事を聞かせてください。生徒会長と一体、何をしていたんですか?」
「何を……? 生徒会長とは、廊下を歩いている時にぶつかってしまってな。それから生徒会長室に連れられて、少し話をして……解散したさ。特に何もなかったよ」
なんか問い詰められるような雰囲気で、つい早口気味になってしまうが嘘は言っていない。
まあその時に、アザレア様も推薦状を出していることを教えてくれたし、妙に距離が近かった気もしたが……それ以外に特別なことはなかった。
「……そうですか。ふーん」
ユーリ様は俯き気味に、何やら考える間を取ったと思えば。
「分かりました。教えていただきありがとうございます」
「あ、はい……」
微笑みを浮かべたのだった。
「急にすいません。楽しい昼食が台無しなるところでしたね」
「い、いや……大丈夫だよ」
雰囲気が少し変わった気がして、びっくりしたけど。
「……あれ? フェイ君? よく見たら、左眉のところに傷がありますね?」
「うん?」
ユーリ様がじっと俺の顔を見つめる。
「髪の毛に掛かっていて見えにくいですが……こうして間近で見たら左眉に1つ古傷がありますよ」
「おお、マジか」
髪はともかく、自分の顔はまじまじと見ないから気付かなかった。
へぇ、左眉に傷が……。
きっと昔、人助けとかしている中で付いたやつなんだろうな。
「わたしの治癒魔法なら古傷も綺麗に綺麗に消すことも可能です。その傷、治しましょうか? わたしが治します。今度はわたしが……」
「ユーリさん……」
ユーリ様がやけに食い気味に言ってくれるけど……。
「いやいや、良いよっ。この傷なんか男の勲章って感じでカッコいいしっ」
イケメン顔ならまだしも俺はフツメンだ。
よく見なければ分からない傷なのだから、放っておいてもいいよな!
「そうですか。フェイ君がそう言うのであれば……」
「気遣ってくれてありがとうね、ユーリさん」
その後は、他愛もないもない会話をして昼休み時間を過ごしたのだった。
◆◆
フェイと別れて、クラスに戻っているユーリ。
その様子は上機嫌というより……何かに勘づいて険しい顔になっていた。
「……なるほど。フェイ君のことを狙っている女が