男女比3:1でも貞操逆転世界なのに「もう少し大きくなったら結婚しよう」でとうとう引き返せなくなった奴 作:陽波ゆうい
午後の授業も終わり、帰りのホームルームとなった。
先生の話は昨日と同じように女子寮に行くなとか、ありきたりな連絡事項で終わると思っていたが……。
「それじゃあ、最後に大事な連絡だ。選択授業について説明する」
先生が何やら真剣な面持ちに切り替わったから、どんなことを言われると思ったが……。
選択授業のことか。
まあ、学園生活あるあるだよな。
ただ、前世とは違い……ここは剣と魔法の異世界で、男女比3:1
そりゃもう、特殊そうだ。
「お前ら、1年の時の選択授業が大したことないと思っていたら大間違いだぞ? この選択授業で授業態度が悪かったり、赤点なんて取れば退学に繋がってくるからなぁ」
そう言えば、クラスが引き締まった空気になった。
「選択授業の内容は何かというと……剣術学、アイテム学、経営学……そして、
そうして、手に渡った紙に目を通す。
基礎科目とは別枠で設けられた授業。
内容はどれも専門的で……将来を見据えた選択を求められている感じもする。
剣術もアイテムも経営も、それぞれ面白そうだ。
だが……俺には、強みがある。
【無限魔力】というチート能力があることだ。
それを活かすとなれば……。
「ああ、そうだ」
先生のそんな声がして、思考を止めて顔を上げる。
「いずれ分かることだから先に言っておくぞ。この選択授業のみ……
先生がそう言えば、教室が一気にざわめいた。
普段、男子と女子は校舎も寮も完全に分けられている。
登下校以外の接点の機会は、ほとんど存在しない。
だからこそ、一緒に授業を受けるというのは男女比3:1の世界だからこそより、男子たちにとってはテンションが上がるものであり……。
「マジかよ……!」
「やべぇじゃん、それっ」
「上手くいけば、女子とお近づきになれるかもっ」
「あの有名な公爵令嬢や聖女様候補様との接点も……」
あちこちで浮ついた声が上がる。
こりゃ、目的が授業じゃなくて女子の鑑賞になりそうだなー。
「お前ら、少し静かにしろ! 全く……。配った紙の1番下には、名前と希望授業を記入する欄がある。3日後に回収するからちゃんと考えとけよ。以上!」
そうして先生が教室を出れば、男子たちの盛り上がりは加速していった。
「やっぱり、女子がいるとなったら魔法学だよなぁ」
「女子は魔力量多いし、俺たちも魔法一択だろ、こんなの!」
「女子と一緒に授業なんて受けられるなんて幸せだっ」
どうやら魔法学が1番人気だ。
理由は……言うまでもないな。
男子たちは浮かれ気分だが、俺は1人冷静になっていた。
あの3人が推薦状を俺に出してくれたのは謎だが……俺はこの王立学園でちゃんと学びにきたのだ。
俺が貰ったチート能力である【無限魔力】を活かすためにも。
将来、親父に楽させるためにも。
この世界の魔法を極めたい。
俺だって、選択授業は魔法学を選ぶんだ!
それから男たちは盛り上がるのを止めて、女子を拝みに行こうと慌てて教室を出ていった。
……騒がしいやつらだな。まあ、俺としては馴染みある光景だからいいけど。
「さて、俺は真っ直ぐ帰るかぁ……。あっ」
荷物を纏めて席を立ったものの……固まる。
俺が今、帰る家といったら……女子寮のネリネ様の部屋の一室になる。
いや……まずいよなぁ。
この時間帯に女子寮に行けば、間違いなく目立つし、怪しまれてバレるし。
朝だって、誰にも会わないようにするために窓から飛び降りて、物陰に隠れながらと……苦労して登校してきたし。
昔、ヒーロー活動に憧れて、颯爽と去る練習などもしていた。
それがまさか、こんな形で役に立つとはな。
「とりあえず、適当に時間を潰すか。何しようかなぁ。街をぶらぶらするのもありかなー。いや、校内探索っていうのも……」
「あのっ」
「うん?」
不意に声を掛けられて、振り返る。
そこにいたのは……茶色がかった髪に丸メガネの冴えない雰囲気の男子生徒。
「君、今1人だよね?」
「お、おう。そうだが……」
「なら、良かった。ボク、ちょっと先生に頼まれ事をされたんだけど……。ボク、1人だと無理そうだから一緒に手伝ってもらえないかな?」
「い、いいけど……」
俺は、こくりと頷く。
突然の頼みではあったが、断る理由もない。
むしろ、時間潰しになるから好都合だ。
でも……こんな男、うちのクラスにいたか?
まだ学園2日目でクラスのメンツの顔はハッキリとは覚えていないけどさ。
そんな疑問が頭をよぎったが、深く考えるのは止めた。
「それで、手に何も持っていないってことは場所は移動するんだろう?」
「うん、こっちだよ。ついてきて」
「お、おう」
俺はその男子の後ろを歩く。
廊下を抜けて階段を上がり、さらに奥へと進む。
……思ったより遠いな。
しかも、このルートは……昨日、通った。というか、連れられたんだよな。
そんなことを考えているうちに、男はある部屋の前で足を止めたので俺も止まる。
扉の前のプレートを見て……思わず、声が漏れた。
「せ、生徒会長室……? 本当に、先生の頼まれ事の場所ってここなのかよ」
「うん、間違いないよ。さあ、早く入って入って」
「うおっ」
腕をぐっと掴まれ、そのまま強引に部屋の中に引き込まれる。
「お、おいっ! ノックも無しに生徒会長室に入るのはマズイだろっ!」
ここは、生徒会長室。
つまり、生徒会長が……アザレア様がいるかもしれないのだ。
なのに、無断で入ってきたらびっくりするだろ。
幸い、中には誰にもいなかった。
って……手伝いの場所が生徒会長室なら、先生からの頼み事っていうより、アザレア様からの頼み事じゃね?
いや、でも……女性と容易に関わらせないようにするために先生を伝言役とした可能性も?
いずれにしろ……この男子、怪しいな。
可能性として頭を過ぎるのは、さっきクラスの男子たちが盛り上がっていた女子たちと接点を持てるなどということ。
まさか、数少ない女性であるアザレア様とお近づきになりたいから、強引に生徒会長室に入ったのか?
じゃあ、俺は巻き添い食らっているのか?
嫌な予感が一気に膨れ上がるがひとまずは……。
「おい、今すぐここから出るぞっ。アザレア様にも迷惑掛かるし。そんで、お前の目的を話してもらおうか」
俺は男子の腕を掴み……視線を合わせてそう声を張り上げる。
けど彼は……ニコッと、笑みを浮かべたのだ。
「ごめんごめんっ。このままだとさすがに分かんないよねぇ〜」
「……え?」
軽やかな声になったと思えば、次は丸メガネを外した。
さらに、髪に手をかけて……するりと外れた。
カツラだったようだ。
そうして目の前に現れたのは、さっきまでの地味な男子とは別人の姿。
でも……よく知っている姿だ。
サラサラの金髪に、吊り気味の大きな瞳。
いたずらっぽい笑みを浮かべていた。
俺は、目を見開いて彼女の名前を呼ぶ。
「アザレア様……!?」
「にひひっ。実は、生徒会長本人でした〜♪」
「アザレア様がだったんですか……。って、すいませんっ。腕、強く掴んじゃって……!」
アザレア様の腕を慌ててパッと離す。
「こっちこそ、驚かせてごめんねー。男子校舎に女子が行くのはやっぱり、目立つからさ〜。今回は変装して来ちゃった」
「な、なるほど……?」
生徒会長という目立ちまくりの存在だからより、変装しないとだよな。
いや、でもわざわざ変装して……俺に会いに来たってことなのか?
「でも、この部屋に入れば2人っきり。今日はアタシ、時間に追われていないし、君も時間に追われていないみたいだから〜」
そこでアザレア様は言葉を区切って。
にひっ、と口角を上げた。
「アタシとたくさんお話し……しようねっ♪」