男女比3:1でも貞操逆転世界なのに「もう少し大きくなったら結婚しよう」でとうとう引き返せなくなった奴 作:陽波ゆうい
「とはいえ、お菓子でも食べてリラックスしてからだねぇ〜」
アザレア様は人懐っこい笑みを浮かべたまま、ティーポットとティーカップ、お菓子まで素早くテーブルに置き始める。
「手伝いましょうか?」と、声を掛ける間もなく……。
「さあさあ、ここに座って〜」
アフタヌーンティーみたいなお洒落な空間が出来上がっていた。
「ね? 早く座ろう?」
「え、あ……はい。じゃあ……失礼します」
そこまでされたら、断ることなどできず……。
そもそも、この世界だと数少ない女性の誘いを断るのは無礼だとされているしな。
俺は軽くお辞儀をしてから、ふかふかのソファに座る。
昨日も座ったけど、座り心地いいんだよなぁー。
「紅茶やお菓子は遠慮なくねっ。アタシは着替えてくる〜。やっぱり、いつもの制服の方が落ち着くし〜」
「あ、はい。俺のことはお構いなく……」
変装のためのカツラと丸メガネは外したものの、アザレア様が着ているのは男子用の制服だからだよな。
にしても、変装してまで俺をここに呼び出してアザレア様は何が目的で……。
「うん?」
「……」
と……アザレア様が俺を見つめていることに気づく。
「お構いなくかぁ。なら、目の前で着替えてもいいってことかなぁ?」
「えっ?」
次にアザレア様はしゅるり、と制服のネクタイを外した。
「いやいやいや! 俺の見えない個室で着替えてくださいっ!」
「そんなに恥ずかしがらなくていいのに〜。アタシと君の仲なんだから〜」
アザレア様と俺の仲って……昨日、会ったばかりなんだが!?
「まあ、今日のところはそれがメインじゃないからね。ちゃちゃーと着替えてくるね〜」
「は、はぁ……」
アザレア様はパチン、とウィンクをしてから部屋の奥へと消えていった。
「ほっ……」
戸惑いっぱなしだっため、大きく息を吐く。
アザレア様は……やっぱり、揶揄うのが好きなんだろうか? ギャルっぽいよなぁー。
部屋に1人になって、やることがなくなる。
とまあ、アザレア様のお言葉に甘えてお菓子や紅茶に手をつけよう。
目に付いたクッキーをパクッと1口食べる。
「ん! うまいっ」
ほろほろで、口の中ですぐに溶けていった。
前世のスナック菓子とは違い、高価で丁寧に作られたお菓子って感じがするなぁ。
続けて、紅茶を飲む。
「ほぉ……うまい……」
丁度いい熱さながらも香りも良くて美味しい。
そして、お菓子と抜群に合う。
前世のスナック菓子と炭酸の相性も良かったが……うん、こっちもいいな。
じっくりと味わいながらも……お菓子は5種類全部1つずつ食べた。
カップに入った紅茶も飲み干し、一息つく。
「ふぅ……どれも美味しかったけど……」
「1番美味しかったのは〜?」
「やっぱり、このクッキーが……って」
「そっか。じゃあアタシも食べるっ」
「え?」
自然と手に取ったクッキーを……横からパクッと。アザレア様が食べたのだった。
「んー、美味しい〜。アタシもね、このクッキー1番好きなんだよねぇ〜」
「そ、そうなんですね」
「うんっ♪」
笑顔が眩しい。
それにしても、また距離が近い……。
「あ、アザレア様……距離近くないですか?」
「そう? アタシと君の仲なんだからこのぐらい普通だけどなぁ〜」
ニコニコ、とアザレア様は笑う。
「普通なんですかね?」
「そう、普通普通ー。アタシたちの仲だもん〜」
なるほど。アザレア様は誰に対しても距離が近いってことだよな!
「……それなのに、アタシたちの仲に割って入ってこようとする
目のハイライトが消えたと同時に、アザレア様は小声で何かを言ったような気した。
「ア、アザレア様……?」
「ううん。なんでもない。とまあ……そろそろ本題に入ろうかな」
アザレア様が俺の隣に座る。
って、またわざわざ俺の隣に……。
「君に推薦状を出した他の2人って……誰?」
「っ……」
距離の近さとはまた別の理由で……心臓がどくん、と跳ねた。