男女比3:1でも貞操逆転世界なのに「もう少し大きくなったら結婚しよう」でとうとう引き返せなくなった奴   作:陽波ゆうい

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第23話 生徒会長は誘き出す

 静かになった部屋の中でアザレア様に見つめられること、数秒後。

 

 俺は、どうにか平常を繕って答えることにした。

 

「あはは……そう言われても、内緒としか今は言えないですね」

 

 誰かは、もう知っているけどな。

 

 公爵令嬢のネリネ様。

 聖女様候補のユーリ様。

 そして、生徒会長のアザレア様。

 

 むしろ、知らないほうがおかしいくらいに有名な人たちだ。

 

 この3人から推薦状を貰ったということは、一生の自慢話になるだろう。

 

 もちろん、感謝はしている。

  

 彼女たちからの推薦状がなかったら、田舎出身の俺なんか名門の王立学園側が取ってはくれないだろうしな。

 

 だけど、推薦状を誰から貰ったのかを俺が自慢げに語るのは……違う気がした。

 

 本人たちだってそんなことは望んでいないはず。

 

 だからこそ直接、俺だけに伝えてくれたわけだし。

 

 それにもし、周りの男たちにバレでもしたら……嫉妬の嵐どころか、俺は攻撃対象だよなぁ。

 考えるだけでも恐ろしい。

 

 と……膝に柔らかな感触が落ちてきた。

 

「って……ア、アザレア様!?」

 

 気づいた時には、アザレア様が座っている俺の膝の上へ腰を下ろしていた。

 

 しかも、そのままぐっと距離を詰めてくる。

 

 いや……もう、ほとんど距離なんてない。

 

 身体が触れ合っている。

 

 普通なら鼓動が早くなり、赤面してしまう場面だろうが……。

 

 今は、そういう場合じゃない。

 

 身体も、視線も、アザレア様からも逃れられないということなのだから。

 

 部屋の空気も一層、重くなったような……?

 

「アタシに……隠し事するの?」

「か、隠し事というわけでは……っ」

「でも、言えないんだよね?」

「それは……そうですね」

「言うなって……口止めされているの?」

「そういうわけではなくて……」

「じゃあ、どういうことなの?」

「それは……」

「……」

「……」

 

 マズイな……っ。慎重に言葉を選ぶほど、逆に歯切れが悪くなる。

 そしてその分だけ、アザレア様の機嫌が悪くなっていく……。

 

 いや……ここは正直に告げるべきか。

 

「あのっ、アザレア様」

 

 俺は決意を固めて、アザレア様の目を真っ直ぐに見つめて告げことにする。

 

「アザレア様から推薦状をいただけたこと、本当に嬉しかったですし、感謝もしています。そして、アザレア様以外にも推薦状を貰ったことも……事実です。でも……誰から推薦状を貰ったかは、軽々しく言うべきことじゃないと思っています」

「……」

「俺にとっても、相手にとっても特別なことだと思うので」

「ふぅーん……」

 

 何から含みのあるアザレアの声……妙に圧を感じるな。

 

 それでも俺は、言葉を重ねた。

 

「アザレア様から推薦状を貰ったことは、誰にも言ってません。ちゃんと、2人だけの秘密です……!」

「っ……!」

 

 一瞬、アザレア様の表情が変わった気がした。

 

 いや、よく考えたら完全に2人だけの秘密ではないな……?

 学園長や学校側の人間なら、推薦状を誰が出したか知っているわけだし。

 

 これは、別の言い訳を考えないと終わらない———

 

「……2人だけの秘密。2人だけ……アタシとフーくんだけの……」

 

 アザレア様は何やらぼそり、と呟き。

 そして……ふっ、と笑いを溢した。

 

「ア、アザレア様……?」

「じゃあ、今回はそういうことにしてあげるよ〜」

「えっ……?」

 

 思わぬ反応に一瞬だけきょとんとした反応になってしまう。

 しかも、なんか嬉しそう……?

 

「それに、アタシからの推薦状は感謝しているって聞けたしね。でも、感謝しているなら〜、推薦状のお礼に今後はアタシのお手伝いをしてもらおっかな〜?」

「も、もちろんです!」

 

 俺は、即答する。

 アザレア様のおかげでこうして王立学園に入れたわけだしな。

 

 それに、この学園のトップである生徒会長のアザレア様の仕事ぶりを間近で見れるのであれば、学べることも多いだろうし!

 

「お手伝いがない時でも、こうしてアタシの話し相手になってねっ。てか、放課後はこの生徒会長室に来ること。良いよね? じゃあ、お菓子あーん♪」

「え、あ……あーんっ」

 

 俺は頷きつつ、差し出されたお菓子を食べる。

 

 アザレアの機嫌は、戻っていた。

 

 その後は、楽しいお茶会の雰囲気だった。

 

 でも……今日は特に、距離が近かった気がした。

 

「さて……そろそろ、部屋に帰ってもいいよなぁ」

 

◆◆

 

 フェイが去った後。 

 

 アザレアは……ソファに。

 フェイが座っていた場所に深く腰を掛けていた。

 

「それにしても、フーくんは相変わらず謙虚で……すぐ逃げようとするなぁ」

 

 アザレアは天井に視線を向けながら。

 過去を振り返りながら、ぽつりぽつりと呟く。

 

「子供の頃……アタシのことを()()()()から助けてくれたあの日もそうだった。アタシを救ってくれたあの姿がカッコ良くって、気遣ってくれたあの姿に絆されて、結婚の約束だってしてくれて……。なのに、アタシからすぐに離れていった」

  

 アザレアは吐息の後、続ける。

 

「それで、それで……やっと見つけた。だからこそ、もう離さないために……逃がさないために……うちの学園に来てもらったのに。他の女に取られないように、先に見せつけるつもりだったのに……。まさか、その前に動いてる女が……2人もいたなんてねぇ」

 

 アザレアの瞳から光が失われていく。

 

「フーくん、浮気はよくないなぁ。他の女からも推薦状貰っているなんて……。でも、アタシはフーくんに甘々だから今回は良いよ。けれど、フーくんが教えてくれないのなら……誘き出すしかないよねぇ。アタシの()()()()()……彼への想いがその程度じゃなければ、すぐに反応してくれるはずだよねぇ。ねぇ……?」

 

 アザレアは……くす、と笑った。

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