男女比3:1でも貞操逆転世界なのに「もう少し大きくなったら結婚しよう」でとうとう引き返せなくなった奴   作:陽波ゆうい

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第3話 男女比おかしい世界のもう1つの特徴

 入学試験まであと3日になった。

 

 朝の素振りから始まり、親父お手製の美味い朝ごはんを平らげて……。

 

 ただいつもと違うのは、出掛ける支度を進めていたこと。

 もちろん、入学試験のためだ。

 

 ここから馬車で丸1日かかる王都。

 そこにある名門の王立学園こそが、俺の受験先である。

 

 そのため、今日の午前中には出発しといて余裕を持って現地に着こうというわけ。

 

 てなわけで、支度が終わったのであとは出掛けるだけなのだが……。

 

 俺は、やや呆れた視線を隣に送る。

 

「ふ、フェイ! 筆記用具は持ったか? 宿代と飯代、それとおやつ代は足りるのかっ。朝はちゃんと起きられるんだろうな!? 爆音目覚ましを持っていくかっ。いや、その前に安眠グッズだよな! あとは……」

「親父、頼むから少し落ち着いてくれ……」

 

 オロオロしていながらも、しっかりと口は出す親父の姿があった。

 

 ここ1週間ぐらいは、俺よりもソワソワしていたけど……3日前だともっと悪化してるな。

 

「落ち着けるかよっ。なんでお前はそんな冷静なんだよっ」

「いや、親父がいるからな……」

 

 隣でもっと騒がしい人がいると、冷静になれるよなぁ。

 

「息子が3日間家に帰らないんだぞっ。心配になるのは当たり前だ!」

「そんな真っ直ぐな目で堂々と言われると返す言葉がないんだが……」

 

 親父って、愛情ってよりも過保護過ぎる気がするんだよなぁ。

 

「俺の試験の心配をしてくれるのは、ありがたいけどさ……」

「いや、違う!」

「え?」

 

 なんか否定されたんだけど?

 

「入学試験そのものは心配していない! 何故なら、お前の実力なら王立学園でも通用するからなっ。昔から見てきた俺が言うんだ。自信持ていいぞぉ!」

 

 またもや堂々と言われて、返す言葉がない。

 いや……あるな。

 

「でも、結局は心配してくれているじゃ……?」

「俺が心配しているのはフェイ、お前自身のことだ」

「お、おう……?」

 

 だから、試験の心配してくれているんじゃないか、と思ったけど……。

 何が続きがありそうなので黙って聞くことにする。

 

「子供が親元を離れて何かをする時ってのはなぁ、いつだって心配になるものなんだぞっ。それくらい、我が子の成長ってのは感慨深いんだよ。立派に育ってよぉ、フェイ〜! お前は俺の自慢だぜー!」

「ちょっ、頭ワシワシすんなよっ! まだ髪セットしていないとは言えっ」

 

 親父がごつい手で俺の頭を撫で回す。

 満足して手を離した時には、俺の髪はボサボサなのだろうな。

 

 というか、まだ試験すら受けていないのに自慢の息子って……。

 

 だけど……。

 

「まあ、なんというか……ありがとうな、親父。おかげで今日も元気もらえたわ。あと、絶対合格するから」

「おう、良かったぜっ」

 

 親父は満面の笑みで頷いたのだった。

 

「おーい、フェイ! 準備できたかー!」

 

 庭先の方から近所に住むおっちゃんの声がして、荷物を持って下に降りる。

 

 親父に代わって、王都までの馬車での送迎を頼んでいるのだ。

 

「お待たせしました。準備できてます!」

「そうかそうか。なら、今からが俺の役目だな。ちゃんと送ってやるからなっ」

 

 おっちゃんが親指を立てて、笑う。

 

 この村の人たちはほとんど男だが……みんないい人ばかりなんだよなぁ。

 寝取りとか心配している俺が馬鹿みたいなほど。

 

 馬車に荷物を乗せていると、親父がこちらにやってきた。

 

「息子を頼むぞ。だが、本来であれば、俺が送ってやるべき……いや、送りたいっ。領主の仕事なんぞ関係ないっ」

「関係あるって。俺たちの生活源なんだから……」

 

 そういや、親父がこの村の領主になったのって、ある日突然だったよなぁ。

 

◆◆

 

 村から遠ざかっていくのを眺めながら、俺とおっちゃんの話の内容は親父のことになっていた。

 

「アイツは村全員から見ても、生粋の親バカだと思うが、やっぱり息子のお前から見てもそう思うか?」

「そりゃ、思いますよ。あれで思わない方がおかしいってやつですよ」

「だよなぁ!」

「まあ、でも……」

 

 少しだけ間を置く。

 俺は微笑みが漏れて……。

 

「自分のことあんなに大事にしてもらって、嫌なわけがないですよ」

「そうか、そうかぁ! お前も親父に似て良いやつだよな、フェイ!」

 

 おっちゃんの高笑いに釣られて、俺も少し口角が上がる。

 

 嫌どころか、たくさん恩返ししないとなって思っている。

 

 だからこそ、俺は学園に入って……。

 

「しかしながら、父親のアイツと同じで村の男たちは全員、お前なら王立学園に合格するどころか、難なくやっていけると思っているよ。なんなら、女にだって一目置かれる存在になるに違いない。なんたって、お前は――男にしては()()()()()()()()()からなっ」

「……まあ、そうですね」

 

 少し声のトーンを落として、俺は言葉を返した。

 

 魔力があれば、たくさんの魔法を使える。

 それは誇らしいことでもあり……同時に、この世界では少しだけ厄介になりそうだ。

 

 この貞操逆転世界は、男がチヤホヤされるやつではないが……。

 

 それとは別に、特徴がある。

 

 男女比が3:1であること。

 

 そして、もう1つは……魔力が多いのは女性の方。

 

 膨大な魔力を持ち、多種多様な魔法を扱えるのが数少ない女性であり。

 

 魔力が貧弱な男たちは、筋力や剣術、武術などでそれをカバーする。

 

 そんな世の中である。

 

 そんな中で、俺が貰ったチートスキルは偶然か、それとも何かの巡り合わせなのか……。

 

「魔力が多いどころか、無限なんだよなぁ……」

 

 その呟きは、おっちゃんには聞こえないだろう。

 

 俺が貰ったチートスキルとは、 【無限魔力】である。

 

 んで、それがバレたら……絶対に面倒なことになるだろっ。

 

 幼い頃のヒーロー活動みたいなことは、今はもう辞めて大人しく過ごしている。

  

 だから、俺がもう、めちゃくちゃ目立つってことはないだろうな。

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