男女比3:1でも貞操逆転世界なのに「もう少し大きくなったら結婚しよう」でとうとう引き返せなくなった奴   作:陽波ゆうい

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第4話 王立学園を受ける理由

 入学試験の前日。

 

 午前中には王都に着いた。

 ロータリーのようなところで馬車を止めてもらい、俺は降り立つ。

 

「おお……やっぱりすげぇなぁ〜!」

 

 見渡せば、圧巻である。

 

 うちの村とは違い、森と川などは一切ない。

 広大な敷地に、大きな建物がずらっと並び、大通りは人で混雑していた。

 まさに都会って感じ。

 

 そして、外を出歩く女性の姿も見える。

 ほとんどの女性は、王都にいると言われているからな。

 

 もっとも、女性たちの周りには、イケメンや銀の鎧に身を包んだ男たちがいて、近寄れないけど。

 

 まあ、女性のことなんてどうでもいいんだ。

 俺にはもう、無縁の存在なのだから。

 

「俺は、自由時間にさせてもらうぜ。明日の試験が終わる頃には、またここにいるからよ。お前も少しはリフレッシュしつつ、最後の追い込み頑張れよ」

「ありがとう、おっちゃん」

 

 馬車の中に忘れ物をしていないか確認して、もう1度おっちゃんにお礼を言おうとした時だった。

 

「しかし、フェイ……」

「うん?」

 

 おっちゃんが何か言いたげな表情をしていたので、聞く姿勢になる。

 

「試験前に聞くのもなんだが……お前、なんで王立学園を受けようと思ったんだ? いや、ダメっていうのじゃないからなっ。お前のことは応援しているからな! きっと、合格するって思っているけども!」

 

 おっちゃんは俺のことを気遣いながらも、言葉を続けた。

 

「優しいお前のことだ。親父のためっていう理由もあるだろうが……だが別に、倍率が高くない普通の学園でもよかったんじゃねぇか?」

 

 おっちゃんの言葉を受けて、俺は考える間を取る。

 

 まあ、おっちゃんの言うことは分かる。

 

 貴族や騎士の家系、あるいは教育に厳しい家庭環境であれば、トップレベルの王立学園に入ることを目標としているのも納得がいくが……。

 

 俺は田舎の出身だし、上を目指せみたいな義務もない。

 

 親父の領主としての役目を継ぐのだって、ほぼ決まりみたいなもんだ。

 

 言っちゃえば別に……王立学園でなくともいいのだ。

 

 俺だって、最初の頃はそう思っていたけど……。

 

「他の理由っていうなら、有名な学園を出たほうが仕事の幅が広がると思ったからだよ。それに、俺は普通の男よりも魔力が多いみたいだからさ。それは試験じゃ有利になると思うし、より質の高い魔法を学べたら将来もっと役に立つことができるかなって」

「そうか、そっか! それだけちゃんとした理由があれば、面接も大丈夫だな!」

 

 おっちゃんの言葉に、俺は頷いた。

 

 それからおっちゃんと別れて、宿を取った。

 

 その部屋の中で……1通の封筒を取り出す。

 

「おっちゃんに言ったことは、嘘じゃないんだけどなぁ。ただ、王立学園を受ける最大の理由はある。まあ、これがあるから俺みたいな田舎者でも、倍率が高い中でも合格の可能性を見込めるというか……」

 

 封筒の中の手紙を出して、改めて目を通す。

 

 この手紙の中を要約すると……。

 

 俺こと、フェイ・オルクスを王立学園カルリーネへの入学を薦める()()()()()()ほどきている。

 だから、試験を受ければ少しは有利になるし、特待生とまではいかなくとも、学費免除ぐらいの優遇はしてやるからうちの学園に来いとのこと。

  

 他の人から推薦状がきたから、それを受けて推薦するよーという、王立学園側からの推薦状だった。

 

 なんか、今見てもまどろっこしいな。

 レアケースな推薦状なんだろうな、っていうのは分かった。

 

 他言無用とも書いてあったが、身内である親父には目を通してもらった。

 

 念の為、王立学園側にも問い合わせたところ、本当にこの推薦状を送ったとのこと。

 

 名門とはいえど、王立学園の試験は基本、誰でも受けることができる。

 

 けれど実際には、平民や名もなき家の出身では、アピールポイントがなれば、書類選考の段階で落とされることがほとんどだ。

 

 さらに、王立学園は小等部からある。

 そんなの、小等部から通っているやつの方が試験が有利であるに決まっている。

 

 そんな中で、俺は書類選考を突破して、明日の本試験を受けることができる。 

 これも推薦状があるからだろう。

 じゃなきゃ、俺のような田舎出身の男は絶対落ちているし。

 

 本試験を受ける資格があるのなら、王立学園入学を目指すしかないってわけ。

 それで、俺は王立学園を受けるのだ。

 

 しかしながら、それでも俺のような平凡な立場の人間が試験では不利な側にあることは変わらない。

 

 学園側からの推薦状だって、本試験は他の人たちと同じように受けてもらうという文言だったし。

 

 かといって、実力を示せばすんなりと合格できるとは限らない。

 

 男女比3:1であることから、数少ない女性の方が優遇されるのもだが、男は貴族位の方が立場的に上だからな。

 

「とはいえ、落ちるつもりもないけど。明日の試験頑張らないとな!」

 

 そして……。

 

 誰が俺を推薦したのか。

 何故、俺なんかを推薦したのか。

 王立学園に来させる目的は何か。

 

 その答えは、明日の試験の中で分かるかもしれないな。

 

◆◆

 

(???side)

 

 王立学園カルリーネでは現在、教師陣や一部生徒たちが大忙しであった。

  

 明日、あらゆる国から集まる志望者たちの入学試験の最終準備中であるから。

 

 例年よりも志望者が多く……もちろん、トップの座に君臨する学園長も大忙しである。

 

「書類選考でかなり減らしたとはいえ、この大人数……。年々、人気が出てきて嬉しいけれど、審査するのも大変なのよねぇ……」

 

 1人の女性が疲れを滲ませた言葉を漏らした。

 

 ぱっと見は20代ぐらいの若々しい彼女こそが、王立学園カルリーネの学園長である。

 

 そして、学園長室にはもう1人いた。

 

「書類のチェック終わったよー。わぁ、今のママめっちゃ老けてるよ。ちょっと休憩する〜?」

「私は老けてませんし、ここではママではなく、学園長と呼びなさいと言っているでしょう?」

「別にいいじゃーん。外には警備の男の人たちがいるとはいえ、この部屋にはアタシとママの2人しかいないんだし〜」

 

 学園長は軽くため息をつきながら、娘である彼女の様子を伺う。

 

 彼女は、ウキウキした様子で口を開いた。

 

「ところで、()はちゃんと明日の受験者の中にいるよね? ねっ?」

「貴方……それを再確認するために、書類整理を手伝っているわね? 私の仕事を手伝うと言い出した時点で、何か裏があるとは思っていたけれど……」

「まあまあ、いいじゃん、いいじゃんっ。それで、彼はちゃんと明日の試験に来るんだよね? うちに入るつもりでいるんだよね? それぐらいは教えてくれても問題ないでしょー」

 

 そう促されて、学園長は書類に目を通す。

 

「彼、ねぇ……」

 

 そうして、『フェイ・オルクス』の名前が書いてある紙を見つける。

 

「はいはい。明日の受験者の中には彼はちゃんといるわよ。というか、書類なんて確認しなくとも覚えているわよ」

 

 その言葉を聞いた彼女は、実に嬉しそうに口角を上げた。

 

「まあ、そうだよね〜。昔、アタシを助けてくれたし、今回は生徒会長であるアタシが推薦状を出しているもんっ」

「そうね。貴方が散々、駄々をこねるからね。全く……本来、推薦状というのは、優れた実績を残した者のみに出すもの。決して、個人的な感情でするものではないのよ?」

「まあまあ、もう終わったことなんだし、いいじゃん〜。それにあくまで、うちの学園に来てもらうのが目的だしー。わざわざ特待生にしなくても、本試験は彼の実力なら絶対通るしっ」

「はいはい、そうねぇ」

 

 聞き飽きたように流す学園長。

 ふと、書類に視線を落として……。

 

「外部からの推薦状が3つもあるからしても、彼は珍しいケースよねぇ」

「え? 推薦状が3つ?」

「……あ」

 

 学園長は「しまった」とばかりの呆気ない声を漏らして、顔を上げた。

 

「……ママ? え、なに? どういうこと? アタシ以外にあと2つ……彼がうちの学園に来るように推薦状を出したやつがいるの? えっ、誰なの? まさか、ソイツも女……?」

「……こほんっ。これ以上は守秘義務があるわ。さあ、仕事を続けましょう。今日はまだまだ忙しいのだから」

 

 無理やり話題を切り替えて、そそくさと書類確認を再開した。

 

 一方、彼女の瞳はどんどん曇ってゆく。

 

「ふーん……アタシ以外にも目をつけているやつがいるんだぁ。まあでも、別にいいよ。学園じゃ、フー君はアタシの旦那だってこと……見せつけてやればいいだけだから」

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