男女比3:1でも貞操逆転世界なのに「もう少し大きくなったら結婚しよう」でとうとう引き返せなくなった奴   作:陽波ゆうい

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第9話 推薦状のお礼として

「そんなに私の顔を見つめて、どうされましたか?」

 

 目の前の銀髪美女が微笑を浮かべて尋ねてきた。

 

 どうされたというか、気になることがいくつかあるというか……。

 

 でもまずは、確認からだよな。

 

「えと……俺の名前を呼びましたか?」

「ええ。貴方のことを呼びましたよ、フェイ様」

 

 銀髪美女がはっきりとした口調で俺の名前を言った。

 

 いや、ちょっと待て。

 

 今、フェイ()って呼んだよな?

 俺というどこにでもいる男相手に、わざわざ『様』を付けている。

 

『お初にお目にかかります。私は、ネリネ・フィリストと申します。公爵位であるフィリスト家当主の娘であり、次期当主の立場でもあります。以後、お見知りおきを』

 

 親父に対しても、丁寧な対応だったし……。

 

 きっと、誰に対しても礼節を欠かさない。穏やかで気品ある方なんだな!

 

 何かと女性優位な世の中とあり、中には傲慢でワガママな女性もいると聞くけど……。

 

 と、感心しているばかりじゃダメだよな。

 俺も言葉を返さないと!

 

「聞き間違いじゃなくて良かったです……! あの、俺もネリネ様とお呼びしていいですか?」

 

 俺なりの精一杯の敬語で話しかけてみる。

 

 すると、彼女は柔らかな笑みを浮かべて。

 

「もちろんです。しかしながら、フェイ様だけは私のことを呼び捨てで構いませんよ?」

「いや、そういうわけには……」

 

 俺だけ呼び捨て……。

 同年代だからって理由かな?

 

 前世なら、気軽に呼び捨てできて友達になれたかも……。

 

 この男女比3:1だと違う。

 

 同年代とはいえ、身分は大きく違う。

 

 俺は、田舎領主の1人息子。

 ネリネ様は、公爵家の1人娘であり、希少な女性。

 

 というか、女性に対して無礼な態度を取るのはかなりマズイ。

 最悪、罪になってしまうことも……。

 

 それと、この世界で男側が女性を呼び捨てにするというのは、よほど親しい間柄。

 もしくは婚約者の場合である。

 

 俺なんかがそんな立場になれるはずものない。

 

 周りの男たちからも痛い目で見られるのは嫌なので……。

 

「やはり、様呼びでお願いします!」

「そうですか。では、今はお互いに様付けで呼び合いましょう」

 

 ネリネ様はくすりと笑い、どこか楽しそうに頷いた。

 

 それにしても、会談を抜け出してまで彼女がわざわざここに?

 俺の名前を知っている理由も気になる。

 

 思い当たることを考えた時……ふと、あのことを思い出した。

 

「もしかして、差出人不明の()()を送ってくださったのは……ネリネ様ですか? あの花たちすごく綺麗で、今は俺の部屋に飾ってあるんです!」

 

 田舎とはいえ、ここはフィリスト家の領地の1つなのだ。

 

 領主を任せている親父の名前を覚えているのなら、その家族のことを……息子である俺の名前もついでに覚えていても不思議ではない。

 

 そして、ネリネ様の丁寧な対応から俺が王立学園に合格したことを風の噂で知ってわざわざ花束を送ってくれたのかもしれない。

 

「差出人不明の花束……? ……ほう?」

 

 ネリネ様が顎に手を添えて、考えるような間を取る。

 

 あっ、やべっ……この反応は、送ってないやつだ。

 

「す、すいません! 俺の勘違いでした! 差出人不明と言っても、俺のことを知っているからこそだと思うので多分、知り合いの誰かが送ってくれたのかなっ」

 変に気遣われる前に俺は慌てて、口を開く。

 

 しかし、ネリネ様は顔を俯かせて何やら独り言を。

 その瞳が一瞬、鋭く光ったような気もして……。

 

「……フェイ様に花束を送った。しかも、王立学園合格のタイミングで……。まさか、私以外にも彼を狙っている女が? いや、考えすぎかしら。ただ単にお祝いとしてよね。もし、そうじゃなかったら……」

「あ、あの……ネリネ様?」

「いえ……なんでもありません」

 

 ネリネ様が穏やかに微笑んだ。

 

 ほっ……。どうやら怒っていたわけではなさそうだ。

 

「それにしても、フェイ様は今年の春から王立学園カルリーネに通われますよね」

 

 あっ、それは知っているんだ!

 

「よ、よくご存知で……! 試験に無事合格できて良かったですよ。まあ、俺のことを推してくれた推薦状があったおかげっていうのが大きいんですけどね」

 

 推薦状のことを言ったが、まあ試験も終わったことだし大丈夫だろ。

 

「知っていますよ。というか、フェイ様には王立学園カルリーネに通ってもらわなければ困るというものです」

「こ、困る?」

「ええ」

 

 ネリネ様がひと呼吸置いて、続きを話す。

 

「何故なら、フェイ様を王立学園カルリーネへの入学を薦める推薦状を出したのは、私なのですから」

「え……」

 

 思考が止まる。

 

 推薦状を出したのがネリネ様?  

 

 公爵家の令嬢であり、選び放題のはずの女性が?

 こんな田舎出身の少年に?

 

 そんなこと、ありえるのか……?

 

 いや、でもありえているから俺は王立学園に通えるわけで……。

 

 その理由を聞こうとした時。

 ネリネ様の方が口を開くのが早くて……。

 

「そのお礼として、私から提案するのはおこがましいことなのですが……。学園では――()()として、頼っても良いですか?」

 

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