ARCANA WORLD   作:柏木智也

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夜に歩く

いつもの夜がやってきた。変わらない帰り道を僕は歩いている。学校の帰り道、変わらない街を歩いている。一歩、また一歩と歩いていく。街の家の光は消え、眠りにつこうとしているのだろう。

 

あぁ…僕も早く帰らないと…

 

そう思い、歩く速度を上げた。

冷たい風に打たれながら、弱まる気配の無い風に打たれながら、歩くことを続ける。そして、ようやく家に辿り着いた。

 

ガチャッ

玄関のドアを開け、家の中へと入って行く。靴をしっかりと揃え、自分の部屋へと向かっていく。鞄を部屋の隅に置き、ベッドへと倒れ込む。

 

「今日は…もう寝よう…」

 

僕は小さく、小さく、小さく呟いた。

長い間、外を歩いたから、少し足が痛い。学校が終わり、夜遅くまで、街中を歩いている。変わらない景色、変わらない街をなぜ歩くのか。それは歩くのが好きだからだ。言葉にするのは難しいけど、けど、本当に歩くのが好きなんだ。

そうして僕は、次第に瞼が閉じ、深い眠りへ落ちてゆく。

 

夜は朝に出会うのか?朝は夜に出会うのか?

僕らはなぜ、夢を見るのか?僕らはなぜ、夢を忘れるのか?

一体…どうすればこの靄を消せるのだろうか

 

 

暗い空の外、地球よりも遥かに小さい天体の中。

天体の中に広がる、青い空。

天体の中に広がる、草原。

天体の中に一つだけ、屋根と柱のみで構成された建物、所謂「ガゼボ」が存在する。そのガゼボの中に、木製の椅子に座っている人物が居る。

木製の椅子は、豪華な装飾が施されている。

一般人では、到底座ることの出来ない、圧倒的な存在感を放っている。

そんな椅子に、堂々と座る怜悧で、荘厳な雰囲気を纏わせた銀髪の男性が、目の前の鏡に映る【地球】を見て言った。

「中々に厄介なものだ。

この軸も、極めて困難な進行…

この軸は…これもまた難しい。【吸血鬼(ヴァンパイア)】が蘇る。

この軸も、【狂気の科学者(マッドサイエンティスト)】が阻むか。」

目の前の鏡に映る、出来事を見ながら、悩む。

「これらを対処するには、【神秘】が足りない。かと言って、魔法使い達に【指令】を送るのにも、条件を満たせない。

さて、どうしたものか…」

顎に指を当てながら考えているが、椅子の後ろの空間に向かって、話し始めた。

「そなたはどう思う?

せっかくこの場に来たのだから、顔くらい見せれば良いのに。」

「おっと、気づいていましたか。姿も形も、ここには無いというのに。」

謎の男の声だけが、ガゼボの周りに響く。

「当然。姿形は無くとも、貴方から溢れる存在感は消しきれませんよ。」

「ブーメランですよ。

今の僕を感知できる人なんて、貴方しかいません。」

「ここに立ち入れる者も、極僅か。入ってくれば、すぐに分かりますよ。

それより、ここに来たということは、何か用があるのでしょう?

生憎ですが、こちらもかなり手一杯なもので、協力することは、厳しい状況です。」

「大丈夫。今回の件は、僕らに出番はありませんよ。」

「ほう?」

目の前の鏡が、曇り始め、新しい景色へと変わろうとしている。

「ふむ。魔法使い達の問題では無いのかね?」

「今回の件は別さ。そもそも、今回の件に大きく関わるのは、魔法使いでも、魔術師でもない、ただの人間だからさ。」

「なるほど。それなら、君の方が適任だな。」

目まぐるしく移り変わる、鏡の景色。

そしてようやく、鏡はあるものを映し出した。

それは、黒い髪に学生服を来た一人の少年だった。

 

「この少年を、【主人公】にすると?」

「えぇ、今はただの人間ですが、彼はその内、その任務を果たすことでしょう。僕達は関わらない方が良い、特に貴方の方は。」

「……わかりました。

では、今回の件は()()に任せるとしよう。

今回の魔法界事変も、私は【観測者】と言う立場で、彼らを見守るとしましょう。」

「えぇ。何にせよ、今回の魔法界事変(イベント)も大きくなることでしょう。輝く未来の為に、彼らを見守りましょう。」

 

映し出された少年『竜胆尊夜』

それを観測する者達。

そんな存在を知るはずもなく、夜が明けていく。

 

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