ウマ娘伝説:蒼焔の挑戦者   作:ネギ市場

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 第21話:エピローグ

 

 

 

 ロンシャンの歓声から、数か月。

 メロヴィクトは静かにターフを去った。

 世界の王。


 日本総大将。

 奇跡のウマ娘。

 絶対王者。


 その称号は、確かに彼女のものだった。

 だが――

 

 「……土、重いですね。」

 

 軍手をはめ、長靴で畑を踏みしめながら彼女は呟く。

 そこは日本の片隅。


 広がるのは芝ではなく、黒土。


 ゴール板の代わりに並ぶのは、丸々とした――メロン。

 

 「農業は根気だ、メロヴィクトよ!」

 

 隣で腕を組むのは、実体を持ったビクトリーム。

 あの凱旋門賞の夜以降、なぜか彼は普通にそこに“いる”。

 理由は誰も説明できない。

 ただ一つ分かるのは――彼は手伝わない。

 

 「光合成だ! 太陽よ! 我がVの力で照らせ!」

 「やめてください。近所に迷惑です。それに、またUMAとして捕獲されますよ?」

 「ブルァァアアアッ!あんな訳わかめな連中に捕まる私ではないわ!」

 「……メロン置いた捕獲機であっさり捕まってたじゃないですか?あの時は見つからない様に助けるの大変だったんですよ?」

 「ブルァァアアアッ!」

 「困ったからって叫んで誤魔化さない!さあ、自分の食い扶持くらい、さっさと働いて下さいね?」

 「むぅ、あちらで我がVを呼んでいる!」

 「あ、こらっ!逃げるな!」

 

 2人はそれなりに楽しく過ごしていた。

 

 

 最初は順調だった。

 畑は豊作。


 糖度も高い。


 評判も上々。

 ……だが。

 

 「……あれ?」

 

 収穫の朝。

 昨日より、明らかにメロンが多い。

 数え間違いかと思った。


 だが次の日も、その次の日も。

 増えている。

 

 「ふはははは! 我が王の畑よ! Vの波動が満ちている!」

 「関係ないです。」

 

 否定はするが、心当たりはある。

 疲れた夜、無意識に胸奥が熱を持つ。


 蒼い光が、ほんのりと土に染みる。

 翌朝、メロンが増えている。

 どうやら。

 チャーグルは、作物にも効くらしい。

 

 結果。

 供給過多。

 価格暴落。

 農園、赤字。

 

 「……どうしてこうなるんでしょう?」

 

 メロヴィクトは畑の端に座り込む。

 遠くの山に、夕陽が沈みかけている。

 王者の栄光も、世界の歓声も、今はただの思い出。

 あるのは、増えすぎたメロンと請求書。

 ビクトリームが隣に立つ。

 

 「再び溜めるか?」

 

 不敵に笑う。

 

 「Vの力を集め、世界を再び――」

 「溜めませんし、集めません。」

 

 即答だった。

 メロヴィクトが少しだけ、笑う。

 

 「今回は、自力です。」

 

 土を握る。

 指の間からこぼれる、温かな粒。

 

 「走って勝ったのも、自分の脚でしたから。」

 

 ビクトリームは、ふっと目を細める。

 

 「……ふふふ。」

 

 珍しく、静かな声だった。

 畑に風が吹く。

 メロンの葉が揺れる。

 ほんの少しだけ――

 また、増えている。

 

 「また……増えてますよね?」

 「気のせいだ。」

 「絶対増えてます。」

 

 二人の影が、長く伸びる。

 

 「はぁ、……やっぱり走るしかないですよねぇ。」

 

 メロヴィクトは立ち上がる。

 

 「賞金の出るマラソン大会とかないかなぁ?」

 「ふふふ……再び溜めるか。」

 「溜めません。今回は自力です。」

 

 夕陽が沈む。

 赤く染まる畑。

 丸く実ったメロンが、静かに光を吸い込んでいる。

 あの蒼焔とは違う、柔らかな育つ光。

 メロンは光を育てる。

 育った光はメロンを育てる。

 王だった少女は今、土の上に立っている。

 そしてきっと、また走る。

 自分の脚で。

 

 ――完。





 ここまででメロヴィクトの冒険が一つの終わりを迎え、彼女は新たな道を歩み始めました。
 これからも彼女とビクトリームは賑やかにやっていく事でしょう。
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 最後に、読んでくださった皆様、本当にありがとうございました。
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