魔法科高校の刈り取るもの   作:ぶどうのプレッツェル

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新入生勧誘期間

 

 

模擬戦から一日が過ぎた。

 

この日から1週間、第一高校は春の風物詩である“新入部員勧誘期間”に突入する。

 

第一高校も一般的な高校と同じように様々な部活やサークルが存在しており、新入生を確保するため勧誘に躍起になっている。それ自体は別におかしなことではない。しかし魔法科高校の場合は一般的の高校と少々事情が異なってくる。

主な原因は魔法科高校独自のクラブが存在することと、“九校戦”こと“全国魔法科高校親善魔法競技大会”あるからだろう。この大会の結果で学校そのものの評価に繋がるのはもちろんのこと、活躍した生徒とクラブは学校から優遇されるのである。

そんなわけで、優秀な新入生の獲得は最重要課題であり、ゆえに各クラブ間でのトラブルが多発する。さらにこの期間中はデモンストレーションとしてCADの携帯が許可されていることもありトラブルを大きくする原因と言える。学校側も九校戦のことがあって多少のルール破りは黙認状態であり、まさに学内は無法地帯と呼んで差し支えない。

 

 

達也は風紀委員として、このお祭り騒ぎを仲裁することになる。現在、達也は風紀委員本部でのミーティングに向かっていた。

途中で、A組で無那と合流している。

 

 

風紀委員の本部へと辿り着いた2人は、学生証であるICカードを入口脇のパネルに当てた。2人の情報は既に登録されており、ガチャンとロックが解除される音を確認した達也がドアを開け、2人は部屋の中へと足を踏み入れた。

どうやら自分達は最後に来たようで、部屋には既に何人もの生徒が待っていた。ドアが開く音に合わせて、全員がこちらへと注目する。

 

 

「お、よし、おまえらも来たか。では早速ミーティングを始めるとしよう。さて諸君、今年もあの馬鹿騒ぎの一週間が始まった。クラブ活動の新入部員勧誘期間だ。いや、“新入生獲得合戦”というべきか? 我々風紀委員は今日から一週間フル稼働してもらう! 幸い今年は、期待できる新人が入ったからな。自己紹介していけ」

 

 

摩利はそう言うと、達也と無那をちらりと見た。

その視線を受け、二人は立ち上がった。

 

 

「1-Aの死刈無那と1-Eの司波達也だ」

 

 

案の定、達也が紹介されたところで部屋の中がざわついた。「二科生が取り締まるのか?」といった声が、あちらこちらから聞こえてくる。

 

 

「委員長、この二科生は戦力になるんですか?」

 

「腕前は確認済みだ。私の目が不安だというなら、自分の目で確かめてみるか?」

 

「い、いえ、結構です……」

 

 

摩利の睨みが効いたのか、口を挟んできた生徒はすごすごと引き下がった。

 

 

「他に質問は無いか? 無いのなら、ただちに出動しろ!」

 

 

その言葉と共に、部屋にいた先輩の風紀委員が一斉に立ち上がり、そのまま駆け抜けるように部屋を出ていった。

 

 

「司波、死刈。おまえ達には、これを渡しておく」

 

 

摩利がそう言って差し出したのは、掌サイズのビデオレコーダーと“風紀委員”の文字が書かれた腕章だった。

 

 

「巡回のときには、常にその腕章を身につけておけ。レコーダーは胸ポケットにしまい、何か起こったらすぐにスイッチを入れろ。また風紀委員は常にCADを携帯する許可が与えられているが、不正使用は厳罰対象だから注意するように」

 

「質問があります」

 

 

摩利の説明が終わるタイミングを見計らって、達也が手を挙げた。

摩利の「許可する」という返事を待ってから、部屋にある机の上に無造作に置かれているCADを指差す。

 

 

「CADは委員会の備品を使用しても良いのでしょうか?」

 

「構わないが、理由は?」

 

「あれは旧式ですが、エキスパート仕様の高級品ですよ」

 

 

どうやら摩利はその辺りの知識には疎いようである。

 

摩利からの許可も得たことで、達也は幾つもあるCADの中から2つ選び、それぞれの手首に装着した。

 

 

「それでは、こちらをお借りします」

 

「2つだと……? ふふ、本当に面白いな、君は……」

 

「死刈はどうする? 借りてくか?」

 

「拳銃型の、CADが二つ、あればいい。変化したら、全部同じに、なるし」

 

「そうなのか、興味深いな…。なあ、私をそれを使えないか?」

 

「??、あれは、刈り取るものの具現。私の手を離れれば、元に戻る」

 

「ちっ、そうか」

 

 

摩利は残念そうに言うと部屋を出ていった。

 

 

「私たちも、いこう?」

 

「その前に、エリカと見て回る約束をしていてな。合流しないといけないな。待ち合わせまであまり時間がない。急ぐぞ」

 

 

しかし、いくら急ぐといっても、さすがに緊急でもないのに廊下を走ることは許されない。2人は早歩きで1-Eの教室まで行くと、入口から中を覗き込んだ。

しかしあの人目を惹く鮮やかな赤みがかった髪は見当たらない。

 

 

「いないな。先に行ってしまったかもしれない。巡回ついでに探すか」

 

「そうだね」

 

 

二人は校内の巡回に繰り出した。

 

 

◆◆◆◆

 

 

校舎の外は、まさに熱狂の渦が巻き起こっていた。

それぞれのクラブが指定された場所にテントを建て、そこでCADを使ったデモンストレーションを行ったり、体験コーナーを設けていたりしていた。呼び込みの声もあちこちで入り乱れており、勧誘も相手の腕を引っ張ったりとかなり強引に行われている。特に一科生ともなると、やはり成績が優秀ということもあって様々なクラブから文字通り引っ張りだことなっていた。

しかし、もうすでに騒ぎが起こっていた。

 

 

「彼女に先に声を掛けたのは、我々テニス部だぞ!」

 

「いい加減に手を離しなさい! 私達バレー部が先よ!」

 

「あ、あの、もう離して……」

 

 

目を遣ると、複数の生徒が、エリカを取り囲んで言い争いをしていた。会話の内容からして、彼女に目を付けた上級生が自分達のクラブに勧誘しようと一斉に集まってきたのだろう。

 

 

「死刈、助けるぞ」

 

「うん、なら、私一人で、やる」

 

「?どうやってだ?」

 

「ただ、鎖を鳴らして、歩くだけ。それでも、人は、怯えるだろう」

 

「わかった。やってくれ」

 

 

ゆらり、と無那が重力を感じさせない動きで集団に近づき始める。

 

 

 

 

 

 

 

ギャリ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

鎖の音が鳴る。

 

 

 

 

 

 

 

ギャリ、ギャリ。

 

 

 

 

 

 

 

その広場にいた全員が鎖の音を耳にした。

それは"恐怖"を掻き立てる。

だれもが心臓が早鐘を立てていた。

だれもが動きを止めていた。

 

 

 

 

ギャリ、ギャリ。

 

 

 

 

その音はゆっくりと近づいてくる。

 

 

「ねぇ、争いは、ダメだよ?」

 

 

現れたのは死神という表現にふさわしい存在だった。

血であろう赤いものが付着した黒いコート、その手には本物としか思えぬ銃が握られている。その腕には“風紀委員”の文字が書かれた腕章が付けられていた。

 

 

「う、うるせぇ!邪魔すんな!」

 

 

声を荒げ、CADを向ける。

恐怖を覆い隠すための虚勢。しかし、そんなもの死神――無那には何の意味もなかった。

ただ、死神は無言で佇んでいる。

 

 

「ひ、ひぃ!」

 

 

恐怖に耐えかねた一人の生徒が無那に向かって魔法を発動させてしまった。

無論、刈り取るものの耐久力は並大抵ではない。魔法は無那に当たると何の現象も起こせずに消え去った。

 

 

「人に、向けたね?CADの、不正使用で、取り締まる」

 

 

 

ターーン!

 

 

突如その場に現れた光(闇夜の閃光)により、目が眩む。

前後不覚となり、生徒たちはその場にへたり込む。

そこで達也が無那の行動で衝撃を受けていたことから帰って来て、魔法を使った男子生徒を拘束する。

 

 

「えー、風紀委員です。CADの不正使用で話しがあります。ただちに風紀委員本部に向かってください」

 

「はい」

 

 

その生徒は素直に頷いた。

 

 

 

生徒を送り届けた達也と無那はエリカを加え、見て回ることにした。

 

 

「まあ、特に巡回ルートなど決めていないし、エリカの好きな所でいいぞ」

 

「え、良いの? そうだなぁ……」

 

 

エリカは少しの間何かを考える素振りを見せ、頷く。

 

 

「せっかくだから、“闘技場”を見ていきたいかな!」

 

 

◆◆◆◆

 

 

屋内で活動するクラブがデモンストレーションを行う場合は、限りあるスペースを平等に使えるように、一定時間ごとに使用できるクラブを変えるというスタイルを取っている。

第2小体育館、通称“闘技場”もそれは変わらず、エリカ達がやってきたときはちょうど剣道部の順番だった。

 

 

「ふーん、魔法科高校なのに剣道部があるのね」

 

「剣道部って、どこの学校にもあるんじゃないのか?」

 

「魔法に携わる人は、ほとんど“剣術”に流れちゃうの。“剣術”は魔法を併用した剣技だからね」

 

「なるほど」

 

 

3人は入口の2階席から1階の広いフロアへと下りていった。

部活動を行っているのは中央のスペースであり、見学者は邪魔にならないよう壁際でそれを眺めている。

達也たち3人も、彼らと同じように壁際へ行こうと…

 

 

「きゃあっ!」

 

 

そのとき、女子生徒の悲鳴と共に、剣道の防具をつけた1人の男子生徒が思いっきり吹っ飛んで尻餅をついた。穏やかではない雰囲気に、達也とエリカの顔つきも自然と真剣なものとなる。

 

 

「おいおい、防具の上から面を打っただけだろ? 仮にも剣道部のレギュラーが泡吹いてんじゃねぇよ」

 

 

彼を吹っ飛ばしたであろう短い髪を立てた男子生徒が、にやにやと嫌味な笑みを浮かべてわざと周りに聞こえるようにそう言った。そんな彼の後ろには、彼の仲間であろう数人の男子生徒が同じような笑みを浮かべている。

 

 

「何をしてるの、桐原くん! 剣術部の時間まで、まだ1時間以上はあるわよ! どうして待てないの!」

 

 

そのとき1人の女子生徒が、吹っ飛ばされた男子生徒を庇うように飛び出した。長い黒髪を後ろで縛った凛々しい顔つきの彼女は、防具を身につけていない剣道着の姿だった。

 

 

「心外だな、壬生。俺はただ、演舞に協力してやっただけだぜ?」

 

 

闘技場の空気が張り詰めていく。見学者達は野次馬根性といった感じでその様子を見守っている。

そんな中、人垣を掻き分けて最前列でそれを眺めようとする女子生徒がいた。

 

 

「ごめん達也くん、無那さん。ちょっと面白くなってきた!」

 

 

それはエリカだった。彼女に引っ張られる達也は迷惑そうな顔をしていたが、風紀委員としてトラブルになりそうな場面を見過ごすわけにもいかないので、されるがままとなっている。無那もまた、すぐに止めれるようにCADに指を掛けている。(変化するのは戦闘中なので移動中とかは元に戻っている)

 

 

「これはなかなかの好カードね」

 

「2人を知ってるのか、エリカ?」

 

「面識は無いけどね。あの女の子は、壬生紗耶香。一昨年の中等部剣道大会の全国2位。あっちの男の子が、桐原武明。一昨年の関東剣術大会のチャンピオン」

 

「随分と詳しいな、エリカ」

 

「そう? ちょっと剣道とかに興味ある人だったら、普通に知ってる人たちよ」

 

 

エリカが解説している間にも状況は進行しており、桐原が竹刀を上段に構えて壬生に相対した。桐原は紗耶香との距離を一気に詰め、怒濤の攻撃を彼女に浴びせた。しかし紗耶香は見事な竹刀捌きで、桐原の攻撃をいなしていた。

闘技場に響き渡る竹刀を打ち合う音に、ギャラリーは息を呑んで見守っている。

 

打ち合い続いてゆくと桐原の顔はどんどん険しくなっていく。対する紗耶香は、未だに平然とした表情でしっかりと桐原を見据えている。

やがて痺れを切らしたのか、桐原が大振りに竹刀を振り上げ、紗耶香へと全速力で迫っていった。しかし彼女は、それでも表情を崩さずに彼を迎え撃つ。

一際大きな音が響き渡り、2人の動きが同時に止まった。

紗耶香の竹刀は、完全に桐原の右肩を捉えていた。対する桐原の竹刀も彼女の腕に触れていたが、その角度は浅い。

 

 

「壬生先輩の勝ちね」

 

「ああ。完全に相打ちのタイミングだったが、桐原先輩は途中で剣先を変えた。やはり最初から面を打つ気は無かったようだ。非情になりきれなかったのが敗因だな」

 

 

二科生の多い剣道部が、一科生の多い剣術部に勝った。この事実は、周りでこの試合を見ていた一科生を不機嫌にさせるのには充分だったようだ。

 

「桐原くん、素直に負けを認めなさい。真剣だったら、その右腕はもう使い物にならないわよ」

 

「……はは、“真剣なら”だと?」

 

 

 それまで俯いていた桐原が、紗耶香の言葉を皮切りに不気味な声で笑い出した。

 

 

「俺の体は斬れてないぜぇ? なんだ壬生、真剣勝負がお望みかぁ……」

 

 

桐原は小手の形をしたCADに触れると、起動式を展開した。

 

次の瞬間、魔法特有のサイオンの光が彼の持つ竹刀を覆い、それと同時にガラスを引っ掻いたような甲高い音が辺りに鳴り響いた。あまりの不快感に、ギャラリー達は一斉に耳を塞いで蹲る。

 

 

「お望み通り、真剣で勝負してやるよ!」

 

 

叫んで迫ってくる桐原を、紗耶香は先程と同じように竹刀を構えて迎え撃とうとした。しかし直前で何かを察したのか、大きく後ろへ跳んで彼の竹刀を回避した。

しかし、無常にも着地した瞬間、彼女の着ていた胴衣が胸の辺りで横一文字に切れ、はらりと下に垂れた。あと少し回避するのが遅れていたら、と思い彼女の顔が青くなる。

 

(竹刀なのにあの切れ味、そしてこの音……。振動系・接近戦闘用魔法の“高周波ブレード”か!)

 

達也が桐原の使う魔法を見極めている間にも、桐原は不敵な笑みを浮かべて紗耶香へと迫る。

 

 

 

「どうだ、壬生。これが“真剣”だ。そしてこれが、剣道と剣術の差だ!」

 

 

 

 桐原の言う通り、もはや真剣と変わらないその竹刀を彼は大振りに振り上げ、今まさに紗耶香へ振り下ろそうとしていた。闘技場の緊張感が一気に高まり、女子生徒が思わず悲鳴をあげる。

しかし次の瞬間、

 

 

 

ターーン!

 

 

 

銃声が響く。すると振り下ろされた竹刀が壬生に届く直前、結界のようなもの(テトラカーン)が出現し、竹刀が弾かれたかのように吹き飛ぶ。

 

バッと達也が無那の方を見るとCADのみ姿が変わり、硝煙を上げていた。

 

(守ったのか!ありがたい!)

 

 

「桐原先輩、魔法の不正使用により同行を願います」

 

 

 達也が桐原へそう呼び掛けると、彼は未だに先程の光景が信じられないのか、呆然とした表情で「お、おう……」と言葉少なく了承の返事をした。

 

むしろ彼の後ろにいた剣術部員の生徒達の方が、達也に対する反応が大きかった。

 

 

「あの腕章、もしかして風紀委員か!」

 

「いや、それよりもあいつのエンブレムを見てみろよ! まさか……二科生の風紀委員だと!」

 

「なんで桐原だけ同行なんだよ! 剣道部の壬生だって同罪だろ!」

 

 

部員の1人の言葉に、達也は桐原へと向けていたその顔を彼らへ移し、

 

 

「『魔法の不正使用により』……と、申し上げましたが」

 

「……何だぁ、その言い方は!」

 

 

 結果的に彼らの神経を逆撫でしてしまった達也の返事に、「悪気は無いんだろうけどなぁ……」とエリカが呆れたように呟いた。

 

 

「ふざけんじゃねぇぞ、補欠の分際で!」

 

 

すると周りにいた剣術部の部員達が、一斉に達也へと襲い掛かってきた。実際に桐原の邪魔をしたのは無那なのだが、誰1人として彼女に挑もうとはせず、怒号にも似た叫び声をあげながら二科生である達也に向かっていく。

その数は、10人ほどか。

 

達也は彼らの動きをよく読み、まるで闘牛士のようにヒラリと彼らの拳を避け続けた。軽やかなステップで距離を取り、クルリと体を回転させて相手との位置取りを変化させ、逆に不意に相手との距離を詰めることで怯ませる。

そんな彼の姿に剣術部員はますます頭に血を上らせ、形振り構わず達也に突っ込んでいく。そしてそれを達也に避けられ、それでも勢いが止まらない彼らは、互いに体を衝突させてその場に崩れ落ちていく。

 

気がついたときには、10人ほどいた剣術部員全員が、床に倒れ伏したまま息も絶え絶えになっていた。そしてそれを見下ろす達也は、息が上がるどころか汗1つ掻いていなかった。

 

 

「おー、すごい」

 

 

そんな声を上げたのは無那だ。いつの間にかその手には剣が握られていた。達也がやらなければ無那が彼らを切るか何かやったのだろう。

 

達也はため息をつきながら後始末を始めた。

 

 

◆◆◆◆

 

 

「――以上が、剣道部の新歓演舞中に剣術部が乱入した事件の顛末です」

 

 

闘技場での騒ぎから2時間ほど後。達也と無那は部活連の本部として使われている広い部屋にいた。数十人は座れるようにテーブルや椅子が用意されているが、2人が立つ部屋の中央は椅子もテーブルも取り払われており、妙にだだっ広く感じるのが正直な印象だった。

そんな2人の報告を聞くのは、3人の生徒。

生徒会長である七草真由美、風紀委員長である渡辺摩利。

そして、部活連会頭である十文字克人だった。分厚い胸板に広い肩幅、制服越しでも分かる隆起した筋肉は、肉体だけでなく彼を構成するすべての要素が桁外れに濃い存在感を放つ、まるで巌のような人物である。

つまりこの部屋は、生徒自治の象徴である生徒会・風紀委員・部活連の長が揃い踏みとなっている。この3人は、第一高校で最も有名な生徒であると同時に校内随一の実力者ということで、“三巨頭”と呼ばれている。

 

 

「さすがといったところだな。ところで2人共、当初の経緯は見ていないんだな?」

 

 

 摩利の質問に、達也と無那が「はい」と答えた。

 

 

「最初に手を出さなかったのは、そのせいなのか?」

 

「“魔法を使った不正行為”を取り締まるのが、風紀委員の仕事ですので」

 

「確かに。それで、桐原は?」

 

「当人が非を認めており、報復の意思も感じられなかったので、それ以上の追及は必要無いと判断しました」

 

「ふむ。他の剣術部の部員についてはどうだ? 桐原を連行するとき、司波に襲い掛かろうとしたそうだが?」

 

「魔法は使っていませんし、特に被害も無いので問題無いと判断しております」

 

 

摩利の質問に、達也が淀みなくつらつらと答えていく。先程の説明もほとんど達也1人で済ませたし、彼女も彼女で達也の方だけを見て問い掛けている。

無那は説明能力がなかったため、そこにいるだけだ。

 

 

「そうか、分かった。聞いての通り、風紀委員は懲罰委員会に持ち込むつもりはないが……、どうだ?」

 

「寛大な決定に感謝する。殺傷ランクBの魔法をあんな所で使ったのだ、本来ならば停学処分もやむを得ないところだった。よく言い聞かせておく」

 

「分かった。ご苦労だったな、司波、死刈。十文字、今回の件、頼んだぞ」

 

「委員長、では失礼してもいいですか?」

 

「いや、もう一度確認したい」

 

「魔法を使ったのは桐原だけか?」

 

「はい」

 

「そうか。分かった。ありがとう」

 

 

 

 

 




また長くなった。こんな予定じゃなかったのに。
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