魔法科高校の刈り取るもの   作:ぶどうのプレッツェル

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一悶着

 

 

 

入学式の翌日

達也と深雪は朝早くに起きて、進学の報告のために九重寺に来ていた。

 

この日も日課である体術の稽古を終えた彼らだが、今日の達也たちはそれ以外に重要な用事があった。

 

「へぇ、まさか入学初日で彼女と顔見知りになるとは、さすがは達也くんといったところかな? 」

 

「彼女のことを知っているんですか?」

 

 

彼女とは昨日出会った言葉を何度も区切ったたどたどしいとはまた違う喋り方をする死刈無那のことだった。

何故気になるのかというと、

 

 

(彼女を"精霊の眼(エレメンタル・サイト)"で視たときあまりにも異質だった。一般の家庭からあんなにも多くの想子(サイオン)を保有する人物が生まれるとは考えにくい)

 

 

さらに言えば四を思わせる苗字から四葉との関連性を疑っているのだった。

 

 

「彼女は古式魔法師たちの間では有名でね。これまで大した力を持たず、位としては下の方だった死刈家から突如生まれた麒麟児なのさ。彼女が生まれたときから持つBS魔法は強力無比、さらに古式魔法を色々と習得し使えるよ。とはいっても一科生になれるとは思わなかったな」

 

「?それはどうしてです?」

 

「彼女、魔法発動が古式魔法師たちの間の中でも遅いんだ。今の基準だと二科生になると思ったんだけどな」

 

「そんなに遅いんですか」

 

「そう、古式魔法を使うのに通常の古式魔法師の倍の時間かかるといえば分かるかな。それと彼女、現代魔法が苦手なんだ。さらに遅くなる。その反面、彼女がBS魔法を使うときは一動作だけで済むらしいけど細かいことは分かってないんだよね」

 

「いえ、色々ありがとうございました」

 

 

◆◆◆◆

 

 

登校した達也と深雪は棟が分かれているため、そこで分かれた。

 

 

「おや、深雪さん、おはよ、う」

 

「あ、死刈さんおはようございます」

 

 

教室で出会った死刈に深雪はわずかに表情を強張らせる。八雲師匠のいうとおりなら本来二科生に落ちてもおかしくない人物。それでも一科生になったということは情報にない彼女のBS魔法がそれを埋めているということ。

兄が不利益を被らないように思い、のんびりと話す。

 

入学式の日は式の終了後に帰る生徒も多かったため、授業初日である今日が実質的な初顔合わせとも言える。

そして他の生徒に比べて一際気合いの入った女子生徒が1人いた。

体を縮こまらせて不安で顔を歪めるのは、光井ほのか。そしてそんな彼女を感情の乏しい表情で見つめる幼馴染、北山雫。2人共可愛らしい顔立ちをした可憐な少女であるが、それぞれ入試での実技の成績が全体で3位と4位という一科生の中でも特に優等生である。

そんな2人が、というよりほのかが話し掛けようとしているのは、今日から同じクラスで共に魔法を学ぶことになる、入試成績で1位に君臨する司波深雪だ。

 

そんな彼女と、少しでも仲良くなりたい。そんな想いを抱いたほのかは、どのように自己紹介をしようか昨日の夜からずっと考え続けていた。

 

そうして、ほのかは心の中でようやく決心すると、2人に向かって大きく1歩足を踏み出した。

 

「あ、あの私、光井ほのかっていいます。よろしくお願いします!」

 

「光井さんですね? 司波深雪です、よろしくお願いします」

 

「私、死刈無那。よろしく」

 

「は、はい!」

 

「私は北山雫、よろしくね」

 

「よろ、しく」

 

 

二人はなんとか自己紹介を終える。

 

 

「あ、あなた、実技のときに一緒だった」

 

「そうなんだ。仲良くして、ね」

 

「うん。魔法カッコよかったから憶えてた」

 

「そうなんだ」

 

 

そんな所でチャイムが鳴る。

そして時間は昼食時まで飛ぶ。

 

 

◆◆◆◆

 

 

達也たちが昼食を半分ほど食べた頃、クラスメイトに囲まれた深雪が食堂にやって来て達也に駆け寄ったのだ。

 

そこで深雪のクラスメイトは深雪との相席を狙っていたこともあり、特に男子生徒が席を空けるように強要したのだった。

傲慢な態度にキレかけていたが、そのとき、

 

 

ズッ!!

 

 

一瞬男子生徒に向けられ放たれた威圧が男子生徒たちを萎縮し、この場はお開きとなった。

 

 

「いまのは……」

 

 

◆◆◆◆

 

 

そしてさらに放課後にまで時間が飛ぶ。

 

深雪と無那、そしてほのかと雫が校門にやって来るのを待っていた達也たちに対し、4人の後ろをゾロゾロとついてきた一科生の面々が難癖をつけてきたのだ。

 

そこで美月がキレ、反論して一触即発の状態になっていたということだ。

 

 

「どれだけ優れているか知りたいなら教えてやるよ!」

 

 

そう叫びながら取り出したのは、術式補助演算機(通称CAD)と呼ばれるもので、所謂“杖”の役割を果たす機械である。拳銃のような形をしたそれをホルスターから抜く彼の動作は、慣れを感じさせる。

 

しかし、

 

 

「あら、この間合いなら身体を動かした方が速いわ」

 

 

そうエリカが言い、取り出した警棒でCADを弾き飛ばした。

 

しかし、さらに別の生徒が怒りに任せて、汎用型CADを起動しようと…

 

 

ズッ!!

 

 

「おまえ、それは看、過出来ない」

 

 

突如としてその場に満ちる威圧感。それをなしたのは、今まで静観していた死刈無那だった。

一瞬、死刈無那の姿が赤いコートを纏った姿に変わる。

その絶対的な存在感により、全員が動きを止める。

 

 

「火遊びは、そこまで」

 

 

CADを起動させようとしていた生徒が顔を青くして、その手を止める。

 

 

「止めなさい!自衛以外の魔法による対人攻撃は犯罪行為ですよ!」

 

 

警告を発したのは駆けつけてきた生徒会長だった。しかし、すでに魔法の気配は消えていたためキョロキョロとしている。

 

そこで達也が、

 

 

「すみません、悪ふざけが過ぎました」

 

「悪ふざけ?」

 

 

そう問うたのは風紀委員長、渡辺摩利。

 

「はい、森崎一門のクイックドロウは有名なので見せてもらおうかと」

 

「そうか、それはそれとしてもだ。森崎駿、本部に来い。詳しく話を聞かせてもらおうか。場合によっては懲罰委員会への出頭も覚悟しておけ」

 

「そ、そんな……」

 

 

 森崎はそれを聞いて絶望を顕わにして、その場に膝から崩れ落ちた。ある意味被害者である二科生や彼らの味方である深雪達はそれに対して、むしろ当然の措置だろうな、と同情的な意見を持つものは1人もいなかった。

 

 

「まあ、今回は発動前だったから不問にしてやる。二度目はないと思え」

 

「あ、ありがとうございます!」

 

 

一科生たちはこそこそと帰っていく。残ったのは達也たち二科生と深雪、ほのか、雫、無那、七草真由美、渡辺摩利であった。

 

 

「さて、死刈無那だったか?明日時間あるか?さっきのものについて聞きたい」

 

「分かっ、た。大丈夫」

 

「あ、それと達也くんも司波深雪のお兄さんだし、一緒に生徒会室で昼食をいかがかしら?」

 

 

なぜ目をつけたのか分からないが、面倒をなくすため承諾する。

 

 

「じゃあ、よろしくね」

 

 

 

 

 

 

 

 

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