新入生勧誘週間が終わった。
この一週間は激動の日々だった。
達也が剣術部の次期エースを倒したというのは中途半端に魔法選民主義に染まった者たちを怒らせた。
そこには無那が壬生先輩を守ったという事実が消えてしまっていた。一度しか魔法を使ってなく、達也しか無那が魔法を使ったというのは把握していないせいだろうが。
それゆえに、達也に的外れな報復がたびたび行われた。
無那が時折同行してくれたため、その時には報復は行われなかったが。
無那はこの期間でその実力を広く知らしめていた。
姿が変わり、他者に根源的恐怖を抱かせる。それだけで騒ぎを起こしていた者たちは動きを止める。無那が止めれば、粛々と従う。
風紀委員にとって実力行使をせずに取り締まれる無那の存在は歓迎されるものだった。
◆◆◆◆
まったく、この一週間ずっと騒ぎが起き続けた。いや、とくに疲労しているわけではないが、刈り取るものの力を出して近づけばすぐに怯えておとなしくなったからな。
達也に変なあだ名がついていた。苦虫を噛み潰したような顔をしていたがデバイスの携帯制限も復活したことだし、変なあだ名もじきに収まるだろう。
そういえば、生徒会室で昼食を食べるのが恒例になった。
渡辺摩利と深雪に続いて七草真由美もお弁当を作ってくるようになった。
私はまちまちだ。お弁当の時もあればダイニングサーバーを使うこともある。
「達也、昨日、二年の壬生を言葉責めにしたのは本当か?」
おや、そんなことがあったのか。それにしても委員長が『面白そう』と考えてる顔してるな、私も興味があるが。
「そんな事実はありません」
「そうか?壬生が顔を真っ赤にしていたと聞いているが」
「お兄様?何をされていらしたのですか?」
部屋の温度が物理的に下がってるな。刈り取るものに温度変化は意味ないから寒いと思わないが他の者たちにはつらいだろう。
「深雪、落ち着いてくれ。ちゃんと説明する」
その後達也は壬生先輩との会話を再現して話してくれた。
「それで壬生先輩の言っていたようなことは事実なのですか?そのような所は見たことがないのですが」
「壬生の思い込みだ。風紀委員は名誉職だ。メリットなんてほとんどない」
「けど、校内で高い権力があるのは事実よ。風紀委員が権力を盾にする走句に見られることがあるの。もっともそう見えるように印象操作をしている者がいるの」
「それは誰ですか?」
「分からないの。噂の出所なんて突き止めるのは簡単じゃないの」
「いえ、俺が聞いているのは噂の出所ではなく、背後で操っている連中の正体なのですが……そう、『ブランシュ』のような」
なんだそれ?組織か何かか?
「何?それ?」
「死刈は知らないのか。『ブランシュ』とは反魔法国際政治団体だ。現行の行政システムを批判し、魔法による差別を根絶することを目的にしている。俺が会ったのはその下部組織の『エガリテ』のマークである青と赤のラインでふちどられた白い帯のリストバンドをつけた生徒です」
「そう、なんだ。ねえ、その人たちが、テロなんて起こしたら、その人たち、殺していい?」
「!!」
無那が突如として見せた冷徹さ。人殺しをなんとも思ってないような質問。達也たちは無那が大義名分があれば容易に人を殺せることを認識した。
「死刈、それはダメだ。罪を明らかにするためにも殺してはならない」
「分かった」
残念。しかし、刈り取るものとしての側面なのか人殺しをなんとも思わないのはヤバいな。叫び声かを聞きたいなんて思ったときには末期だな。
「んん、達也、返事はどうするんだ?」
「待っているのは俺ですから、聞いてから決めます。放っておけないと分かりましたから」
「できる範囲でいい。頼んだぞ」
「はい、できる範囲のことはします」
◆◆◆◆
「ねぇ深雪、参考にさどれくらいのタイムなのか見せてくれない?」
実習があり、エリカが居残りを終わらせ、雑談していたとき、そんな提案が出てきた。
「いいんじゃないか?」
「お兄様がそう言うなら」
深雪の記録は235msだった。
「すげぇ…」
「何回聞いてもすごいよね」
「人の限界に近いね」
全員がため息をもらしている。
「ねぇ、死刈さんはどんなの?」
「私?遅いよ?」
「あ、無那さんは…」
深雪が言い淀む。
「どうしたの?」
「見せたほうが、早い」
無那が計測用のCADに手を触れる。
「は!?5000ms!?遅すぎだろ」
「だから、発動速度だけは、落ちこぼれ」
「他の二つは凄まじいんですけどね」
◆◆◆◆
達也が壬生先輩と会ったらしい。あとは何事もなく一週間過ぎた。
授業終わったし、帰ろうかな。
『全校生徒の皆さん!僕たちは、校内の差別を撤廃を目指す有志同盟です。僕たちは生徒会と部活連に対等での交渉を求めます』
む、占拠したのか。まったく変なことをして、委員会から呼び出されるかな。
「無那さん、呼び出しがかかりました。放送室前に行くようにと」
「分かった」
放送室前に行くと風紀委員会と部活連の実行部隊がいた。
「遅いぞ」
「ごめんなさい」
形だけの叱責と謝罪をする。
その横では達也が十文字会頭と鈴音さんと話してる。
「さて、どうするか」
「ドア、壊す?」
「いや、やめておいた方がいい。相手がどんな反応をするのか分からんからな」
「そう」
そんなこと話してると放送室のドアが開いた。達也が開けさせたのか。
「よし、拘束するぞ」
「了解」
どうしようか。まあ、スリープソングでいいか。
「はあ!?だましたな!」
パーーン!
「この…Zzz」
「さあおとなしく…寝てる。……死刈に感謝だな。おまえらとっとと拘束しろ!」
結構簡単に終わったな。後日に討論会が行われることになったし気をつけといた方がいいかな。