転生99回目のエルフと転生1回目の少女は、のんびり暮らしたい!ーそれでも世界はのんびりを許さない   作:daisukenote3397

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第13話

 

ここは、ノーザリア国の城下町。

 

城を出て宿屋に落ち着いたオルガたちは、広間に集まっていた。

暖炉の火がバチバチと音を立てて燃えている。皆、何も話さず静寂に包まれていた。

 

沈黙を破ったのは、ゴブローだ。

「それで......何があった? 教えてくれ」

ゴブローはアイリスとエリーゼを見る。

「フィーネとリリィと私は、ノーザリア国王に戦争を止めるように進言しましたにゃ。でも、聞き入れてもらえなかった」

「頭の固い国王だな」

スザクが言う。

「交渉が決裂して、大臣のバロールが現れたにゃ」

「バロールが......!」

オルガが絶句する。その場の皆が

固唾を飲んで話を聞く。

「バロールが片目の眼帯を外すと、そこには黒い穴が開いていて、フィーネとリリィはそこに吸い込まれましたにゃ。私は気づかれないように猫になって逃げましたにゃ」

「フィーネとリリィが......吸い込まれた!?」

ホウオウが驚く。

「恐らく、バロールの精神世界に二人は幽閉されたんだろう」

イブが言う。

「精神世界ってなんだ?」

ハクが訊ねた。

「バロールの精神世界。言ってみればバロールの心の中に二人は閉じ込められているのです。そこは何があるか分からない。長く閉じ込められるとフィーネとリリィの精神を侵食する......」

アイリスが真面目な顔で言う。

「とにかく早く助けないと!」

オルガが焦りの色を見せる。

「簡単には行かないだろうな。」

ミカが腕組みをしながら言った。

 

すると、外が騒がしくなってきた。

宿屋の外で慌ただしく人が動いている。

「戦争だ! 戦争が始まるぞ!」

「イストリア軍が攻め込んできた!」

「皆んな、家に隠れるんだ!」

 

「ついに、来たな」

イブがつぶやく。

 

「まだ間に合う。最前線に行って、軍を止めよう!」

オルガが言って、立ち上がる。

「よし!行こう!」

ホウオウとスザクも立ち上がった。

 

オルガたちは、城下町を出て雪原の最前線に向かう。

大勢のノーザリア軍の兵士たち。その一番前にバロールがいるはずだ。

 

 

 

 

その頃。

 

三司祭バロールの精神世界。

 

「......う、ん......ここは?」

フィーネは目を覚ました。

辺りを見回すと一面の荒野が広がっている。茶色い土に覆われ、ひび割れている。草木は一本も生えていない。空は厚い雲に覆われていて、薄らと明るいが太陽は見えない。

「リリィは、どこ?」

周りには人っ子一人いない。

「リリィ! どこにいるの? 返事をして!」

フィーネの声だけが響く。返事は無い。

 

フィーネは歩き出した。

(探して......)

頭の中にあの声が響く。

「言われなくても探すわよ。リリィは絶対に」

フィーネは足を進める。

 

しばらく歩くと、巨大な影が見えた。

「......あれは......また、厄介ね」

その影はゲンブだ。

「......エルフ......殺す......殺す」

ゲンブは正気を失っている。

 

「倒すしか無さそうね」

フィーネは疾風の如く素早い動きで拳と足蹴りを繰り出す。

「ぐっ! 兄貴、力を......!」

足首を執拗に狙われて、ゲンブは膝をついた。

「ライトニングソード」

光の刃をフィーネは無慈悲にゲンブの首に振り下ろす。

首を斬られたゲンブはそのまま消えた。

 

 

 

 

一方。

 

「ん、う......ん......」

リリィが目を覚ます。

「ここは?」

周りは見渡す限りの荒野。ふと横を見ると、なぜか美しい黒猫がいる。

 

「お前も一人なの?」

リリィはそう言って立ち上がった。

......以前にこんなことがあったような......? 不思議な感覚に襲われていた。

 

リリィは行く当てもなく歩き出した。

黒猫もついてくる。

 

ひたすらに真っ直ぐに歩く。

すると人影のようなものが見えた。

 

(リリィ......リリィ......)

頭の中に声がする。

 

黒い影、真っ赤な瞳。ブレザーの制服を着た少女。

「貴女は......百合?」

リリィの前世の少女、百合。どす黒いオーラを纏った彼女は、世の中の全てに悪意を向けている。

「憎い! みんな大っ嫌い!」

すると、黒猫がスーッと前に出て、見る見るうちに人の姿に変わった。

その姿もまた百合そのものだった。ただ、優しい瞳、優しい表情。薄らと白い光を纏っている。

「リリィ、私と来て」

もう一人の百合がリリィに言う。

 

「百合が二人......」

リリィは戸惑っている。憎悪の塊の百合、優しい百合。どちらも本当の百合だ。

 

「リリィ、私を選びなさい!」

「リリィ、私を選んで」

二人のゆりが選択を迫る。

 

「そんな......私、選べないよ......」

リリィはうつむいた。しかし、

 

二人の百合を一緒に抱きしめ、リリィは言った。

「どちらの百合も私。どっちかなんて選べないよ。みんなで一緒に生きよう?」

「ありがとう、リリィ......」

ふたりの百合は消えていった。

 

残されたリリィは涙を流していた。

 

リリィは涙を拭う。

「フィーネを探さなきゃ」

また、荒野を歩き出した。

 

 

 

 

ノーザリアの雪原。

 

「ノーザリアの精鋭よ! 今こそ戦いの時だ!」

バロールが声を上げる。

「うおーっ!」

兵士たちが一斉に雄叫びをあげた。

その目の前には、数万のイストリア兵が迫っている。

 

戦争は避けられない情勢だった。

 

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