転生99回目のエルフと転生1回目の少女は、のんびり暮らしたい!ーそれでも世界はのんびりを許さない 作:daisukenote3397
ここはエルドランド王国。
国王はもう数か月もの間、病に臥せっていた。
「国王陛下、お呼びですか?」
大臣が国王の寝室に呼ばれた。
「大臣よ。私の話をよく聞くのだ。知っての通り、私は妻と子に先立たれ跡取りが居ない。私にもしものことがあれば、エルドランドは国王が居なくなってしまう……」
国王が咳き込む。
「陛下、そんな気弱なことをおっしゃらないでください。必ず病は治ります」
大臣は語気を強めて言う。
「大臣よ、自分の身体のことは分かる。私はもう長くはないだろう。今まで隠していたが、実は私には隠し子が一人いるのだ。訳あって母娘ともども国を追い出してしまったが、今もどこかで生きているはずじゃ。その娘を探せ」
大臣は初めて耳にする事実に驚いて聞いた。
「......畏まりました。娘について特徴などを教えて頂けますか?」
「歳は12歳。髪の毛は赤毛。名前はリリィじゃ」
「国王陛下、畏まりました。すぐに探させます」
「頼んだぞ」
こうして、大規模なエルドランドの王女捜索が始まったのである。
一方、ウエスの森の丸太小屋。
フィーネたちはノーザリアの紛争を解決し、もとののんびり生活に戻っていた。
「待つキー!」
「待てキキ―!」
「にゃー!(猫)」
今日も、モック、ドンキー、エリーゼは追いかけっこをしている。
「平和だねー」
リリィはロッキングチェアに座って紅茶を飲んでいる。
その隣ではフィーネとイブ、ミカエルが昼寝をしている。
リビングではスザクとホウオウ、ハクが午後のティータイムを楽しんでいた。
ウエスの森の木々が騒めく……
この世界のどこかに存在する三司祭の一人アズラエルのアジト。
アズラエルは戦の準備を念入りにしていた。
「間もなくだ……風が吹く」
アズラエルの脳裏にぼんやりとした映像が現れた。
美しい田園風景、それが一瞬で火の海に変わる。アズラエルの目の前に長髪の女性が現れる。手を伸ばし肩に触れると女性は振り返るが、その顔はボヤけていてわからない。
「まただ、一体何なのだ……」
アズラエルは、時折脳裏に現れるこの記憶の断片に悩まされていた。
「そんなことよりも、戦いの備えだ。機は熟している……」
白い仮面から覗く瞳はどこか憂いを帯びているように見えた。
ウエスの森の丸太小屋。
「百合……百合……」
リリィは誰かの呼ぶ声で目が覚めた。
「誰?」
リリィは振り返る。すると、そこには背の高い30代くらいの男性が立っている。スーツ姿で笑う男性。
「……お父さん?」
それはリリィの前世である百合の父親だった。学校でいじめを受けていた百合と百合の父親の関係は最悪だった。リリィの忘れたい記憶がよみがえる。
「お父さん、今頃出てきて何がしたいの? お父さんは私に何もしてくれなかった。いつも仕事ばっかりで、私の話を聞いてくれなかった!」
リリィの目から涙が溢れる。
「お父さんなんて大っ嫌い! どっか行って!」
リリィが叫ぶ。
「……リリィ! リリィ! 大丈夫?」
リリィはハッとして正気に戻った。エリーゼが心配そうな顔で見ている。
「うん……大丈夫。エリーゼ、ごめんね」
リリィは涙を拭った。
「どうしたのかにゃ? 夢でもみてたのかにゃ。」
「うん、ちょっと考え事……」
「フィーネも帰ってきてから様子がおかしいにゃ。心配にゃ」
「フィーネも?」
リリィはフィーネの方を見た。穏やかな顔で眠っている。
気になって、リリィは過去の幻覚のことをアイリスに相談してみた。
「過去の転生の記憶が見える……それはバロールの精神世界に閉じ込められた影響かもしれませんわね」
「精神世界の影響……」
「時間と共に収まると思いますけど、しばらくは気を付けた方が良いですわ。過去に囚われてしまわないように」
「わかった。アイリス、ありがとう」
リリィは憂鬱な気分だった。
一方、エルドランド王国の王女捜索隊はウエス国にも来ていた。
「赤髪の12~13歳くらいの少女を知らないか?」
通りがかりの住人に訊ねる。
「赤髪の少女? フィーネさんのところのリリィちゃんかね?」
「その娘はどこにいる?」
「森の奥の丸太小屋に住んでるよ」
「情報に感謝する」
捜索隊はウエスの森に入って行く。
森の木々がざわついた。
エルドランド王国の捜索隊が間近に迫っていることをリリィはまだ知らない。
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リリィ
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バロール
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