転生99回目のエルフと転生1回目の少女は、のんびり暮らしたい!ーそれでも世界はのんびりを許さない 作:daisukenote3397
ここはエルドランド城。
「大臣殿。魔王城遺跡周辺の動きが慌ただしくなっているようです。魔物がエルドランドに攻め寄せて来るのも時間の問題......」
男は、大臣に向かって必死に話している。
「我が軍の準備は進んでいる。心配はない」
大臣は答える。
「国王陛下は病に倒れられています。この状況では、軍の士気も上がりません」
男が続けて話す。
「万が一の時にはリリィ様がいる。大丈夫だ」
大臣が言うと、
「あの小娘......失礼。王女様には荷が重いかと......」
男の本音が漏れる。
「私が全力でお支えする。問題無い」
大臣は言い切った。
「承知しました。失礼します」
男ー副大臣ーは、大臣の執務室を後にした。苦々しく歯軋りをしている。
「計画を速めなければ......」
副大臣は立ち去った。
副大臣の部屋。
椅子に座り腕組みしている。
「あの方にご報告せねば......」
副大臣の目の前に魔法陣が現れる。
その中央から現れたのは、アズラエル。
白い仮面の男は、副大臣に鋭い目つきで話し出す。
「計画の進捗は?」
「じ、順調でございます。アズラエル様」
「速くリリィを連れて来い」
「分かっております。今しばらくお時間を......」
「間も無くエルフとその家族が来る。急ぐのだ」
「......畏まりました」
アズラエルは音も無く消えた。
副大臣の顔には焦りの色が見える。
同じ頃。
国王の容体が急変した。
知らせを受けたリリィが、国王の寝室に駆けつける。
「お父さん!」
リリィの呼び掛けに国王は優しい笑顔を向ける。
「リリィ。私はもう長くは無い。あの時の返事を聞かせてくれぬか?」
リリィの顔が覚悟の表情に変わった。
「お父さん、私、あれからいっぱい考えたの......それでね。決めた。」
リリィは国王の手を握る。
「私、女王になる。」
リリィはまっすぐに国王を見つめる。
「そうか、リリィ、我が娘よ。ありがとう」
国王はリリィを抱きしめた。
「お前には父親らしい事が何も出来なかった。しかも一度はお前を捨てた。許してくれ」
国王の目に涙が浮かぶ。
「お父さん、私、もう憎んで無い」
「ありがとう。リリィ」
国王の目から涙が溢れた。
「ローズ......許してくれ」
国王はそう言うと意識を失った。
「お父さん!」
リリィは国王から引き離され、代わりに医者が容体を確認する。
「国王陛下は、かなり衰弱されています。恐らくは今夜がヤマかと......」
「そんな......!」
リリィは、国王の側にずっと付き添った。
翌朝。
国王の手を握っていたリリィが話しかける。
「お父さん。私を呼んでくれて、ありがとう。最後に沢山お話しできて嬉しかったよ」
国王の返事は無い。しかし、目から一筋の涙が溢れた。そして、国王は、そのまま息を引き取った。
エルドランド国王崩御、リリィ女王即位の知らせは、すぐに世界中を駆け巡った。
その頃。
フィーネたち一行がエルドランドの城下町に到着した。
「エルドランド......大きな街だな」
オルガが言う。
「流石、世界一の街だ。人も物も多いな」
ゴブローが周りを見回す。
「まさか、また戻って来るとは思わなかったな」
ミカエルがつぶやく。
「新女王の即位と戦争準備で城は大混乱らしいぞ」
イブが言う。
「リリィ、大丈夫かにゃ?」
エリーゼが心配そうに言う。
「リリィなら、きっと上手くやってるさ」
ハクが腕組みしながら言う。
馬車は大通りを抜け、城に向かった。
フィーネたちは城に着くと、早速、王の間に通された。
「女王陛下、フィーネとその家族。ただいま参りました」
フィーネたちは一斉に頭を下げる。
「フィーネ。堅苦しいのは抜きで、いつも通りでいいよ」
玉座に座るリリィが立ち上がりフィーネに近づいていく。
「フィーネ、会いたかった!」
リリィがフィーネに抱きつく。
フィーネはリリィの頭を撫でた。
「立派になったね。リリィ」
「ありがとう、フィーネ」
他の家族とも言葉を交わし、玉座に戻る。
「ここからは私からお話しします」
大臣が話始める。
「魔王城の跡地に魔物が集結しています。それを指揮するのは三司祭の一人アズラエル。」
「アズラエル......!」
フィーネがつぶやく。
「アズラエルの要求は、リリィ女王とフィーネ殿の身柄の引き渡しです」
「リリィとフィーネを渡せって言うのか?ふざけるな」
ゴブローがいきり立つ。
「そして、城の中にもリリィ様を狙う輩がいるようです」
「城内にも敵が......?」
エリーゼが言う。
「皆様には、城を自由に出入り出来る許可を与えます。どうか、女王陛下をお守りください」
大臣が頭を下げた。
「分かりました。全力で女王陛下をお守りします」
フィーネが言う。
「よろしくお願い致します」
大臣は深々と頭を下げた。
「フィーネ、気をつけて」
リリィが真剣な顔でフィーネに言った。
魔王城跡地。
「エルフがエルドランドに着いたか。役者は揃ったな」
アズラエルがつぶやく。
頭の中に、振り返る少女の幻覚が過ぎる。
「リリィ、フィーネ。必ず手に入れる。待っていろ」
アズラエルの瞳は狂気と悲しみを帯びていた。
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