転生99回目のエルフと転生1回目の少女は、のんびり暮らしたい!ーそれでも世界はのんびりを許さない 作:daisukenote3397
ウエスの森の丸太小屋。
ブンッ!
バキッ!
今日もオルガは薪割りをしている。その近くでは、リリィがハチとジャレあっていた。
「精が出るな」
声が聞こえて、オルガは手を止める。振り返るとミカが立っていた。
「そろそろ休憩しようと思っていたところだよ」
オルガがミカに言った。その瞳は赤く濁っている。
「ミカ!手伝いに来てくれたの?」
ハチと遊んでいるリリィがミカの方を向いて話した。
ワン!ワン!
人懐っこいハチは、魔王であるミカにも怯むことなく尻尾を振って近寄ってくる。
「なんだ?わらわは魔王だぞ」
ハチには魔王も人間も関係ないようだ。ミカの足元にまとわり付く。
ワン!ワン!
ハチに懐かれて、ミカも悪い気はしないようだ。ハチを両手で抱き上げた。
「お前は物怖じをしないな」
ミカは、妙な違和感を感じた。直感が、この犬から離れろと訴えている。
ミカがハチと目を合わせた瞬間、ハチの瞳に吸い込まれるような感覚に襲われた。
「きゃははは!」
聞き覚えのある甲高い笑い声が頭の中に響く。ミカの真紅の瞳に濁りが現れ、表情が無くなった。
「どうした?ミカ」
オルガが問いかける。
「何でもない。」
ミカは呟いた。
リリィ、オルガ、ミカの三人は視線を交わす。お互いに何かを共有したようだった。
「待つにゃー」
「待つキキー」
「待たないキキー」
エリーゼとモック、ドンキーは元気に追いかけっこをしている。それを眺めながらフィーネとハクはロッキングチェアに揺られて紅茶を飲んでいた。
スザクとホウオウは町に戻りオルガの畑の世話をしている。
ゴブローはゴブリン村に帰っていた。
オルガとミカがたくさんの薪を持って丸太小屋に帰ってきた。リリィはハチを連れている。
「フィーネ。戻ったよ」
「お疲れ様、オルガ」
オルガとミカは、薪を小屋の裏側に運んだ。
禍々しい空気が丸太小屋を覆っていくことに、フィーネはまだ気付いていない。
「汗をかいたから風呂に入るよ」
オルガ、ミカ、リリィは露天風呂に向かった。
「ごゆっくり」
フィーネは微睡かけながらオルガたちに声をかける。
「さぁ、おいで。ハチ」
リリィはハチを抱きかかえて風呂に行く。
遊び疲れたエリーゼたちは、リビングで休んでいた。
一見、平和な日常。しかし、確実に不穏な気配がじわじわと浸透し始めていた。
夜。
ハク、エリーゼ、モック、ドンキーはテーブルに座って食事を待っている。フィーネはキッチンで魔法を使って料理を作る。
いつもの光景。
オルガ、リリィ、ミカの三人は外のウッドデッキで並んで座り、ウエスの森の方をジッとみていた。
リリィの膝の上にはハチの姿。
三人と一匹は、ただ黙って座っているように見えるが、時折、うなづいたりアイコンタクトを取ったりしている。
何か会話をしているようだ。
「きゃははは!今夜決行よ」
頭の中に声が響く。三人は小さくうなづいた。
「ご飯が出来たわよ!」
フィーネの声がする。
リリィたちは立ち上がり丸太小屋の中に入って行った。
食事中。
「今日も美味いぞ!フィーネ」
「本当においしいですにゃ」
ハクとエリーゼは笑顔で食べている。
リリィ、オルガ、ミカは無表情で黙々と食べる。
「美味しい?オルガ」
フィーネの問いかけにも返事が無い。視線は一点を見つめ、だだ黙って作業のように手と口を動かしている。
「三人とも疲れているのね。無理はしないで」
フィーネが話しかけるが、反応がない。
「どうしたのかにゃ?三人とも」
エリーゼが心配そうな顔をする。
「飯は笑って食べた方が美味しいぞ」
ハクは既に完食して食後の紅茶を楽しんでいる。
「オルガもリリィもミカも、今日は早く寝た方が良いわ」
フィーネが三人の体を心配して言う。
「......ありがとう......そうするよ。」
そう言うと、オルガは立ち上がり寝室に向かった。リリィとミカもそれぞれの寝室に行く。
「今日は三人とも変だにゃ」
エリーゼが言う。
「そうね、どうしたのかしら?」
フィーネも三人の様子に戸惑っていた。
ハチがフィーネの足元に来て丸くなる。
ウエスの森の木々が、ザワザワと音を立てた。
深夜。
フィーネの横で眠っているオルガが目を覚まして、音を立てずに部屋を出ていった。
同じ頃。ミカとリリィも目を覚ましてリビングに降りてきた。
オルガ、リリィ、ミカの三人はテーブルを囲んで座る。テーブルの上には、ハチがいる。
ハチが三人を見回し、それぞれと目を合わす。
「決行だ」
オルガがつぶやく。そして、三人と一匹は丸太小屋の外に出た。
森の縁まで離れ、丸太小屋の方を振り返る。
リリィとミカが両手を上げ、丸太小屋の方向に狙いを定めた。両手に魔力をこめる。
「ライトニングアロー」
「ダークネスアロー」
リリィとミカの両手から丸太小屋に向かって魔法が放たれた。
ドーン!
そして火の手が上がる。
見る見るうちに火は燃え広がり丸太小屋全体が炎に包まれた。
漆黒の闇の中。オレンジの炎の柱が浮かび上がっていた。
「熱いキー!」
「火事だキキー!」
地面に両足を刺して眠っていた、モックとドンキーは、慌てて目を覚まして炎から離れた。
フィーネ、エリーゼ、ハクが丸太小屋の中に残されたまま、炎はその勢いを増していた。
炎を見つめるハチの瞳は真っ赤に染まり、狂気に満ちていた。
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