転生99回目のエルフと転生1回目の少女は、のんびり暮らしたい!ーそれでも世界はのんびりを許さない   作:daisukenote3397

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第39話

 

ここは、ホウオウの精神世界。

 

「ホウオウ......ホウオウ......」

私の名前を呼ぶのは誰だ?

「ホウオウ、起きるんだ」

男の人の声。私は眠い目を擦りながら目を覚ました。

すると、目の前に近所に住むおじさんがいた。何でウチにいるの?

私はベッドから立ち上がって、部屋を出た。廊下を慌ただしく歩いていく人。リビングにも近所のおばさんや知らないお兄さんが沢山いる。

 

一体、何が起きたと言うのだろう?

 

その時、話し声が聞こえた。

「......馬車が事故を起こしたらしい」

「......父親も母親も......お腹の子もダメだそうだ」

「......残った子は教会に預けるしかないだろうな」

 

私は思い出した。一番古い記憶。そして、決して思い出したくない記憶。

お腹の中から何かが込み上げてきて、私は吐いた。そして意識を失った。

 

 

「ホウオウ......ホウオウ......」

女の人の声がする。

「お姉ちゃん!」

スザクの声だ。私は飛び起きた。

 

「ホウオウちゃん、大丈夫?」

近所のおばさんが心配そうに覗き込む。

「大丈夫です。ありがとうございます」

私は精一杯強がって言った。

 

「ホウオウ、落ち着いて聞いて。お父さんとお母さんは、馬車の事故で死んでしまったの。お腹の子供もよ。」

私は黙って聞いていた。あまりにも急なことで涙も出ない。

 

「あなたとスザクは、教会が引き取ることになった。」

「明日、シスターが迎えに来るわ。」

 

「わかりました。色々ありがとうございます。」

私とスザクは、教会に行く準備を始めた。

「お姉ちゃん......お父さんとお母さんと弟は天国に行ったの?」

「そうよ、スザク。これからは私たち二人で生きていくの」

「教会で?」

「ううん、教会には行かない」

私はそう言うと、カバンにスプーンやナイフ、フォーク、お皿にコップ。まな板にフライパン、鍋。包丁に炭。

生活に使えそうなものを手当たり次第に入れた。

 

そして、街が寝静まった頃。

私とスザクは思い出の詰まった家を出た。

 

「お姉ちゃん、どこにいくの?」

「まずは私たちの家を探しましょう」

街外れまで行くと、誰も住んでいない廃墟があった。私たちはそこで暮らす事にした。洋服はある。後は食べ物だ。

 

飲食店が軒を連ねている一角。店の裏のゴミ箱を端の店から覗いていく。

野菜の切れ端や細切れ肉の残り、チーズ......ネズミたちと競争しながら食材を集めていく。

それを鍋で煮込めば、それなりの料理になる。

 

それから、私たちは朝から街中を回って食材や使えそうな道具を探し、夕方には二人の家に戻って雨風を凌いだ。

 

そんな生活をはじめて数ヶ月経った頃だ。

いつも通り食材探しをしていた。

すると、

「おい、君たち!」

声を掛けられた。

「ごめんなさい! もうしません!」

そう言って逃げようとすると......

「待ってくれ! 話をしないか?」

私は観念してお店の人に全てを話した。

「ならウチの売れ残りを持っていくと良い」

そう言ってお兄さんは袋にいっぱいのパンとミルクを持ってきた。

「この時間に来てくれたら、売れ残りをあげるよ」

「ありがとう! お兄さん!」

こうして、食事の心配はなくなった。

 

私たちにはお気に入りの場所がある。

街外れの小高い丘の上。そこの石壁に登ると、街全体が一望出来る。

そこに二人並んで座って、もらったパンをたべるのだ。

夕方から夜にかけて、陽が落ちてだんだんと暗くなっていく街を眺めていると辛いことや苦しいことも忘れられる。

 

私たち姉妹はずっと一緒に生きていくんだ。

 

 

 

 

ある夜。

 

スザクが泣いている。

どうしたのか?と聞くと。お母さんに会いたいと......

私はお母さんの形見の指輪をスザクに渡した。そしてお父さんの形見の洋服の切れ端。弟のためにスザクと二人で作った服。

それを巾着袋の中に入れた。

「私も何か入れる!」

スザクはそう言って、大事にしていた石を巾着袋に入れた。

「お姉ちゃんも!」

私は何を入れようと考えた。そうだホウオウが大事にしていた髪飾り。私は髪飾りを外して巾着袋に入れた。

「これで家族五人揃ったね!」

スザクは嬉しそうだ。

決して叶うことのない家族五人の静かな暮らし。私もスザクもそれが欲しかったのだ。

 

すると巾着袋が輝き出した。

スザクが思わず手を離すと、宙に浮かんでいく。

そして、巾着袋は小さな丸い玉になって私の身体に吸い込まれた。

 

何が起きたのか理解出来ないまま、私とスザクの周りの景色が歪んで渦を巻き出す。

「お姉ちゃん!」

「スザク!」

私たちはしっかりと手を繋いで、離れないように必死に力を入れた。

私とスザクの身体が子供から大人に変化していく......

 

 

 

 

「スザク! ホウオウ!」

ハッと目を覚ますと、目の前にアイリスがバタバタと飛んでいた。

私はゆっくりと身体を起こす。

「スザク、戻ったな。おめでとう、成功だ」

私の横では姉さんが起き上がっていた。

「ホウオウ姉さん!」

「スザク! ありがとう」

私たちは抱き合った。

 

 

ホウオウの精神世界からの救出は成功した。

しかし、あと2人残っている。

ミカエル ー エリーゼ

リリィ ー フィーネ

それぞれの精神世界での戦いはまだ続いていた。

 

ウエスの森はただ静かにことの成り行きを見守っていた。

 

 

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