転生99回目のエルフと転生1回目の少女は、のんびり暮らしたい!ーそれでも世界はのんびりを許さない 作:daisukenote3397
にゃ〜
エリーゼは伸びをした。
「よく寝たにゃ」
辺りは薄暗く埃っぽい。魔物の気配を感じる。エリーゼは警戒を強めた。
「なんで猫の姿なのにゃ?」
美しい白い毛並みの猫。今のエリーゼの姿である。
「人間に戻るにゃ!」
エリーゼは意識を集中する。しかし、身体に変化は起こらない。
(人間に戻れないですにゃ!)
エリーゼは仕方なく猫の姿のまま、周囲の状況を探ることにした。
暗い石造りの建物。ここは調理場のようだ。血生臭い肉の匂いが鼻の奥に突き刺さる。
エリーゼは部屋を出て建物の探索を始めた。廊下を突き当たりまで歩き階段を上がる。
すると雰囲気が変わった。床には絨毯が敷かれ、豪華な装飾品が並んでいる。エリーゼは慎重に周りの気配を探る。
さっきから威圧するような重苦しい空気をヒシヒシと感じていた。
大広間を抜けて廊下を進むと、大きな階段が現れた。階段の上には、巨大な扉がそびえ立っている。
「あそこから魔物の気配がするにゃ」
エリーゼは階段を登り扉の前に行った。
猫一匹の力ではとてもじゃ無いが開きそうにない。
途方に暮れたその時。
ギィー......
扉が内側に向かって開いた。
エリーゼは、素早く中に入る。
そこは王の間だった。玉座に人影が見える。エリーゼは慎重に近づいた。
そこには小さな女の子が座って眠っていた。頭には二本の小さな角。涎を垂らしている。
(ミカエル......?)
エリーゼが近づくと、玉座の少女が目を覚ました。
「お前は誰じゃ?わらわはミカエル。名を名乗れ」
エリーゼは、嘘は通用しないと察すると正直に話した。
「私はエリーゼですにゃ」
ミカエルの目が輝いた。
「そうか、エリーゼと申すか。わらわの配下にしてやろう。近う寄れ」
そう言われて、エリーゼはミカエルの膝の上に乗った。ミカエルはエリーゼの頭を撫でる。
「可愛いのう。気に入ったぞ、エリーゼ」
すると、遠くから声が聞こえてきた。
「ミカエル! 何処ですか? まったくあの子はしょうがないわね」
「母上だ。マズいぞ」
ミカエルは玉座から立ち上がり、階段を降りた。
「ミカエル!」
声の主が王の間にやって来た。
大人の女性。だが、頭には二本の立派な角。その瞳は真紅に染まり、口元には牙が見える。
「母上!」
ミカエルが女性に向かって歩く。エリーゼも後ろをついて行く。
「ミカエル。ここに居たのですね。王の間には入ってはいけないとあれ程言ったのに」
「ごめんなさい。母上」
ミカエルは顔を伏せる。
「もうすぐ魔王様が帰っていらっしゃいます。お迎えの準備をしますよ」
「父上が? 分かりました」
ミカエルはそう言うと走り出した。エリーゼも慌ててついて行く。
廊下に並ぶ扉の一つを開けると、ミカエルはそこに入った。子供部屋のようだ。エリーゼが遅れて入ると、洋服ダンスの中から服を探していた。
「父上が帰って来る! 嬉しいのう」
ミカエルは、着替え始めた。
「エリーゼ、この服、良いと思うか?」
鏡を前にポーズをとる。普通の女の子のようだ。
「お似合いですにゃ」
エリーゼは答えた。
「よし! これにしよう。」
ミカエルは、そう言うと部屋を出て行く。エリーゼもすぐについて行く。
応接室のような部屋に行くと、すでにミカエルの母親が椅子に座っていた。
「母上、お待たせしました。」
ミカエルはそう言うと母親の隣に座る。エリーゼはミカエルの膝の上に乗った。
「ミカエル。その猫は?」
「エリーゼです。私の友達ですわ。」
そう言ってエリーゼの頭を撫でた。
数分後。
トントン。
ドアをノックする音。
ミカエルと母親が立ち上がる。
エリーゼは、ミカエルの足元に。
ドアがゆっくりと開き、もの凄い威圧感と共に魔王が現れた。その強大な魔力をヒシヒシと感じる。
「今、帰ったぞ」
「あなた、お帰りなさい」
「父上、お帰りなさい!」
ミカエルは魔王に抱きついた。
魔王はミカエルの身体を楽々と持ち上げる。
「良い子にしていたか? ミカエル」
「うん!」
こうして見ると、まるで普通の親子だ。
魔王は、ミカエルを降ろして椅子に座った。
母親とミカエルも椅子に座る。
「実はな、困ったことになりそうだ」
魔王が深刻な顔をする。
「どうしたの?あなた」
母親は、魔王のただならぬ様子に普段とは違うものを感じていた。
「人間の勇者一行が、私を倒しに来る」
魔王の顔が曇る。
「何ですって? 勇者が!」
「私は魔王だ。逃げる訳にはいかない。お前たちは戦いの間、隠れていてくれ。」
魔王は母親の肩を抱く。
「あなた、死なないで」
母親は涙を流す。
それを見てミカエルも泣いていた。
「私にもしものことがあったら二人で逃げるんだぞ」
「分かったわ、あなた。どうか死なないで」
「勇者など返り討ちにしてくれる! 任せておけ」
そう言うと魔王は、母親とミカエルを抱きしめた。
「父上......」
ミカエルは涙を拭ってエリーゼを抱いた。
それを見ていたエリーゼは、複雑な心境になるのだった。
勇者一行は、こうしている間にも魔王城に迫っている。
決戦は避けられないのであった。
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