転生99回目のエルフと転生1回目の少女は、のんびり暮らしたい!   作:daisukenote3397

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第46話

 

ここは、900年ほど前のエルフの里。

長閑な草原に丸太作りの家が立ち並び、そこに100人ほどのエルフが住んでいた。畑で野菜を育てたり、狩りに出たりと自給自足の生活を営んでいる。

 

「ハンス!畑仕事を手伝ってくれ!」

泥まみれの顔でハンスの父親が呼んでいる。

「今、行く!」

ハンスは畑に向かって走った。

ハンスの家は農家で数種類の作物を育てていた。今は丁度収穫の時期だ。

「収穫の手伝いをしてくれ。」

「任せてよ、父さん。」

ハンスは手際良く土に埋まった作物を引き抜いていく。

1時間ほどで畑の作物の収穫が終わった。

「ハンス、ありがとう。じゃあ、何本かフィーネちゃんの家に持って行ってくれるか?」

「いいよ。」

ハンスは、採れたての作物数本を持って、家を出た。

 

目的の家は、すぐ隣りだ。

ハンスは、両手についた土を払って、玄関のドアをノックした。

トントン

「フィーネ!野菜を持ってきたよ!」

すると、奥から女の子の声がした。

「ハンス!今、手が離せないから、そこに置いておいて!」

ハンスは少し残念そうな顔をして、

「わかった!玄関の前に置いておくね!」

そう言って、野菜を置いて家に戻ろうとした。

その時、後ろから呼び止める声がした。

「ハンス!待って!」

振り返ると、ハンスより少し背が低い銀髪の少女が微笑んでいた。

「フィーネ。どうしたの?」

ハンスが尋ねると、

「これを渡そうと思って。」

フィーネが手に持っているのは、

こんがりと焼けた美味しそうなパンだ。

「ありがとう。」

ハンスはパンをフィーネから受け取り、頭を下げた。

「ハンス、いつもありがとう。」

フィーネが言うと、ハンスは恥ずかしそうに振り向いて、家に走って帰って行った。

 

ハンスとフィーネは年が近い幼馴染みで、物心ついた頃からいつも一緒にいた。最近になってハンスは何故かフィーネと距離を置くようになっていた。

 

「ハンス、野菜は届けてくれたか?」

ハンスの父親がリビングで寛ぎながら聞いた。

「うん、代わりにパンを貰った。」

ハンスはそう言ってパンをテーブルに置いた。

 

「フィーネちゃんは、元気だったか?」

「うん。」

「そうか。まあ、あれだ、これからも仲良くな。」

「うん。」

ハンスはうつむいている。

父親は、構わず話し続ける。

「いざと言う時は、男が女の子を守らないといけない。お前がフィーネちゃんを守るんだぞ。」

「分かってるよ。」

ハンスはパンをかじった。

 

ハンスは立ち上がると、

「ちょっと散歩してくる。」

と言って、家を出ていった。

 

エルフの里の中心には、一本の大木が立っている。物心ついた頃にはすでにあったその木の下が、ハンスのお気に入りの場所だった。

木に寄りかかって座ると、遠くに山々が連なり雪を被っているのが見える。その麓には森が広がっている。

 

ハンスは目を閉じると昼寝を始めた。

 

「ハンス、起きて。」

誰かの声が聞こえる。

「ハンス!」

肩を揺さぶられる。誰だろう?

ハンスが目を開けると、そこにはフィーネがいた。

「ハンス、やっぱり此処にいた。」

フィーネが笑顔で話かけてくる。

ハンスは赤くなって目を逸らす。

 

フィーネはハンスの横に座った。

「私もここ、好き。」

「うん。」

ハンスは素っ気なくこたえる。

「私、ハンスとずっとこうしてたいな。」

「うん。」

ハンスは横を向いて寝転がった。

フィーネもハンスの隣りに寝転がる。

「のんびりとして気持ちいいね。」

フィーネが言う。

「僕がフィーネを守れって、父さんに言われたんだ。」

ハンスがボソッと言う。

「うん。」

フィーネは、ハンスの方を向くが、ハンスは反対側を向いている。

「僕は、その、フィーネを守りたいと思ってる。」

「ありがとう、ハンス。」

突然、ハンスはフィーネの方を向いた。二人の顔が近づく。

「フィーネは、僕に守られるのが嫌じゃない?」

ハンスは顔を赤くしながら言う。

「私は、ハンスが守ってくれるなら安心だし嬉しいよ。」

フィーネは、ハンスの目をまっすぐに見て答える。

「そうか、ありがとう。」

ハンスは思わず目を逸らした。

 

涼しい風が通り抜ける。

二人は、しばらくそのまま寝転がっていた。

 

「フィーネ。」

「なに?ハンス。」

「僕らずっと一緒にいれるかな?」

「私たちはずっと一緒よ。」

突風が吹いた。

「きゃっ!」

ハンスは思わず、フィーネの上に覆い被さった。

フィーネが下、ハンスが上、顔が近い。

 

フィーネが頬を赤く染めながら、ゆっくり目を閉じた。

ハンスは、顔をフィーネに近づける。

 

そして、キスをした。

短い、いや、永遠とも思える短いキスだった。

「フィーネ、ありがとう。大好きだよ。」

ハンスが言う。

「私もよ、ハンス。」

そう言うと、フィーネがハンスの上になり、フィーネから口づけをした。

 

さわさわと優しい風が吹き、木がざわめいていた。

 

ハンスとフィーネは、こうして互いの想いを確認し、二人の未来を描き始めたのであった。

 

あの、悲劇の夜が訪れるまでは......

 

 

 

 

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