元男、女に惚れられる……なんで?   作:庭顔宅

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第十五話

「花宮、朱音さんですよね」

 

「は、はい!」

 

「同じ、中等学園に居た」

 

「はい」

 

 先ほど元気いっぱいの返事に比べたら、それは意気消沈していた。

 

 彼女と出会ったのは三年の頃だ。

 虐められていたところを、偶然目にして助けた。その後、秋も半ばを過ぎた頃に「勉強を教えてほしい」と声をかけられた。関係と呼べるものは、それだけだった。

 

「驚きました。まさか、同じ高等学園に進学しているなんて」

 

 確かに勉強は教えていた。

 だが、同じ場所を目指しているなどとは思っていなかった。

 

「貴方と同じ学園に行きたくて。ギリギリだったんですけど、何とか受かれました」

 

 おちゃらけたような乾いた声。

 

「幻滅したでしょう」

 

「へ?」

 

「私は強くなんてないわ」

 

 俺は一方的に虐められては涙まで見せた。虐められていた自分を助けてくれた憧れの人というには、見っともない。

 

「むしろ……安心しました」

 

「安心?」

 

「ちゃんと人間なんだなって」

 

「自分磨きも頑張って、勉強も頑張って、凄い友達も出来て。きっと貴方がいなかったら、こんな学園生活にはならなかったです」

 

「久しぶりに見かけた貴方は、相変わらず一人で、なのになんか強そうで、怖くて、教室の外から見るだけで限界でした」

 

「こんな事言うのもなんですけど、あんな姿を見てもまだ憧れています」

 

「あなたは強い人です。誰よりも優しい人です」

 

「そんな人じゃない。あの時、先に妹が虐められていなかったら、君は助けなかったよ」

 

「でも助けられました」

 

 一瞬の間も無く言われた。

 

「貴方、勿体ないほどいい子ね」

 

「ありがとうございます」

 

 本当に、花開くように笑う。

 

 「あ、あの!」

 

 突然の声に、俺は視線を向けるだけ。

 

 何か言いたそうにしてる。それは、先ほどからずっと感じていた。

 

「迷惑じゃなかったら……私と友達になってください!!」

 

 椅子に座ったまま、頭を下げられる。まさに一世一代の告白のよう。

 

「お好きにどうぞ」

 

「……そ、それは?」

 

「なりたければ勝手になればいいです。問題は友達になって何をするのか、でしょう?」

 

 その問い掛けに、花宮は考える様子を見せた。

 

「別に深く考える必要はないわ。やりたいようにやる、それだけよ」

 

「やりたいように、やる」

 

 まるで納得したかのように呟く。

 

「そろそろ妹が帰ってくる。何もなければ帰って」

 

「あ、はい」

 

 先に立ち上がる。

 それだけで、この場に留まるという選択肢は消えさせる。

 

「今日はありがとうございました」

 

 花宮は頭を下げた。

 

「気を付けて」

 

 その言葉を背に、花宮は帰って行った。

 

 扉が閉まる音を背に、リビングに戻る。

 片付けて、夕食の支度に取りかかる。

 

「おかえり」

 

 家族にそんな言葉を投げかけながらその日は終わって行った。

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