目新しい制服に身を包み、美しく着飾った両親に見守られ、この花織学園の入学式は行われる。
新入生代表の挨拶から始まり、学園長の挨拶で続き、終わりの挨拶で終わる。そうして、全てのプログラムが終わり、クラスでの生活が始まった。
そうしてオリエンテーションや、委員会決めなど、それなりに色々な事が行われたが、特別何かが起こることは無く。自然と一日が終わって行った。
鏡を見る。
そこに移る姿にも、今では驚かない。
首元で整えられた以上には整えられない黒のボブに一重の瞼。その中にあるのは溶け込むような黒い瞳孔で、大きな胸部以外に派手さがない。真顔が普通で、稀にビジネス笑みを出す程度。俺自身、派手である事と露出は好ましくなく、実に俺らしい外見。
「はぁ……実に慣れてしまった」
湯舟に肩まで沈むと、つい淡い声が漏れてしまう。だけども、今日一日でたまった疲れが癒されていくのを感じる。
じっくりと浸かった後、指先を空気に触れさせる。
細く、白く、よく鍛えられた指だった。
視線を下げれば見える。
最低限度は、と鍛えらえたこの体は、美しい肉体美を作り出していた。そこに感じるのは違和感と好ましい感情が混じった何か。
この世界で俺は、TS転生という物を体験していた。男から女に、大人から子供に。いと不可思議、だが原因など分かるはずもない。気が付けば赤ん坊だった。
そうして成長し続けてきて今、高等生になった。
生憎と女の関係性という物に、何処か合わない感性を持っている時点で、友達を作ろうという意識は無かった。この家はそこそこ余裕があるからゲームなり、何なりと、時間を潰す手段は沢山あったし、妹が居た。だからこそ、新たな出会いを求めることも無く、どこか寂れた生活をしていた。
だが、後悔はない。慕ってくれる可愛い妹という存在は、想像以上に俺の心をくすぐる存在であったし、ゲームは楽しい。
それが要因だ。
今日行われたオリエンテーションの時、俺は会話に入り込めなかった。そして俺に向けられた目を見ればわかった。どこか俺を避けている、と。
中等学園の頃、何度か警察沙汰を起こしている。そうして広まった噂に尾ひれ背びれがついてしまっているのだろ。
それが原因なのだろう。そうして無事に、初日に作れた友達は0人という結果につながった。
だが、それでいい。適当に家族を可愛がって、適当に卒業して、適当に就職して、楽に楽しく生きる。
それが今世における俺のポリシーだった。
「おねーちゃーーん!!ごはんできたよ!!」
おっと、長風呂をし過ぎたようだ。妹が呼んでいる。早く上がろう。