キヴォトスの独裁者   作:坂間

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独裁者立つ
独裁者


 

 

とある昔ある国に独裁者がいました。 

その独裁者は軍事力を持って世界を征服しようとしました。

 

その独裁者は多くの人々の命を奪い世界を混沌に陥れましたが正義の国が率いる軍隊の前に敗れさり世界に平和が訪れましたとさ

 

 

と後に記述され語り継がれる歴史の悪役の一人に私は過ぎなかった。

 

 

祖国の誇りを取り戻したかった、どれだけの流血を伴っても

千年先まで続く帝国を作りたかった

 

所詮は学のない男の妄想だった。

勝てるはずの無い戦争を始め止め時を逃し国土は焼かれ現に今、帝国は終わろうとしている。

 

 

「ふははは…」

 

 

乾いた笑いが私の青白い乾いた唇から漏れる。

愚かで仕方なかった自分が

 

 

結局私がした事は祖国を破滅に導いただけだった。

屈辱でも先の大戦の復讐、失われた領土の復帰など目指さなければ今頃祖国は復興しかつてほどは無いだろうが輝いた未来が待っていただろうに

 

祖国を愛する私が自らの手でその未来を摘んでしまった。かの劇作家でもこんな喜劇は作らないだろう

 

 

帝都の地下塹壕の私の部屋に垂れて掛かっている国旗を私は引きちぎり足元で私の都合で一足先に逝った愛犬の遺体を包む

 

 

「………」

 

 

私は毒薬のカプセルを含み無言でこめかみに鉛玉を自ら打ち込んだ。

 

そして私、独裁者ルドフル・ヘドラーは鈍い痛みと共にその人生に幕を下ろした

 

 

◆◆◆

 

 

私は気がつくと汽車の様な何かに乗っていた。

 

窓の外には何処までも青い何かが広がっていた。

 

(…此処は…何処だ…あの世か…?)

 

頭の奥を鈍器で殴られた様にジンジンと痛み、思考が回らない。

 

彼は揺れる視界で周囲を見渡すと対面に一人の女性が座ってる事に気付く

 

水色の美しい髪を持つ少女だった、そしてすぐに気がつく水色の髪には似合わない赤い血の色に

 

 

(怪我をしているのか…?)

 

 

「独裁者って大変ですよね」

 

 

少女は前触れもなく口を開いた。

 

 

「誰にも理解されず愛されず信じられず、もし何かがあれば全て独裁者が責任を負わなくていけない」

 

 

(何を言っているんだ…?)

 

 

「それでも貴方は独裁者であることを選び続けた自身の信じる道の為に、例えその道が破滅に繋がっていたとしても」

 

 

(違う、独裁者はそんな高潔なモノじゃない)

 

 

否定したかった彼女の言葉をだが言葉が喉に突っかかり言葉に出来ない。

 

 

「私のミスでした、私の選択によって招かれたこの全ての状況」

 

 

「結局この結果に辿り着いて貴方の方が正しかった事を悟るなんて、バカみたいですよね」

 

 

彼女は自嘲する様に苦笑する。

その彼女の浮かべる苦笑に私は覚えがあった。

 

 

「今更図々しいですが、よろしくお願いします…先生」

 

弱々しく彼女は言葉を紡ぐ。

 

 

「きっと私の話は忘れてしまうでしょうが、それでも構いません」

 

 

「何も思い出せなくても、おそらく貴方は同じ状況で、同じ選択をされるでしょうから…」

 

 

「ですから…大事なのは経験ではなく、選択」

 

 

「独裁者であり続けたあなたにしか出来ない選択の数々」

 

 

「あの時の私には分かりませんでしたが…。今なら理解出来ます」

 

 

 

「独裁者として大人としての、責任と義務。その延長線上にあった、あなたの選択」

 

 

 

「それが意味する心延えも」

 

 

 

(違う私にそんな大層なモノは無かった)

 

 

 

「私が信じられる大人であり独裁者である、あなたなら…」

 

 

「この捻れて歪んだ終着点とは違った…また、別の結果を…」

 

 

 

「そこへ繋がる選択肢はきっと…見つかる筈です」

 

 

 

「だから先生…どうか…」

 

 

「違う」

 

 

魚の小骨のように喉に突っかかっていた言葉がポロリと零れ少女の言葉を遮ると少女はキョトンとした表情になる。

 

 

「私はそんな大人ではない、自身の妄想に囚われ道を過ち続けた愚かな独裁者だった」

 

 

一度溢れ出した言葉は止まらなかった。

初対面の人間にいう言葉ではないのは分かっていた。

 

 

「それに君が何を話しているのか私には少しも見当がつかない、だが一つだけ言わせて欲しい私は君が言うような真っ当な人間ではない」

 

 

少女の目を見つめると少女は柔らかく表情を緩め僅かに微笑む。

 

 

「…変わりませんね貴方は」

 

 

その少女の一言と共に私の意識は暗転した。

 

 

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