キヴォトスの独裁者 作:坂間
今、私達は銃声や爆発音等の轟音が鳴り響く戦場にいた。
ヘリでシャーレの部室の近くまでは来れたのだかこれ以上の接近は戦闘が必要だと言う事で早瀬ユウカ達は不良達と銃撃戦を繰り広げていた。
「どうして私たちが不良たちと戦わなきゃいけないの!」
ユウカが怒りながらリンに対して抗議する
「サンクトゥムタワーの制御権を取り戻すためには、あの部室の奪還が必要ですから……」
「それは聞いたけど……! 私これでも、うちの学校では生徒会に所属してて、それなりの扱いなんだけど! なんで私が……!」
ユウカは愚痴を漏らしながら不良に向って発砲しながら叫ぶとユウカを弾丸の嵐が襲う
「いっ、痛っ! 痛いってば! あいつら違法JHP弾を使ってるじゃない!」
「伏せてください、ユウカ。それに、ホローポイント弾は違法指定されてはいません」
「うちの学校ではこれから違法になるの! 傷跡が残るでしょ!」
とギャーッギャーッ騒いで居るのを私は物陰で見ながら
(何故撃たれても痛いだけで済むんだ???)
と改めてキヴォトスと私の居た世界の違いを理解させられていた。
あまりの情報量に呆然とする私に向って黒髪の少女が言う。
「今は先生が一緒なので、その点に気を付けましょう。先生を守ることが最優先。あの建物の奪還はその次です」
「ハスミさんの言う通りです。先生はキヴォトスではないところから来た方ですので……、私たちとは違って、弾丸一つでも生命の危機にさらされる可能性があります。その点ご注意を!」
「分かってるわ。先生、先生は戦場に出ないでください! 私たちが戦っている間は、この安全な場所にいてくださいね!」
「あ、あぁ…」
年下の少女に守られている事にプライドが傷付くが、かと言って前に立てば蜂の巣にされるのは見えて居るので大人しくする事にした。
(……これで良いのか?本当に…)
あまりの自身の情けなさが頭の中を駆け巡る。その時、私は懐に何か違和感を感じて探ると黒の無骨な拳銃、それは私が自害する際に使用した拳銃だった。
「……」
ふと視線を彼女達に向けると傷を負いながら戦っているのが見えた
次の瞬間、彼女達と傷だらけになりながら決死の覚悟で帝都を死守していた軍隊と姿が重なる。
(自分は安全な所で見ている…これで何も変わっていないでは無いかっ!)
自身を叱咤し奮い立たせる。
だが脚が震えて動かない。
その時、この世界に来る前に話した少女の言葉が蘇った。
『独裁者であり続けたあなたにしか出来ない選択の数々…あの時の私には分かりませんでしたが…。今なら理解出来ます』
苦笑いを浮かべる彼女が見えた気がした。
私がこの世界に呼ばれた理由、私にしか出来ない事があると彼女は行った。
普通の大人では駄目だったのは何故だ?
そうだ。私は独裁者だ。
傲慢で不遜で愚かで救いようの無い絶対悪
やるべき事は分かった。
後は周囲の注目を集めることと震えて動かない出来損ないの身体に鞭を打つだけ
私は握り締めた拳銃の銃口を腕に突きつける。
既に一度やった事それも前は脳に撃ち込んだ、腕に撃つくらい恐れることは無い。
震える指で引き金を引かせると同時に私の左腕に鈍い痛みが奔る。
左腕が熱い、だが傷口を見てはいけない、見てしまえば動けなくなる。
震える足で物陰から立ち上がる
突然の行動にリン達は動きを止める
「先生!?」
「な、何を!?」
「危険です!先生!…そ、その腕は!?」
「ち、血が!?」
リン達の反応を見るからにこの世界ではこの様な怪我をするの珍しい様だ
「…通りで引き金が軽い訳だ」
赤く染まった腕を押さえながら立ち上がり物陰から姿を現し拳銃を投げ捨てる。
私にヘルメットを被った武装集団は銃口を私に向けるが私の左腕から流れる血の量に驚愕したのか硬直している。
「そこのヘルメットを被った諸君らに問おう!」
腕の痛みを誤魔化すに声を張り上げる。
「見ての通り私は銃弾一つで此処までの傷を負う」
深呼吸をして痛みを和らげる
「私は連邦生徒会長の名の下に各学園の自治内での自由な裁量を許可されている」
私の言葉に一人のヘルメットを被った少女が声を荒げる。
「嘘こくんじゃねぇぞ!!!」
その言葉を皮切りに周囲の少女達も否定の声を上げる
「嘘だと思うなら撃ってみろ!私は死ぬがな、私が死ねばその時から貴様らは連邦生徒会の敵となり貴様らは勿論一族又は親しいモノに明日が訪れると思わない事だ」
私の言葉にヘルメット集団は動揺する。
面白いことに私の腕から流れる血が私の脆さを証明し私を守っている。
痛みに歯を食いしばり両手を広げる
虚勢を張れ
独裁者の基本だ
何度も虚勢を張ってきた。
虚勢で道を切り開くのが独裁者だ。
「撃ちたければ撃て」
「何を言ってるんですか先生!?」
「お辞め下さい!」
とリン達の静止の声が入るが無視する
「なんだアイツ…!撃つか!?」
「でもアイツ…あんな出血してやがる…死んじまうよ…」
「ヘイローが無い…?」
ヘルメット集団が困惑している間に一歩ずつ近付く
「っ!?なんだテメェ!これ以上近づいたら撃つぞ!」
ヘルメット集団の脅しに私は脚を止めない止めてしまえば虚勢だと見抜かれる。
不利なのは私達だ、此処で時間を食えば取り返しのつかない事になる。だからこそ多少強引で危険であってもやる必要がある。
「くっそ!!」
目の前に私が迫ると一人が目をつぶって発砲する、放たれた弾丸は右肩を撃ち抜き血が噴き出す。
その発砲した少女の銃の銃口を掴み胸に当てる。
「目をつぶっては当てれるモノも当てられんぞ」
不良は既に腰が抜けている。
「これなら外さない。撃て」
「あ、あ…、」
「撃てッ!!!」
何時までも撃たずに震える不良を怒鳴りつける。
「何故撃たない?私が死んでしまうからか?」
「え…あ…っ…」
「お前達は今まで何発弾丸を撃った?簡単な話だ、撃った弾丸の数に1つを加えるだけの簡単な事だ」
銃口を逸らそうとする少女の頬を出来る限り強い力で思い切り殴る。
「う…あっ…!!?」
バランスを崩した不良は地べたに座り込む
「持て」
しっかりと銃を握らせる
「その引き金を引けそれだけで終わりだ、まさかとは思うが…何も考えずに引き金を引いていたのかお前は?」
「あ…う、…」
「お前が奪うんだ命を」
「………ぇ…?」
顔を涙と汁でぐしゃぐしゃにしながら少女は私を見上げる
「命を奪う覚悟が無いなら銃など握るな」
そう言い少女の銃口から手を離す
「………」
周囲を見渡すと他のヘルメット集団達やユウカ達は顔を青白くして固まっている。
「戦う気が無いなら通して貰うぞ」
そう言いヘルメット集団達に向って歩いて行くが誰も制止せず声も上げず近付くと恐れるように彼女達は私を避ける。
道は開いた。